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2021新人王大本命のオリックスバファローズ宮城大弥選手

Photo by The Asahi Shimbun/Getty Images

2021年は早くもチームの主力となっている新人が続々登場

今季のプロ野球は、久々に新人王争いが熱い。セ・リーグでは佐藤輝明(阪神)、栗林良吏(広島)、牧秀悟(DeNA)の3人が、パ・リーグでは早川隆久(楽天)や、伊藤大海(日本ハム)、鈴木昭汰(ロッテ)といったルーキーたちが、早くもプロの第一線で頼りにされる存在になっている。

さらにパ・リーグでは、2年目ながら新人王の権利を有する宮城大弥(オリックス)が台頭。いまや本命候補になっているという激戦ぶりだ。プロ野球の歴史において、今シーズンのような新人王が3人以上で争われるケースというのは、過去、何度か存在している。今回は、そんなレアで熱いルーキーの戦いぶりを振り返りたい。

1990年パ・リーグ ◎野茂英雄、潮崎哲也、酒井光次郎、石井浩郎

さかのぼること約30年前となる1990年のパ・リーグ。独特のトルネード投法で、後にメジャーリーグのパイオニアとなる野茂英雄(近鉄)がフィーバーを巻き起こした。前年秋のドラフト会議で、史上初の8球団から1位指名を受け近鉄入りした野茂は、速球と大きく落ちるフォークボールを武器に18勝を挙げて最多勝。さらに、防御率、勝率、奪三振などの投手タイトルを総ナメにし、新人王とシーズン最優秀選手(MVP)も獲得した。

だが、新人王争いは一人旅というわけではなく、潮崎哲也(西武)、酒井光次郎(日本ハム)、石井浩郎(近鉄)といったルーキーも活躍。それぞれリーグから特別表彰を受けている。潮崎は右サイドスローからの速球と大きな落差のあるシンカーを武器にタフなリリーフとして活躍。102回2/3を投げて7勝4敗8セーブ、防御率1.84という好成績で西武の日本一に貢献した。

 左腕の酒井はカーブを交えた緩急を駆使する投球でシーズン3完封勝利を含む二桁勝利(10勝10敗)。肝炎を患うなどコンディション不良で開幕に出遅れた石井も、5月以降は豪快な打撃を披露し、86試合で打率.300、22本塁打と結果を出した。

1992年パ・リーグ ◎高村祐、若田部健一、片岡篤史、河本育之

この年は、駒澤大のエース右腕として鳴り物入りでダイエーに入団した若田部健一が本命視された。だが、開幕直後に鬼気迫る活躍をみせたのは、速球リリーフ左腕の河本育之(ロッテ)だった。開幕第3戦にプロ初登板のマウンドに立つと、7回からの3イニングで7奪三振の快投を披露。その後、抑えとなり、開幕から22イニング連続で無失点を継続し、4月の月間MVPを受賞。シーズンで2勝4敗19セーブという結果を残した。
 
また、野手では片岡篤史(日本ハム)が個性的な一本足打法で打率3割をキープ。終盤に息切れして打率.290、10本塁打、53打点という成績だったが、開幕戦から活躍し新人王争いを盛り上げた。

一方、シーズン前半、力投するも負けが続いた本命の若田部は、夏場以降、完封勝利を2度収めるなど追い上げたが、10勝13敗と負け越しでシーズンを終え、新人王レースからは一歩後退。最終的に、近鉄のドラフト1位右腕・高村祐が8月後半から7連勝して13勝9敗と勝ち星を伸ばし、新人王を獲得した。

この年も1990年と同様、ハイレベルな争いが高く評価され、新人王を逃した3名が、リーグから特別表彰を受けている。

1998年セ・リーグ ◎川上憲伸、高橋由伸、坪井智哉、小林幹英

1998年は、慶應義塾大で東京六大学リーグの通算本塁打記録を塗り替えた大物ルーキー・高橋由伸が巨人入り。明治大のエースで高橋のライバルだった川上憲伸(中日)との新人王争いが注目された。2人は開幕から期待どおり順調に活躍。高橋は打率.300、19本塁打、川上は14勝6敗という数字を残している。

ところが、この2人以上に猛烈な開幕ダッシュを決めたのが、社会人のプリンスホテルからドラフト4位で広島に入団した小林幹英だった。開幕戦でリリーフ登板後に味方が大逆転してプロ初勝利を収めた小林は、この年不調だった佐々岡真司(現広島監督)に替わり抑え役に昇格。連日大車輪の登板でカープの序盤の快進撃を支え、9勝6敗18セーブという好成績を残した。

さらに夏場に入ると、阪神で1番打者に定着した振り子打法の坪井智哉がみるみる打率を上げて首位打者争いに参入。リーグ3位の打率.327という好成績を挙げ、いよいよ新人王が誰になるかが読めなくなった。

結局、年間を通して先発ローテーションを守った川上が評価され、新人王を受賞。他の3名もリーグから特別表彰された。

2013年セ・リーグ ◎小川泰弘、菅野智之、藤浪晋太郎

2013年のセ・リーグは3人による新人王争いが展開された。もっとも注目されたのは、巨人・原辰徳監督の甥として巨人に入団した菅野智之だった。前年、日本ハムからのドラフト1位指名を拒否。1年浪人して巨人入りしたサラブレッドは、150キロ級の速球と打者の手元で鋭く曲がるスライダーを武器に安定した投球で13勝6敗の好成績を収めた。

また、大阪桐蔭で春夏甲子園優勝投手となった身長197センチの藤浪晋太郎(阪神)も、ひけをとらなかった。高卒ルーキーながら開幕ローテーションに入ると、7月までに6勝を挙げてオールスターにも出場。最終的に規定投球回数にわずかに届かなかったが、10勝6敗でシーズンを終えている。

だが、この2人を抑えて新人王を獲得したのは、ヤクルトにドラフト2位で入団した小川泰弘だった。メジャーリーグの速球王、ノーラン・ライアンに憧れ、左足を高々と上げるフォームで投げる小川は、4月3日のプロ初登板・初先発で初勝利を挙げると、先発ローテーションに定着。シーズン16勝4敗で、リーグ最多勝、最高勝率となり、文句ナシの新人王に輝いた。

そして、この年も3人によるハイレベルな争いが高く評価され、菅野、藤浪がリーグから特別表彰を受けている。

3人以上の新人王争いになった年は球界を代表する世代が誕生する

振り返ってみると、3人以上による新人王争いは、いずれも後世に語り継がれるにふさわしいハイレベルなものばかりであったことがわかる。今季の佐藤、栗林、牧によるセ・リーグ、宮城、早川、伊藤らによる争いになりそうなパ・リーグは、どのように展開していくだろうか?

いずれにせよ、しのぎを削った選手たちが、その後も球界を牽引するような存在となることは間違いない。最後まで白熱した新人王争いになることを期待している。

フリーライター
キビタキビオ

《野球をメインに媒体の枠を超えて活動》
2003年より専門誌『野球小僧』(現『野球太郎』)の編集部員を務める傍ら、様々なプレーのタイムを計測する「炎のストップウオッチャー」を連載。12年にフリーとなり、インタビュー、データ、野球史の記事や選手本の構成など幅広く担当。『球辞苑』(NHK-BS1)にも出演中。

文/キビタキビオ

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