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千葉ロッテマリーンズ佐々木朗希

Photo by Kyodo News/Getty Images

オープン戦は試運転の場で勝ち負けは関係ないが

 プロ野球は2月1日の春季キャンプからスタートして、現在はオープン戦も終え、開幕を待つばかりとなっている。
 ここに至るまでの準備期間は、開幕メンバーを選ぶためのチーム内競争や、レギュラーが確定している選手が本番に向けて慣らしていく“調整の場”というイメージが強い。

 結果については、あくまで二の次。あまりに勝てないとマスコミが騒ぎ出し、ファンもやきもきしはじめるが、少なくとも現場ではそこまで一喜一憂はしていない。ベンチも、競争から抜け出してアピールしなくてはならない立場の選手以外には、成績と調整の相関性を求めていないのが実際のところだ。

先発投手の起用からわかる開幕1週間前の“本番”感

 しかし、いよいよ開幕が目前に迫ってくると、“お試しムード”はさすがに一変する。開幕1週間前あたりのゲームでは、選手起用も本番を想定したものとなり、キャンプで練習してきたことを実戦で確実に遂行できるかをチェックする場と化す。
 
 ひとつの例として、先発投手の起用について挙げてみよう。昨年(2021年)の開幕1週間前の3連戦と、実際に開幕してからの3連戦で比較をしてみた。下の表をみると一目瞭然。多くのチームが、3連戦とも一致した起用になっている。

 今年は、3月5日のソフトバンク戦で、自己最速の163キロを記録するなど160キロ台を連発し、5回を2安打無失点、9奪三振に封じた佐々木朗希(ロッテ)がいよいよ本格的に覚醒するのでは? と大きな話題になった。佐々木は、その後18日にも登板。中6日で迎えることになる25日の開幕戦(対楽天)は石川歩の先発で確定という報道がすでに出ているため登板はないが、あとに続く第2戦か第3戦で先発する可能性は高いとみていいだろう。ただし、昨年の佐々木はほとんどの登板で中10日以上空けていることを考えると、場合によっては次のカード初戦となる29日のソフトバンク戦での先発も否定はできない。

 いずれにせよ、オープン戦終盤は公式戦突入後のローテーションに則した登板サイクルで回し始めているということだ。

昨年の開幕投手

 こうした傾向が強まってきたのは、2000年代以降であると思われる。近年では、開幕1週間前の段階で開幕投手の指名・公表をすでに済ませている球団がほとんどなので、1週間前に別の投手を先発させて相手を煙に巻く意味はない。それならば、2戦目、3戦目も含めて、先発予定の投手を隠すことなどせず、むしろ公式戦同様のローテーションを敷いて本番に向けた準備を万全にさせたほうがよいという判断だ。

 表にはないが、リリーフ投手についても同様で、ある程度公式戦を想定した継投策をとる。もちろん、このタイミングで開幕ベンチ入りする予定の投手は全員投げさせることも目的にあるので、一律で1イニングずつ登板するケースがないわけではないが、いずれにせよ最終調整である。そこに“お試しムード”の要素は存在しない。

最終確認の場では本番を想定した起用や戦術となる

 投手起用だけに限らず、攻撃面を含めたチーム全体の戦い方についても、開幕直前のオープン戦は本番を想定した最終確認の場となる。
 打線については、開幕オーダーを想定した構成になるのはいうまでもない。逆にいうと、前年までレギュラーだった選手がスタメンに入っていない場合は、故障からの回復がならかなわなかったか、あるいは調整遅れか? いずれにせよ、出遅れ確定と考えるべきだろう。一方で、かわりに名を連ねている選手は、開幕戦で新たに抜擢されるチャンスをつかみかけているということになる。

 戦術面においても、ベンチでは今年目指している野球を遂行できるかどうかの最終見極めをしたいところ。そのため、この時期はその方針に従ったプレーを必ず実行してくる。
 もし、盗塁を積極的にしかける方針ならば、走るべき選手が一塁に出たらまず間違いなくスタートを切ってくるだろう。バントやヒットエンドランを重視する場合も、とにかく仕掛ける。

 当然、相手にも方針は知られてしまうことになるが、いずれにせよ、開幕すればわかってしまうこと。それより、ベンチが味方の選手に対して「今年はこういう野球をするぞ」という意志を明確に示すことで、キャンプやオープン戦序盤ではまだ半信半疑だった状態から、今一度、今年の方針を強固に共有させるのが一番の目的となる。

 むろん、攻撃以外のサインプレーや連携プレーなどについても同様。いずれも、「納得がいく状態」に仕上がったことを確認して、開幕を迎えたいというのが本音だろう。つまり、この時期の戦い方をチェックすることで、観戦する側であるファンや野球好きも各チームの今シーズンのチーム方針をつぶさに知ることができるということだ。

そして、最終調整期間を経ていざ開幕へ

 とはいえ、最終のオープン戦の戦いぶりが、必ずしも開幕以降の公式戦に反映されるとは限らない。ここでのプレー次第では、選手起用や戦術の最終修正を余儀なくされる可能性がある。「今年は盗塁をしかける」とオープン戦のときには公言していながら、いざ開幕してみると、結局、走らなかった、走れなかったというのはよくある話だ。

 選手の状態についても、まさにナマもの。開幕までに調整が間に合うことを想定していながら、結局、間に合わないことが判明する場合や、この期におよんで新たに故障離脱する選手が現れる場合もあるだろう。
 昨季は、新型コロナウイルス感染症の影響により、新外国人選手の来日が遅れる事態が頻発。開幕直後の戦い方に深刻な影響を与えた。今季もすでに、DeNAのオースティンとソト、巨人の坂本勇人ほか、各チームで主力級選手が故障やコンディショニング不良を理由に開幕戦不在となる見通しであることが報じられている。

 こうした直前のドタバタが、開幕戦で「え?」というオーダーや選手起用に豹変する可能性がないとはいえない。ありとあらゆる要素を踏まえてギリギリまで調整した結果、果たして開幕以降、どういう展開になっていくのか?
 ひと冬待ちわびてようやく到来した球春である。たとえ贔屓の球団や推しの選手が予想だにしない結果を招いたとしても、それもドラマと受け止め、ペナントレースをより深く楽しんでほしい。

フリーライター
キビタキビオ

《野球をメインに媒体の枠を超えて活動》
2003年より専門誌『野球小僧』(現『野球太郎』)の編集部員を務める傍ら、様々なプレーのタイムを計測する「炎のストップウオッチャー」を連載。12年にフリーとなり、インタビュー、データ、野球史の記事や選手本の構成など幅広く担当。『球辞苑』(NHK-BS1)にも出演中。

文/キビタキビオ

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