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SOYFFEE ソイフィーをかけたパンケーキ

今回のビギニンに登場するのは、“ご飯のお供”という概念を覆す、ニオわない納豆「SOYFFEE™(ソイフィー)」を開発した小野岡 圭太さん。学生時代から海外生活が長く、「ソイフィー」のアイデアも、シェアメイトの「3日間履いた靴下の匂いがするから食べられない!」という言葉にヒントを得たものでした。

前編では、東南アジアのラオスに旅行したことがきっかけで起業を意識したところまでを紹介しました。後編では、いよいよニオわないネバネバ納豆の開発へ。ヒントになったのは、とある納豆愛好家のWEB記事でした。

前編はこちら

今回のビギニン

Shonan Soy Studio代表 小野岡圭太さん

1990年生まれ。神奈川県平塚市出身。2009年から2014年の6年間、学生時代を海外で過ごす。帰国後、大手外資系化学メーカーに入社。社員として働く傍ら、2019年に古民家を改修したコーヒー納豆製造所「Shonan Soy Studio(ショウナン ソイ スタジオ)」を神奈川県・大磯町に開業。2022年には、アートとチルをコンセプトにしたプライベートホテル「norm.(ノーム)」とコラボし、神奈川県・茅ヶ崎市に発酵大豆を中心としたテイクアウトカフェ「SOY BREWERY(ソイブリュワリー)」をオープン。趣味は料理で、休日はビールを片手に得意のイタリアンを作って気分をリフレッシュするそう。

Struggle:
アフリカの人が納豆を食べるとコーヒーを感じる!?

「人を助けたい」という想いが高まり起業に向けて再び動き出した小野岡さん。肝心の事業内容は、アメリカにいた時の経験からニオわない納豆の製造と販売に決定。在籍していた化学メーカーで粘着剤やテープの知識を蓄えながら、自宅ではニオわない納豆の研究開発も始めました。ダブルのネバネバを研究するのは、小野岡さんにとって「毎日、理科の実験をしているみたいで楽しかった」んだそう。だからと言って、開発は決してスムーズだったわけではなく、完成に至るまでに2年の月日がかかりました。

ところで、皆さんは納豆がどのようにして作れられているかご存じでしょうか。「ソイフィー」の開発の秘密に迫る前に、ここで一度、一般的な生産プロセスをご紹介します。

ステップは大きく分けて4つあります。まず乾燥した大豆を一日中たっぷりの水に沈めて柔らかくなるまでふやかします。次にその大豆を3〜4時間蒸します。蒸し終わったら、粉末の納豆菌を溶かした水を大豆に満遍なく回しかけます。最後に、丸一日40度の熱で温め続ければ納豆の出来上がり。

文字にすると単純に思える生産プロセスですが、これを自宅で行うとなると結構大掛かり。特に最後の工程、40度をキープしながら大豆を発酵させるのが難しい。小野岡さんの納豆作りも、はじめは圧力器やヨーグルトを発酵させるために使う小さい機械を買うところから始まりました。「あの独特のニオいがどうしたら消えるのか。苦労した点はそれにつきますね」と小野岡さんも苦笑い。

さて、「ソイフィー」の生産工程が一般品と比べて違うところは、浸水と蒸しの工程で使用する水をコーヒーに切り替えていること。もちろん、コーヒーにたどり着くには、度重なる失敗がありました。「紅茶もハーブ系もダメ。ニオいが残るし、食感もよくなくて。特にダメだったのはビネガー。これは本当に不味かった(笑)」と小野岡さん。コーヒーはラオス産のコーヒー豆から抽出しています。

ヒントになったのは、頭の片隅にストックしていた、とあるWEB記事の内容。水戸在住の納豆好きがアフリカに納豆を持ち込んで、現地人に感想を求めてみた検証レポートで、美味しいと答えた約30%の回答の中に、コーヒーの香りがするという意見があったのです。

Shonan Soy Studio代表 小野岡圭太さん

「コーヒーはラオスとも縁があるし、いいなって思いました。最初はコーヒーパウダーをまぶしてみたんですが、それはジャリジャリして食べられたもんじゃなかったですね(笑)」

香り高いコーヒーをたっぷりと含ませるため、大豆は北海道産の大粒の品種を採用し、あの独特なニオいをマイルドにしています。ちなみに、小野岡さんによると、「納豆には大粒、小粒、極小粒とありますが、大粒の品種を生産しているのは日本くらい」なんだそう。そして、ニオわない納豆「ソイフィー」は、食べ方も一般的な納豆とはまったく別! 常識を覆す美味しいマッチングを紹介します。

調理器具は使い終わったら直ぐ洗って片付ける。”道具をていねいに使っている”のがところどころに滲み出るラボスペース。

Reach:
ネバネバで“循環”をつくる、ニオわない納豆

アメリカ、ラオス、アフリカと、グローバルな視点があったからこそ完成したニオわない納豆「ソイフィー」。ニオいが抑えられても、納豆のもつ栄養素はそのまま。パッケージのデザインにもこだわって、これまで“ニオい”が原因で納豆が食べられなかった人にも、納豆のおいしさを伝えます。

おすすめの食べ方は、納豆にタレをかけるような感覚で、ホイップクリームやメープルシロップと一緒に食べること。スイーツ感覚で食べられるので、デザート系ホットサンドの具材にしたり、アイスクリームに添えたりしても美味しく食べられます。地元はもちろん、ヘルシー思考の方や芸能人の方まで遠方から来てくれたりと、多くの人に喜んでもらっています。ギフトとして選んでいただく方も多いです」と小野岡さん。

味は「枝豆っぽいのかな?」なんて想像していましたが、試食させてもらうと、まったくの別物。食感はふっくらしていてお正月の黒豆に似ており、味は大豆の旨みがシンプルに伝わってきます。特有のネバネバが、ほかの食材の味をなめらかにして引き立て、ほんのり鼻を抜けるコーヒーの香りもあってまさに新触感。特に生クリームやプリンといったスイーツとの相性は抜群でした。あくまでも“納豆”だから、食べても罪悪感はないですし、むしろ健康にもいい! 初めて出会う納豆に取材陣は感動しっぱなしでした。

「ソイフィー」が完成し、ついに小野岡さんは再び起業します。2019年に、大豆を中心とした日本伝統食をリブランディングして、開発・製造を行う大豆発酵食品メーカー「ショウナン ソイ スタジオ(以下:SSS)」を立ち上げ、地元の神奈川県・大磯町に古民家を改装したラボ兼ショップをオープンしました。そこで「ソイフィー」も作られています。

企業理念に『Bite for Bite 〜あなたの一口が世界の誰かの一口に~』を掲げ、売上の一部を世界・日本の貧困地域に寄付しています。2020年度は100kgの大豆を湘南エリアの子供食堂に。小田原の少年サッカーチームに練習着も寄付しました。ラオスで見た富の循環がなされる社会へ向け、できることから活動を続けています。

ナットウジャーキー。こちらはニンニクと胡椒のアクセントが効いたペッパーガーリック味。ガッツリ濃いめのIPAとのペアリングは間違いなし。

さらに、納豆を軸にさまざまなコラボレーションも敢行。850種類の納豆を食べ歩いた納豆インフルエンサー「なっとう娘」さんと手でつまんで食べられるヘルシージャンクな「NATTO JERKY(ナットウジャーキー)」をリリースしたり、小野岡さんも経営に携わる山梨県のプライベートホテル「norm.(ノーム)」とは神奈川県の茅ヶ崎に「SOY BREWERY(ソイブリュワリー)」という、発酵と大豆のテイクアウトカフェを2022年4月にオープンしました。もちろん最終的には海外進出を狙っているとのことですが、小野岡さんは現地生産にこだわりたいと言います。

「一個の製品を輸送するのにかかるエネルギーを考えると、環境にすごい負担をかけると思うんです。それに輸送する分、余計なコストがかかるでしょう。せっかく体にいい納豆の良さを伝えたいと思っているのに、価格が適正でなければ本末転倒ですよね。利益を出しながらも、多くの人が気兼ねなく食べられるヴィーガンフードとしてソイフィーを広めていきたいです」

右 /SOYFFEE™ Original Double(ソイフィーオリジナルダブル)

北海道産の乾燥大豆に、ラオス産コーヒー豆を使用したコーヒーをたっぷり含ませて発酵させたニオわない納豆。納豆特有の香りは控えめだが、栄養素は失われておらず、粘り気も残っている。食べると口の中にコーヒーフレーバーが広がり、アイスクリームやホイップクリームと一緒に食べても美味しい。80g/702円。110g/864円。

左 /SOYFFEE™ Original-Honey (ソイフィー オリジナルハニー)

プレーンなソイフィーに、すっきりとした甘さが特徴の「湘南産の生はちみつ」をプラス。納豆菌の発酵によるネバネバがはちみつに絡みつくので、口の中でコーヒーとはちみつの香りを長時間堪能できる。果肉入りのジャムのような感覚で、パンケーキやトーストにのせて食べたい。90g/810円

SOYFFEE™ Powder Chocolate Block with Coffee Beans(ソイフィー パワー チョコレート ブロック ウィズ コーヒー ビーンズ)

京都のチョコレートメーカー「Dari K」と共同開発した乳製品不使用のヴィーガンチョコレート。78%カカオを使用したチョコレートの中に、粉末状にしたソイフィーとラオスのコーヒーロースター「SINOUK(シノウク)」のコーヒー豆を投入。サクサクとした食感でコーヒーの風味もするため、デスクワークのお供にも最適。60g/1200円

NATTO JERKY (ナットウジャーキー)

納豆インフルエンサー「なっとう娘」とのコラボ作。“ヘルシージャンク”をキーワードに商品開発を進め、味付けした大豆を納豆菌で発酵させ、低温・長時間乾燥し、手でつまんで食べられるように仕上げた。ペッパーガーリック味とショウユ味、2種類のフレーバーがあり、どちらも味付け濃いめでお酒のお供にちょうどいい。各767円。3個セット2130円。

(問)ショウナンソイスタジオ
https://soyffee.thebase.in/

※表示価格は税込み


写真/宮前一喜 文/妹尾龍都

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