迷迭香(マンネンロウ)坂下史郎さんをめぐる、これからのシン・スタンダードとは #087
「山での調理という目的のために最大化されたプロダクトデザイン」
迷迭香 デザイナー 坂下史郎さん
ここ数年、週末ごとに山梨へと通う二拠点生活を愉しんでいます。山暮らしでは農作業や近隣のトレイル散策といった外での時間がメイン。もともとは釣りやトレランなど山で遊ぶことが主目的だったのですが、だんだんと山の中で過ごす時間そのものが愛しくなり、コーヒーや簡単な食事が欠かせなくなってきたんです。
そこで湯沸かしのためのストーブが欲しくなって。一般的なガス缶タイプも試したのですが、山ではなるべく小さな荷物で身軽かつ身近に自然を感じたいので、嵩張るギアはしっくりこない。そんなこんなで見つけたのがチタン製のこのストーブです。
落ち葉や小枝を投入して燃やせる折り畳み式の設計ですが、中に同社の「マルチフューエルストーブ」を組み合わせ、アルコールを燃料にして使うことが多いでしょうか。液体なら残量がわかりやすく、必要な分量だけ小分けで持ち運べますし。
使用時に安定感のあるヘキサ形状は本体自体が風防にもなり、鍋をのせるゴトクの役目も果たしと、用途が最大化されている。焚き火台としても使えますし、よく考えられたプロダクトデザインだなと感心します。
使うシチュエーションとそこに必要な機能、すなわち本質的なところから入るので、ファッションとは考え方が根本的に違いますよね。そういった気づきはおのずと自分のデザインにも還元されているように思います。
VARGO[バーゴ]
ヘキサゴンウッドストーブ
チタンを採用した軽量の折り畳み式ストーブ「ヘキサゴンウッドストーブ チタン」。同社の「トライアドマルチフューエルストーブ」と組み合わせれば、本品は風防としても活躍。D127×H101mm。1万780円(ケンコー社)
迷迭香 デザイナー
坂下史郎(さかしたしろう)
1970年生まれ。セレクトショップや著名ブランドのMD職を経て、独立。毎週末の山歩きがオフの定番で、自身のブランドの一つ迷迭香には、その趣向を反映させたカントリーサイドで適度に機能する服が揃う。
※表示価格は税込み
[ビギン2022年11月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。