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腕時計好き、いや、いいモノ好きなら絶対に知っていないとマズイ、後世に語り継がれる時計開発の名勝負を厳選して集めてみました。さぁ第2戦、FIGHT!
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知っておくべき名勝負 2

1969年
『自動巻きクロノグラフ開発 三つ巴の戦い』

クロノマティック VS   エル・プリメロ  VS     ファイブスポーツ スピードタイマー 6139

 

時計界の長年の悲願に果敢に挑んだ3グループ
1969年。クロノグラフ好きならこの年を永遠に記憶にとどめるべきだ。それまで開発は極めて困難とされていた”自動巻きクロノグラフ”を、3つのグループが相次いで商品化したからだ。

 

グループその1

 「クロノマティック(キャリバー11)連合軍」

  世界的発表が一番早かったムーブメントが、同年4月のバーゼルでお披露目されたクロノマティック。ホイヤー、ブライトリングというクロノ界の2大巨頭がまさかのタッグを組んだだけに、設計はじつに理に適っていた。というのも自動巻き機構もクロノ機構も空間占有面積が広く、これが合体を困難にする大きな要因だった。そこで彼らはベースに当時ハミルトン傘下のビューレン製マイクロローター式薄型自動巻き機構を選択。そこに複雑機構の巧手、デュボア・デプラがクロノモジュールを載せ、”世界初”の栄誉に輝いたのだ。

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MOVEMENT PROFILE

(1)ホイヤー(現タグ・ホイヤー)、ブライトリング、ハミルトン(ビューレン)が共同で開発することを約束
(2)上記の3 社にクロノグラフ・ムーブメント専用メーカーデュボア・デプラ社 が参加
(3)ビューレン社の薄型マイクロローター式3 針ムーブメントにデュボア・デプラ社がクロノグラフモジュールを搭載!

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クロノマティック搭載モデル

[ホイヤー]モナコ

ホイヤーは、既存の「カレラ」「オウタヴィア」などのほか、新たな「モナコ」にもクロノマティックを搭載。うちモナコは世界初の角型防水時計としても話題となり、スティーブ・マックイーンも映画『栄光のル・マン』で着用した。ちなみにクロノマティック搭載機は左リューズが特徴。それまでの手巻きクロノとの違いを明確にアピール。

 

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クロノマティック搭載モデル

[ブライトリング]クロノマティック

ナビタイマーの派生モデルとして1969年に誕生した「ナビタイマー・クロノマティック」。”腕に着ける計器”を標榜する同社らしく、各種計算のための目盛りでぎっちり。2005年に復刻モデルも作られたが、今はディスコンだ

 

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クロノマティック搭載モデル

[ハミルトン]パン ユーロ

クロノマティック搭載機はホイヤー、ブライトリングのほか、ビューレンを合併したハミルトンからも幾つか登場した。写真は1971年発表のパン ユーロ。当時かなりのヒットとなり、2012年には限定復刻も果たしている。

 

VS

 

グループその2

「エル・プリメロ軍」

 一方、残る2グループも凄まじい完成度だった。まずエル・プリメロ。こちらはモジュール式ではなく完全一体型と、より高度な構造を採用。しかも毎時3万6000振動の超ハイビートで高精度を叶える、怪物ムーブだったのだ。

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MOVEMENT PROFILE

(1)3針自動巻きムーブメントをベースにすることなく専用の自動巻きクロノグラフムーブメントとして開発
(2)なんと毎時3 万6000振動を実現!
(3)のちにロレックス コスモグラフデイトナにも採用

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エル・プリメロ搭載モデル
[ゼニス]エル・プリメロ

写真は1969年製の初代エル・プリメロ。じつは毎時3万6000振動も、約50時間のパワーリザーブも、クロノグラフとしては世界初だった。随所を改良しながらも基本設計は変えず、今なお世界最高峰クロノグラフに君臨し続ける。

 

VS

グループその3

「ファイブスポーツ スピードタイマー 6139軍」

 セイコーのキャリバー6139も、コラムホイールや垂直クラッチなど革新的設計。ちなみにその発売は’69年5月(連合軍は夏頃、エル・プリメロ軍は10月頃)と、3グループ中もっとも早く量産化! 世界的な発表こそしなかったが、この事実からじつはセイコーが一番早く開発に成功していたと見る時計ファンもいる。

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MOVEMENT PROFILE

(1)じつは量産化したのが一番早かった!
(2)コンパクトでもっともリーズナブルなムーブメント
(3)’70年代半ばまで生産

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キャリバー6139搭載モデル

[セイコー]ファイブスポーツ スピードタイマー

1969年に発売開始。搭載するCal.6139は、コラムホイールや垂直クラッチを採用する、かなり先鋭的な設計の自動巻きクロノグラフだった。1つ目レイアウトやぽっこりした近未来的ケースフォルムは、今見ても新鮮だ。

 なお3つのムーブのうち、今も現役バリバリなのはエル・プリメロのみ。時計史に残る開発競争の真の勝者は果たして……?

今、買える
直系&次世代現行モデル
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次世代モデル

ホイヤー
モナコ キャリバー11

’69年発表の初代を忠実復刻している。自動巻き。39×39㎜。SSケース。61万5000円。(問)LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー☎03-5635-7054

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次世代モデル

ハミルトン
パン ユーロ3 針
限定復刻のクロノは即完売し、今は3針のみ。自動巻き。径42㎜。SSケース。13万5000円。(問)ハミルトンスウォッチ グループ ジャパン☎03-6254-7371

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直系モデル

ゼニス
クロノマスター エル・プリメロ

現行ではシースルーバックからエル・プリメロの精緻な駆動を視認可能。メカ好きなら一度はそのサマを拝むべし。自動巻き。径42㎜。SSケース。80万円。(問)LVMH ウォッチ・ジュエリー ジャパン ゼニス☎03-5524-6420

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次世代モデル

セイコー
プレザージュ プレステージライン クロノグラフ

Cal.6139はすでに生産終了。今のセイコー自動巻きクロノグラフでおすすめはコレ。シースルーバックで10気圧防水を実現する高コスパな逸品。径42㎜。SSケース。20万円。(問)セイコーウオッチお客様相談室☎0120-061-012

 

【他の名勝負を知りたい方はコチラ】
第一回:『傑作時計”伝説の名勝負”』月面着陸編

第三回『傑作時計”伝説の名勝負”』機械式に変わる!? 次世代ムーブメント競争

 

[ビギン2017年7月号の記事を再構成]
価格は当時のものです。

文/吉田 巌(十万馬力)

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