特集・連載
SSZディレクターが語る「ZINEは自分を紹介する名刺のようなもの」
服好き視点のZINE研究 今、服やモノ好きな人たちがあれこれ探し、作っているのが「ZINE」。「雑誌(Magazine)に満たない雑誌」という意を持つ、なんでもアリな表現ツールは、自由だからこそ、価値観をぶつけられる。そんな熱いZINEとの出会いは、喩えるなら、グッとくる古着と出会ったときの感覚。好みの服を探すように、ZINEを探してみませんか? この記事は特集・連載「服好き視点のZINE研究」#01です。
服好き視点のジンといえばこの方、SSZのディレクター、加藤忠幸さんに話を聞かねばなりません! 根っからの服好きでいて、’90年代からジンに魅せられて、自らもジンを作り続ける。その魅力について話してくれました!
「SSZ」ディレクター
加藤忠幸さん
ビームスのサーフ&スケート部門のバイヤー&オリジナルブランド「SSZ」のディレクターを務め、自らデザインも手掛ける。インスタグラム@katoyasaiでもSSZの全ラインナップを解説している。
「作り込みに衝撃を受けた。捨てられないZINEはたくさんある」(加藤さん)
個人や少人数規模で作っている小冊子のこと。’80年代頃から米国西海岸のスケーターたちが、自分たちのスタイルを伝えるため、ファッション、写真やイラストなどをスクラップした小冊子を、友人らと交換し始めたことがムーブメントの発端となった。リトルプレスと呼ばれる少部数の出版物もあり、ジンとほぼ同義とされている。
小さくてもZINEは作り手の情熱がハンパない
ジンのルーツを辿ると’60年代のヒッピーカルチャーまで行き着くんだけど、服好き視点だと’80年代の南カリフォルニアのスケーター、バンドマンらが作り始めたジンが始まりですね。
自分のスタイルを紹介するフライヤーを詰めたものを作っては渡して、「コイツやべー、かっこいい!」、「オレも作ろー」みたいに広がっていきました。だから元は物々交換みたいなもので、売るものではなかったんです。名刺みたいなものですね。
僕も米国のスケート、サーフカルチャーが大好きで、高校の頃から作り始めました。’96年の入社当初は新宿に勤務してたんですが、帰宅時にはよく渋谷で降りて、タワーレコードのタワーブックスでイケてるジンをずっと探してましたね~。
その後サーフ&スケート部門のバイヤーになり、セレクトアイテムを紹介するジンを作って社内で配ってました。これがSSZのルーツで、もとはサーフスケート・ジンの略称だったんです。
手作りでとてもアナログなジンだったので、「変わったやつがいる」、「コピー機勝手に使うな」とか賛否両論あったけど(笑)、現ケネスフィールドの草野さんやレジェンドバイヤーの舘野さんらの応援もいただいて、’16年からレーベルとして服も作れるようになった。
改めてジンって、スタイルを伝えられるツールなんだと感じましたね。
国内外のジンに影響を受けた加藤さんは、自身でも40冊以上ものジンを作ってきた。上の写真は、加藤さんのジン、SSZの原本だ。
誰かの心に引っかかればいいなと思って作り続けてます
ジンにはいろいろな表現があるけど、地元・鎌倉の先輩やアーロン・ローズ、ダブルタップスの西山さんのジンにはめちゃくちゃ影響を受けた。根底にあるスタイル、アート、情熱がハンパなくて、いつ手に取っても心を揺さぶる。載ってる服が好きになる入り口になるし、とても刺激的なんです。
僕のジンは読み物として成立させたい、そして自分の気持ちを伝えたくて、アイテムの説明を怨念のごとくすべて手書きしてます(笑)。
「思いが伝わるのはちなみに……やっぱり手書き」(加藤さん)
加藤さんのジンのアイテム説明は、なんとすべて手書き! 膨大な時間を要するが、これも加藤さん自身を表すスタイルなのだそう。
ジンの説明が、アイテムのタグにもなってるんだけど、店舗でSSZの服を手にしたカップルを見かけたんですよ。すると彼女のほうがビッシリ説明書きされたタグを見て、「気持ちわるっ!」って言ったんです。あれはへこんだな~(笑)。
でも僕はなんでもスマホ上で完結しちゃう今だからこそ、手にして刺激的な服やジンを作りたい。今、改めてジンが注目されてるのも、そんな時代背景があるように感じますしね。ちなみにSSZのジンの原本は、ビームス 原宿で見ることができます。気になった方はぜひ足を運んで手に取ってみてください!
上は2016年にスタートしたSSZのジンと原本。各シーズン、コンセプトが設けられ、趣向を凝らしたアイデアが満載。加藤さんが解説するアイテム説明も読み応え抜群で、思わず欲しくなってしまう!
加藤さんがおすすめするZINEのあるショップ
Stacks bookstore
さまざまなアーティストから希少なジンまで、セレクトがすごくいいお店。グラフィックTやスウェットもあり、服好き視点のジンショップとしてオススメです!
住所.東京都渋谷区神山町42-2 Mビル2F
営業時間.木・金 15:00-20:00 土日祝 13:00-19:00
https://www.stacksbookstore.com/
[ビギン2022年1月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。