特集・連載
文房具(グ)ルメ
鉄の掟が破られた!? “追いソース”はダメでも“追いインク”できちゃう、ぺんてるのノックル
文房具マニア・ヨシムラマリの文房具(グ)ルメ 国内外のブランドがひしめき、文房具大国といわれる我が日本。高級品が威厳を放つ一方で数百円の筆記具がイノベーションを起こすなど、貴賤上下の別のない世界はラーメン店がミシュランの星を獲得するニッポングルメと相似関係にあり。というワケで、文房グルマンのイラストレーター、ヨシムラマリ氏がその日の気分とお腹のすき具合でさまざまな文房具を食リポしちゃいます。描き下ろしイラストとともにご賞味あそばせ! この記事は特集・連載「文房具マニア・ヨシムラマリの文房具(グ)ルメ」#23です。
最近は、家でもホワイトボードを使う人が増えているのではないかと思う。従来の買い物メモ的な使い方や家庭内での連絡・共有目的での使用に加えて、在宅ワークのニーズがあるからだ。
リアルの会議室であれば誰かが板書をまとめて、それを見ながら議論を深めることができたものだが、オンラインのWEB会議であれば、自らやるしかない。自分の中で考えを整理したり、それをカメラ越しに人に見せたりするのに、小さめのホワイトボードを用意したという人もいるのではないだろうか。
近頃、ホワイトボードは百円均一ショップなどにも置いてあり入手しやすくなったが、問題はホワイトボードマーカーである。
会社であれば、備品として総務担当の方がきちんと管理してくれていて、いざ使おうとしたらかすれて読めない!となっても「新しいのちょうだい~」と伝えたら交換品をすぐに入手できたものだが……。
自宅で使うとなると、管理するのも自分、交換品を用意するのも自分。正直、かすれて読みにくいな……と思いながらも、「いや!まだまだイケる!」と謎のがんばりを発揮し、ズルズルと使い続けてしまったりする。だって、新しいのを買いに行くのはめんどうくさいし、そもそもどれくらいかすれたら交換のタイミングなのかもわからないし。
そんな人にこそおすすめしたいのが、ぺんてるのホワイトボードマーカー「ノックル」である。名前からすると、ノック式のホワイトボードマーカーってこと?と思うが、そうではない。ペン先はごくごく普通にキャップがかぶさっているだけだ。では、このノックボタンは何のためについているのだろうか?
実はこれ、ペン先にインクを供給するためのボタンなのだ。筆記線がかすれてきたな~と思ったら、このボタンをプシュプシュと数回ノックすると、インクがペン先まで新たに押し出されて、再びクッキリと書けるようになる、という仕掛け。
使ってみると、筆記線がハッキリクッキリとしているのはこんなにも気持ちがいいのか、と思い知らされる。そして逆に、かすれた文字でギリギリまで粘っていたのって、意外とストレスだったんだな、ということも……。
プシュプシュしてもインクが出なくなったら寿命ということで、交換時期がわかりやすいのも、もったいない精神に支配されがちな人間としてはありがたい。
自宅で使いやすいのは細字のタイプで、黒の他に赤・青・緑のインキ色が用意されている。他にも、中字、丸芯・太字、平芯・太字というバリエーションがあるので、会社の会議室など、もっと大人数に向けて文字を書く場合にはこちらを選ぶといいだろう。
「二度漬け禁止」は串カツ店では鉄の掟だが、こちらは追いソースならぬ「追いインク」が気軽にできる。クッキリコッテリの濃い書き味、ぜひ最後までご賞味あれ。
ぺんてる
ノックル 細字
198円
https://www.pentel.co.jp/products/marker/knockle/
※表示価格は税込み
ヨシムラマリ
神奈川県出身。子供の頃、身近な画材であった紙やペンをきっかけに文房具にハマる。現在は会社員として働くかたわら、イラスト制作や執筆を手掛けている。著書に『文房具の解剖図鑑』(エクスナレッジ)。