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SONY ソニーのヘッドホン

本間昭光

本間昭光

プロデューサーとして、アレンジャーとして、作曲家として、誰もが口ずさめるヒットソングを数多く生み出してきた本間さんは、大のモノ好き。興味を持ったらとことん!な性格から、あらゆるモノに深い思い入れがあります。そんな本間さんの愛するモノの中から、音にまつわるアイテムにフォーカス。その魅力&エピソードを語っていただく連載、♯15は“ヘッドホン&イヤホン”〈前編〉です!!

初めてのヘッドホンは
音のステレオ感に驚いた

ボクがヘッドホンというものを初めて意識したのは、中学生時代でした。YMOのライブへ行ったときに、YMOの3人がヘッドホンをしながら演奏をしていたんです。黄色いイヤーパッドが付いた、ゼンハイザーの「HD414」というヘッドホン──。カッコいいなーと思って。

それまでは一部のオーディオ好きが好むマニアックなものとしてヘッドホンを認識していたのですが、ライブを観て考えが一変。猛烈に欲しくなりました。

YMOのライブ ゼンハイザーのHD414

YMOのライブでも使われたゼンハイザーの世界初のオープン型ヘッドホン「HD414」。世界中で1000万台以上売れたと言われる。

でも中学生のボクには、ゼンハイザーのそれは高くて手が出なかった。なのでどこかで安売りしていた、オーディオテクニカのプリアンプが付いたヘッドホンを最初に買ったのを覚えています。それまでラジカセで音楽を聴いていたこともあって、初めて聴くヘッドホンの音は、それはもう感動的でした。ステレオってこういうことか!というくらい音が立体的に聴こえて。モノラルでないステレオの音を初めて聴いたときもスゴいと思ったけれど、まだまだ序の口だったのだと思い知りましたね。

高校に入ると初代ウォークマン®が発売(1979年)されて、お金を貯めて買いました。ブルーとシルバーのボディに、オレンジ色の”ホットライン”ボタン(押すと音が小さくなり、ヘッドホンをしたまま会話ができる)の組み合わせがカッコよくて。ヘッドホンも付属していて、これがとても軽くて使いやすかった。せっかくなら登下校中にも聴きたいと思い、早速自分で編集したミックステープを聴きながら学校へ行ったのですが、その日のうちに盗まれたのは苦い思い出です。

ちなみに当時、イヤホンで音楽を聴く文化はまだ浸透していませんでした。イヤホンはモノラル再生が基本で、AMラジオで競馬中継を聴くおじさんが片耳に着けていたイメージだったんです。

ヘッドホンの名機は数あれど
モノをいうのは結局“好み”

上京してスタジオに出入りするようになると、ミュージシャンが使う“定番のヘッドホン”があることを知りました。1980年代後半に発売されたMDR-CD900シリーズもその1つで、試しに聴いてみるとびっくりするくらいの分解能があって、聴きやすい。これは欲しい!と思ったのですが、当時MDR-CD900STはソニーのスタジオでしか販売していなくて、人気もあったことからなかなか手に入れるのが難しかった。

SONY ソニーのMDR-CD900
使い込まれたことが一目でわかる本間さん私物の「MDR-CD900」。「小林武史さんは今もライブの際に使っていらっしゃいます。CD900といえば小林さんというイメージですね」。ちなみに、プロ仕様の「MDR-CD900ST」は現在も販売中だ。1万9800円(ソニーミュージックカスタマーインフォメーションセンター☎ 03-3515-5113)

それでどうしたものかと思っていたら、アメリカでは中身のドライバーは同じだけど型式の違う「MDR-7506」というヘッドホンが売っているということを知って(2002年には国内でも発売された)。オリジンにはない折り畳み機能もあるということで、これもイイなとアメリカにいる友人に頼んで買ってもらいました。でも、型式の魔力といいますか、中身は同じとわかっているのだけれどやっぱり「MDR-CD900」の音も聴きたくなってしまい、結局こちらも買うことに……。ここから、ボクの終点のないヘッドホン探しの旅が始まりました。

「MDR-CD900」の対抗馬として出てきたビクターのそれや、フランスの音響メーカーのフォーカルのヘッドホン、国産の楓材を使って作られたTAGO STUDIOのそれなど、以来たくさんのヘッドホンを買いました。どれも個性があって楽しいのですが、スタジオモニターとして使うヘッドホンは、色付けをすることなく音を聴ける必要があります。スタジオで使うヘッドホンは、現状、ソニーの最新作「MDR-M1ST」に落ち着きましたね。

SONY ソニーのMDR-M1ST
モニターヘッドホンのニュースタンダード「MDR-M1ST」。「ドライバーから耳までの距離がすこし長めで、部屋鳴りするように豊かな低音が聴けます。かつ、音の抜けがよくなるよう小さな穴を空けるなど、あの手この手で良音が追求されている、さすが最新の設計ですね」と本間さん。3万4650円(ソニーミュージックカスタマーインフォメーションセンター)

ただ善し悪しは結局、好みの世界です。ボクは「MDR-CD900」も、耐久性等を高めたよりハイグレードな「MDR-CD900ST」も好き。でも、中には高域が強すぎて音が聴き取りづらいという人もいる。

密閉式のほうがいいという人もいれば、周りの音も聴こえる半密閉式のほうが自然で疲れないという人もいる。ストレスなく音楽に没頭するには、好きなヘッドホン、聴き慣れたヘッドホンを使うのが一番だとボクは思います。皆さんもぜひ、試聴して好みの一本を探してみてください。

TAGO STUDIOとTOKUMIのコラボモデル T3-01
著名ミュージシャンも度々訪れる群馬県は高崎のレコーディングスタジオ、TAGO STUDIOと、ヘッドホン・イヤホンメーカーTOKUMIのコラボモデル「T3-01」。「低音が豊か。外の音も多少聴こえて、とても自然な響きです」と本間さん。木目の美しさも目を惹く。5万9400円(TAGO STUDIO☎ 027-395-0044)

音や映像の“同期”が、イヤホンを必需品にした

さて、そろそろ本題に。ヘッドホンやイヤホンをして、ライブ中のミュージシャンは何を聴いているのでしょうか? じつは客席に聴こえてはいけない、拍子を取るためのクリック音などをこれで聴いています。

シーケンサーから音を出して生演奏とリンクさせる、同期=シンクというシステムが浸透すると、とりわけイヤホンはライブの必需品になりました。

最初のうちは弾き始めの起点となるドラマーやキーボーディストがこれを着けていました。ですが’80年代の後半くらいから、ボーカルやギター、ベースもこれを着けるようになった。

走りは、ジェネシスやピンク・フロイドといったプログレッシブロック界隈のバンドたち。彼らが映像や照明をコンピュータープログラムによって演奏にシンクさせる試みを始め、これが浸透したことにより、演奏者全員が時間軸を共有する必要が生じたのです。

日本では、ユーミンさんがいち早くコンピュータを使った同期による演出をライブに採り入れていました。

本間昭光

今、ミュージシャンはズボンのポケットなどに入れた受信機から、有線でイヤホンにつないで音を聴いています。でもイヤホンで完全に耳を塞いでしまうと、聴きたい音だけを聴くことはできますが、せっかくのお客さんの声援が聴けなくなり、ライブで演奏しているのか何なのかわからなくなってしまう。これではあまりに寂しいので(笑)、客席にマイクを立てて、その音を拾ってイヤホンに返すという作業を行っています。ただ、ステージと客席には距離があるので、あまりこの音を大きくしすぎると時間差のせいで音がボヤける。なのでちょうどイイ塩梅のブレンドが大切。PAさんの腕の見せどころですね。

今後は360度の立体音響を踏まえた上での音作りも必要〈後編〉 へ続く

本間昭光

本間昭光(ほんま あきみつ)

1964年大阪生まれ。’88年に「マイカ音楽研究所」に入学。松任谷正隆氏に師事し、作曲アレンジを学ぶ。’89年、上京とともに「ハーフトーンミュージック」に所属し、アレンジャーやサポートミュージシャンとしての音楽活動を開始。

’99年にak.homma名義でポルノグラフィティのトータルプロデュース・作曲を担当。「アポロ」や「サウダージ」等のヒット曲を数々生み出す。2009年には、いきものがかり「なくもんか」の編曲を担当し、その後も「ありがとう」など、多くの楽曲のサウンドプロデュースを担う。最近ではアレンジを手掛けた筒美京平先生のトリビュートアルバム『筒美京平SONG BOOK』が発売中。また2020年にバンダイナムコアーツとともに立ち上げた「Purple One Star」レーベルでは、レーベルプロデューサーを担当。80’sの世界観を完全に再現した第一弾アーティスト、降幡 愛が話題。昨年秋に行われた2nd Live Tour “ATTENTION PLEASE!”のダイジェスト映像を公開中↓↓↓

降幡 愛オフィシャル YouTube Channel
https://www.youtube.com/channel/UCWfhLoV53Rwdc9WGw735IUg

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