特集・連載
今、時計通が注目するディテールとは? ヴィンテージ・ドレス時計界の激レア盤
激レア盤を連れてきた 一軍時計はもう決めてるし、セカンドウォッチも持ってるし、そもそもアナログな腕時計を着ける必要なくなってきたし……。という時代ではありますが、なればこそ! 腕時計に求めたいのは、第1にロマン、第2に他人とカブらない独創性、第3に運勢を好転させる(かもしれない)モノ力。この3ポイントを兼備する、激レアな腕時計を探してきました。 この記事は特集・連載「激レア盤を連れてきた」#06です。
ヴィンテージの中でも特に入り込んだら奥が深いドレス系ウォッチの世界。ぶっちゃけ予備知識ゼロじゃ、激レア“盤”を掘り当てるのは至難の業(涙)。
というわけで、ここではその道のスペシャリストを直撃し、レアなヴィンテージの中でも特に激レアなディテールを持つ、通好みな3種を厳選。その見定め方を教えてもらいました。
通なセレクトに定評のある「江口時計店」代表の江口大介さんに聞いた
状態のいいドレス系ウォッチが豊富に揃う、超人気のヴィンテージショップ。修理工房も併設しており、アフターフォローも安心。住所.東京都武蔵野市吉祥寺本町1-34-11 本橋ビル1F ☎ 0422-27-2900
1950~60s IWCの「バレットインデックス」+「魚リューズ」
細かいパーツにまで手間を惜しまなかったIWC
バレット=砲弾形になったクラシカルな意匠
よく見てほしいのがインデックスの形状。長方形のバーインデックスがポピュラーだが、当然形が複雑なほど作る手間がかかる。
1960年代に入って他社がインデックスの形を簡略化させるなか、IWCは文字通り“砲弾”のような形状のバレットインデックスを60年代も採用し続け、生産効率よりもエレガンスを追求。名門のプライドが垣間見える意匠なのだ。
防水性の高いモデルにのみ刻まれた魚のマーク
また、ヴィンテージIWCのリューズは概ね2種類あり、1950年代後半~70年代くらいまで防水性の高いモデルには魚マークがあしらわれた通称“魚リューズ”を採用。防水性の低いモデルはマークなしだった。へぇ~。
around 50万円
1951 IWC
スナップバック式 ウォータープルーフラウンドケース
多面的なカットで光を反射させ、さりげにエレガンスをアピールする、十八番のバレットインデックスがキラリ。他にも2トーンダイヤルや筆記体ロゴ、12時位置のボールロゴなど、激レア意匠がテンコ盛り! 同社の名作軍用時計「マーク11」にも使われた手巻きムーブ“キャリバー89”が搭載されている。1951年製。径35mm。18KYGケース。48万1800円。
1970~80s ロレックスの「バックリーダイヤル」
スポーツウォッチにローマ数字を採り入れた革新性
視認性より見栄え重視!?のドレッシー仕様
高級スポーツウォッチの代名詞、ロレックスのオイスターケースも今日ではドレスに区分されるものの、かつてはあくまで“スポーツ畑の会社が作るドレス時計”と認識されていた。
そんななか同社は、1970年代に大胆にもドレス時計の専売特許とされていたローマンインデックスを採用。スポーツとドレスをミックスするという、当時としては画期的なデザインで時計界に新たなムーブメントを巻き起こした。
なお、バックリーダイヤルという名の由来は、ロレックス蒐集家として名を馳せた宗教家、ジョン・バックリー氏に由来するという説が有力。1980年代まで製造された。
around 100万円
1972 ロレックス
オイスター パーペチュアル デイトジャスト
定番のデイトジャストもバックリーダイヤルが採用されると、より威厳に満ちた顔つきに。ローマンインデックスは多くのブランドが採用しているが、微妙にフォントが異なっているのが面白いところ。遊びより視認性を優先してベーシックなローマ数字を採用する姿勢も硬派で同社らしい。1972年製。径36mm。自動巻き。SSケース。98万7800円。
1960~80s カルティエ タンクの「PARIS表記」
“SWISS”製なのに6時の下になぜゆえ“PARIS”!?
6時位置の下をよ~く見ると……、あれ!?
ここ数年、高騰の一途を辿るカルティエのタンク。なかでも6時位置に“PARIS”と表記のあるタンクは、好事家たちの間で争奪戦が繰り広げられている。これは1960~80年代半ばまで存在が確認される、超激レアディテール。
時計作りの聖地“SWISS”の名をレイアウトするブランドが多いなか、この名門ジュエラーは「自分たちはパリ生まれのブランドなんだぞ」というプライドを示したかったものと推察されるが、真意不明の謎多きディテールだ(もちろんパリ製ではない)。
その後は“SWISS”のみの表記、90年代後半以降のモデルからは“SWISS MADE”表記が通常となる。
around 150万円
1960s カルティエ
タンク ルイ カルティエ
ドレス系ヴィンテージ時計のなかでも断トツの人気上昇率を誇る、PARIS表記の入ったイエローゴールドのタンク。タマ数も少ないためここ数年で需要と供給のバランスが崩れ、同店でも現在10件以上のバックオーダーが入っているんだとか! 写真の個体は、1960年代製ながら状態がよく“PARIS”表記もクッキリ見える。相場は150万円前後(参考商品)。
※表示価格は税込み
[ビギン2022年8月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。