bPr ビームス 山口真吾さんの俺的名作時計
【カシオ】F-91W
時計に限らず“名品”にはすべて共通点があると思っています。それは“キャンバスに成り得る”ということ。デザインも機能も完成されていて、その物自体が色々なメーカーやクリエーターが個性を描くキャンバスに成り得る。
つまり時を経てもコラボや別注のベースに指名されるような普遍性がある物こそ、名品と呼べるのではないかなって。チャンピオンのスウェットやリーバイスの501なんかはその代表例だと思いますが、僕にとってはこのF-91Wにも、そうした永世定番に負けないくらいのキャンバス力を感じるんです。
チープカシオという愛称でもお馴染みですが、これはまさに見た目も実用性も価格も非の打ち所がない名機。3本持っていますが、実はどれも海外のアーティストが、文字通りこのモデルをキャンバス代わりに創り上げたアート作品なんです。購入したのもすべてNYのミュージアムショップ。
ダイアルと裏蓋を反転していたり、アナログ時計に転生させていたり、画面上の数字が左から右に流れるように表示するよう、基板ごと改造していたり。
正直どれもオリジナルの方が時刻は確認しやすいけど(苦笑)、とにかくキャラが立っていて、腕時計をアクセ感覚で着けたい自分にとっては理想的。でもしっかりF-91Wの面影が残っているあたりは、さすがだなぁと。
人からもよく突っ込んでもらえるし、話のネタとしても申し分ない。ここまで費用対効果の高い時計はそうありませんね。
カシオ
F-91W
左・中/フィン・マギーというアーティストが手がけた作品。裏蓋をくり抜きつつ反転して文字盤代わりにしていたり、アナログモデルに転生させたりと、F-91Wを大胆アレンジ。右/デクスター・シニスターというアーティストによる作品は、文字が左から右へと流れるようにモジュールを改造した珍品。
NY出張の際に必ず訪れる国立デザイン博物館のミュージアムショップで購入
bPr ビームス ディレクター
山口真吾さん
1980年生まれ。便利でお洒落な雑貨を扱うレーベルの要。アクセとしてもガジェットとしても利く時計のバイイング術にも長ける。
[おいしい時計選びの極意]情報よりも感性を大事に
[ビギン2023年8月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。