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染める前のシャツ

こちらの白シャツに染め替えサービス「カラーリング」をほどこすと…

山勝染工の染め替えサービスでよみがえったシャツ

こうなります。化学繊維のステッチやロゴの刺繍は染まらずに残ります。

山勝染工の染め替えサービスでよみがえったシャツ

漆黒と評される名古屋黒紋付染(なごやくろもんつきぞめ)。その起源は1610年(慶長15年)までさかのぼります。当時、呉服を製造していた尾張藩士小坂井家が旗、幟(のぼり)などの製造にあたったことが始まりと伝えられ、江戸時代後半、藩士から庶民へ広がります。明治時代には製作技術が完成し、婚礼や葬儀で着用される礼装として定着。しかし1970年代をピークに需要が減り、名古屋市に100以上あった着物の染色業者は現在一桁となっています。そんな名古屋黒紋付染を次世代へ伝えるため、伝統的な染色技術をベースに、洋服の染め替えサービス「カラーリング」を開発したのが今回のビギニンです。

前編はこちら

今回のビギニン

山勝染工株式会社の代表取締役 中村 剛大

中村 剛大

1977年、名古屋市生まれ。大正8年に創業した山勝染工株式会社の代表取締役。大学卒業後、別の道へ進むが父の急逝をきっかけに家業に入る。現在は、四代目を継いだ実弟の中村友亮さんと二人三脚で江戸時代から続く染め技術の継承・発展に尽力。400年の歴史がある伝統的工芸品・名古屋黒紋付染を守りながら、アパレルブランド「中村商店」を立ち上げ、洋装の分野にも挑戦。CMや映画の衣装等製作を行うほか、ホテルやカフェの内装も手掛ける。

Struggle:
染料や素材が変わっても伝統の黒を表現する

前編でも少し触れましたが、絹・羊毛といった動物系のタンパク繊維と、綿・麻・レーヨンなどの植物系のセルロース繊維では染料が異なります。山勝染工は絹の着物を取り扱うことが多く、これまでタンパク繊維用の酸性染料を使ってきました。しかし自社ブランドと染め替えサービスの「カラーリング」を始めるにあたり、綿やレーヨンの洋服を染める反応染料を採用します。酸を加えて染める酸性染料と、アルカリ剤を入れ化学反応を起こして染色する反応染料では特性や取り扱いが変わるため、一からの挑戦が始まりました。

山勝染工 染色の様子

「私たちが着物を染色する時は『紅下染め』といって、白い反物を一度赤く染めてから、黒で染めるんです。そうすることでより深い黒になります。名古屋黒紋付染は今もこの工程で作っていて、反応染料でも同じ“山勝染工の黒”が出るよう試作を繰り返しました。最初はきれいに染まったと思っても色落ちしたり、完璧な染料の配合を見つけるまでは大変でした」

染料や素材が変わっても伝統の黒が表現できたのはなぜか。まず挙げられるのが染料の量です。通常、黒に含まれる色素濃度は5〜6%なのですが、25%と5倍にまで増量。色も「紅下染め」で培った経験から黒に赤と黄色が足されています。

そして山勝染工にしかできない特筆すべきポイントが温度と時間の管理にあります。染料が溶けた液と服を桶に入れ、最もよく染まる60〜70度を2時間半〜3時間(一般的な染めと比べ3倍!)キープするのですがその間、ムラなく染料が行き渡るよう5分に1回、職人さんが手作業でかき混ぜ、染まり具合を確認するのだそうです。

山勝染工 染色の様子

「これは江戸時代から変わらない着物の染め方です。今の服は工業製品なので、効率を重視して機械で圧力をかけ一気に染めますが、私たちは伝統工芸品を作っているので目指しているところが違うんです。圧力鍋を使い短時間で作ったカレーと、手でかきまぜながらコトコト煮込んだカレー、どっちが美味しいかと聞かれたら、みなさんじっくり作った方が美味しいと思うでしょう? それと同じで、繊維の奥までじっくり染料が染み込んでいるんだと思います。染料は違えど、手作業でゆっくり丁寧というバックボーンは同じ。仕事柄、色々な伝統工芸品を見ますが、簡単に作られているものはないですよね」

Reach:
クリーニング店で『カラーリング』の依頼が可能に

山勝染工の染め替えサービスでよみがえったシャツ

2014年にローンチされた洋服染め替えサービス「カラーリング」ですが、3年間は思うように活動できませんでした。

「『カラーリング』と同時期に始めた『中村商店』が忙しくなったり、加えてオリンピック前でアパレルブランドから伝統産業を使いたいというお話も増え、手が回らなくなっていたんです。カラーリングはお客様が袖を通された服を染めるので、どうしてもリスクが発生します。品質表示がない服は素材がわからないので基本的に染められないし、絹や毛だと縮むこともあります。綿のTシャツでもステッチにポリエステルの糸が使われていたらそこだけ染まらず残ったり、リブ素材が綿50%でグレーになったり。それも含めて味だと思っていただければいいんですが、真っ黒を期待される方もいらっしゃる。なので事前にしっかりご説明する必要があるんです」

山勝染工株式会社の代表取締役 中村 剛大

忙しいときは中村さんが工場で染色の手伝いをすることもあるそう。

オープン当初は、口コミでカラーリングサービスを聞きつけたお客さんが山勝染工に訪れ、事務所で対応するという形を取っていましたが、認知度は上がりませんでした。そうこうしている内にコロナ禍が始まり、着物の需要はさらに低下。

ちょうどSDGsが注目されだした頃で、中村さんは『カラーリング』を根付かせるため一計を案じます。

「お客さんの立場で考えた場合、クリーニング店に相談できたら便利だと思ったんです。1万円で買った白いTシャツを久しぶりにクローゼットから取り出すと、黄ばんで着れなくてまたしまっちゃうみたいな、捨てられない服ってあるでしょ。気に入ってるし、素材も縫製も抜群なのにしみ抜きでは回復できない。そんな時クリーニング屋さんで『カラーリング』を頼めたらいいじゃないですか。横文字でSDGsって聞くとピンときませんが、お気に入りの服をもう一度着たいという気持ちは、自分の欲求ですよね。それが結果SDGsになる。押し付けられたものではなくて、潜在的に日本人はそういう心を持っていると思います」

山勝染工株式会社の代表取締役 中村 剛大

クリーニング店との提携が実を結び、5年で利用件数は7倍に急増。リピーターも多く、山勝染工から服を長く使う習慣が広がっているように感じます。

個人的には、汚れが気になり今まで高価な服は濃い色を選んでいましたが、色を変えて2度楽しめるなら白い服もありだなと思いました。

「淡いカラーはもちろん、インディゴデニムをブラックジーンズにしたり、手指の消毒に使う次亜塩素酸で茶色くブリーチされてしまったパーカーを黒に戻したり、ブランドのTシャツを真っ黒に染める方も増えています。皆さんさまざまですが、染め直したい服は思い入れがあるものなので、近くの方はできれば対面で相談してもらえたらと思います」

山勝染工の染め替えサービスでよみがえったTシャツ

元はブルーだったTシャツ。ラバープリント部分は綺麗に残る。

中村さんには、忘れられないお客さんがいるそうです。

「おばあさんが、帽子を持ってこられたんです。前に短いつばがついた形で、かなり古いものらしく全体が日に焼けていました。昔の物だから洗濯表示もなく『おそらく綿だと思いますが、綺麗に染まるかどうかはわかりません』とデメリットをお話しました。それでも染めて欲しいということだったのでお預かりしたんです。帽子は無事染まり、後日、出来上がりをお渡したところ、ぱっと表情が変わって。『実は旦那の形見だったんです』と。色あせて使えなかったんだけど、染めてもらってまた被れますとすごく喜んでもらえて」

山勝染工株式会社

思い出が詰まったタンスの肥やしを蘇らせる。実物を目にすると、服を買って得られる高揚感とは全く別の感動が湧いてきます。この体験をぜひ多くの方に味わっていただきたいです。

山勝染工の染め替えサービスでよみがえったシャツ

色落ちちや汚れてしまったお気に入りの服をクリーニングするように、職人の伝統技術で染め替えもう一度袖を通す。山勝染工が提案する「カラーリング」。Tシャツは3300円〜、パンツやスカートは4400円〜。綿・麻・絹など天然素材の衣類で利用可能です。

(問)山勝染工 https://yamakatu.co.jp/staining

1月18(水)より、Begin FUNDINGでも特別メニューによる染め替えサービスを受付中。第1期は3日間でSOLD OUTしてしまったので、ぜひお早めにチェックください! 第2期の受付期間は2023年2月20日着分まで。

Begin FUNDING https://market.e-begin.jp/collections/beginfunding

※表示価格は税込


写真/平井俊作 文/森田哲徳

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