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集中力には、いくつかのタイプがあるという。集中するまでにかかる時間は長いが、深いタイプ。逆に、浅い集中に素早く入れるタイプ、などなど。私はといえば、一度入ってしまうと集中は深い方だが、入るまでにかかる時間が結構長い。なので、いったん集中モードに入ったら、なるべくその状態を維持したい、と思っている。

とくに集中力を要するのは、アイディア出しの初期の段階だ。自分の仕事でいえば、イラストのラフを描くときや、企画のいちばん最初の、アイディアにもまだなっていないような思いつきを紙に書き出しているような状況がそれにあたる。

思考というのは、そもそもが曖昧でとらえどころのないものだ。例えていうなら雲のような、霞のような感じで、輪郭もなく、意味もなく、モヤモヤと頭の中を漂っている。それを何とか、自分以外の人にも理解できるものにするために、言葉や図に変換して紙の上につなぎ止めるのがアイディア出しの作業だ。

思考をいきなり完成形でとらえられることはまずないので、修正を前提としてシャープペンシルを使うことも多いのだが、そこにひとつ問題がある。よし、いいぞ、いいぞ……とちょうど気分がノッてきたところで、芯がすり減ってペン先が紙にガリガリガリッと当たるのだ。こうなっては集中も途切れるし、やっとの思いで捕まえかけたアイディアもどこかに行ってしまうし、本当にイヤなものだ。

そんな事態を避けるために私が愛用しているのが、自動芯出し機構のついたシャープペンシルである。自動芯出し機構とはその名の通り、使いはじめに一度だけノックをすれば、極端な話、芯をまるまる1本使い切るまで自動的に芯を出し続けてくれるので、途中でノックをしなくても良い、という機能のことである。

この機能を搭載したシャープペンシルはとても便利で重宝しているのだが、技術的な難しさからか、あるいはニーズの少なさ、認知度の低さからか、今までほとんど選択肢のないマニアックな商品だった。

しかしここ最近、筆記具メーカー各社から自動芯出し機構を搭載したシャープペンシルの新商品が登場してきている。今回は、その中でも比較的入手しやすく扱いやすい、新たなスタンダードになり得る期待のホープとして、ぺんてるから発売された「オレンズAT」を紹介したい。

「オレンズ」は、金属製のパイプで芯を守ることで、折れにくさを実現したぺんてるを代表するシャープペンシルのシリーズのひとつである。「オレンズAT」は、内部に備えたボールチャックとスプリングにより、ペン先を紙から離すたびに減った分だけ芯が出る、という自動芯出し機構を搭載している。

しっかり握れるラバーと金属を組み合わせたデュアルグリップ、長時間筆記しても疲れにくい低重心設計とも合わせ、本商品が掲げる「思考を止めない。」のコンセプトに相応しい仕上がりとなっている。

唯一、好き嫌いが分かれそうなのは、「パイプから芯を出さずに書く」というオレンズ独特の使い方であるが……(書き方によってはパイプが紙に当たる感じが気になる人もいるかもしれない)。それを差し引いても、これだけの機能が2200円という比較的手の届きやすい価格にまとめられているのは非常にありがたい。

見た目にも「いかにも高機能でござい!」と主張するようなクセが少なく、一般的な製図用シャープペンシルのような佇まいなので、日々の仕事や勉強にも違和感なく取り入れやすい。まさに、集中力を途切れさせたくない!というシーンで使用する、自動芯出し機構のニュースタンダードとなりそうなシャープペンシルなのだ。

これは常々思っていることだが、美味しい食べ物の唯一の欠点は、食べると無くなってしまうことである。ビュッフェや食べ放題であっても、自分で料理を取りに行ったり、追加オーダーをして待つという手間がある。

「オレンズAT」は、こちらがストップと言うまで途切れることなく給仕が続く、いわば「わんこそば」スタイル。集中力の持続性に自信がない方は、ぜひこのシャープペンシルを手に、もう〜お腹いっぱいです!となるまで、たっぷりと書くことを堪能していただければと思う。

 

ぺんてる
オレンズAT デュアルグリップタイプ
2200円
https://www.pentel.co.jp/products/mechanicalpencil/orenz_at/

※表示価格は税込み

ヨシムラマリ

ヨシムラマリ

神奈川県出身。子供の頃、身近な画材であった紙やペンをきっかけに文房具にハマる。現在は会社員として働くかたわら、イラスト制作や執筆を手掛けている。著書に『文房具の解剖図鑑』(エクスナレッジ)。

文房具(グ)ルメとは? 価格やブランド名だけでは価値が計り知れない、味わい深い文房具の数々。フランス料理店でシャンパングラスを傾ける記念日もあれば、無性にカップ麺が食べたくなる日もありますよね? そんな日常と重ねあわせて、文房具に造詣の深い気鋭のイラストレーターが気になるアイテムとの至福のひとときをご紹介!

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