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MOLESKINE モレスキンのミュージックノート ステッドラーの製図用ペン

本間昭光

プロデューサーとして、アレンジャーとして、作曲家として、誰もが口ずさめるヒットソングを数多く生み出してきた本間さんは、大のモノ好き。興味を持ったらとことん!な性格から、あらゆるモノに深い思い入れがあります。そんな本間さんの愛するモノの中から、音にまつわるアイテムにフォーカスし、その魅力&エピソードを語っていただく本連載。#01はモレスキンの「ミュージックノート」です!!

#01
モレスキン
ミュージックノート

MOLESKINE モレスキンのミュージックノートもう一回り大きいラージタイプもあるが、本間さんのお気に入りは手のひらサイズの小サイズ。日本では現在展開されていないため、海外に渡航した際に見つけるとまとめ買いしているそう。日本円でおよそ1500~2000円程度。

思い出まで広がるのは、アナログな手書きなればこそ

作曲にしても編曲にしても、メロディやコードがふいに思いつく瞬間というものがあります。街を歩いているときに急に降りてくることもありますし、誰かと食事をしているときのBGMがヒントになったりもします。忘れないために何かに記録するのですが、これがスマホの人もいればICレコーダーの人もいる。ボクもいろいろ試しましたが、結局紙に書くのが一番という結論にいたりました。

フィレンツェの街

アナログなものに残すと、見返したときにその前後の思い出まで広がる。ああ、あの街を歩いているときに思いついたフレーズだよな、とか、狭い路地だったな、とか。想いが乗る気がするんです。

写真をフィルムカメラで撮っていた頃のことを思い返してみてください。今ほど適当にバシバシとシャッターを切らず、その瞬間瞬間をもっと魂を込めて撮っていたし、現像した写真も大切にしていましたよね。ボクは、あの感覚を大切にしたい。

余談ですが、フィレンツェの街を歩いていたときにふと思いついたのがポルノグラフィティの「ジョバイロ」という曲です。

決め手は、いつでも持ち歩けるサイズ感と自由度の高さ

それで普段から肌身離さず持っているのが、モレスキンの「ミュージックノート」です。ボクは海外の文房具が好きで旅行に行ったときよくお店を覗くのですが、このノートは22年前にミラノの文具店で出会いました。サイズは2種類あって、ボクが愛用しているのは小さい手帳サイズのほう。鞄に入れてもかさばらないし、ポケットに入れておけるのはメモ用としてはすこぶる都合がいいんです。難点があるとすれば、なくしやすいことでしょうか。実際全部どこかなくしちゃって、今は新品しか手元にありません(笑)。

ちなみにこのノートに出会う前は、コースターとかその辺にある紙にメモを書いていました。「アポロ(ポルノグラフィティ)」のメロディは風呂場に入っているときに突然思いついたので、とにかく忘れないように「タッタタッタ〜」と繰り返し歌いながら急いで風呂を出て、何かの紙になぐり書いたのを覚えています。会食中の場合、いきなりメモを取るのも失礼なのでトイレに行くフリをして……ということもしばしばですね。

モレスキンのミュージックノート ステッドラーの製図用ペン

モレスキンのミュージックノートで、サイズのほかにもう1つ気に入っているのが、五線譜が横線だけで縦割りの線がないところ。リズムだけなら縦線で小節を区切らなくてもいいし、これだと自分の好きなように使えるんですね。あとは紙にしっかりと厚みがあるのがいい。メモ書きをするとき、間違えても消しゴムなんか使わないでグリグリグリッと塗り潰しちゃうんですが、モレスキンの紙はこれをやっても破けない強さがある。あと、開いたときにメリメリッて音がする感じとか、何回開いてもヘタってこないところも気に入っています。

譜面を書くには「ステッドラー」の製図用ペンがベスト!

何かメロディを思いつくと、大抵は「スゴいの思いついた!」と興奮してメモに残します。でも実際に使えるのは、その中の5分の1か10分の1がいいところ。一日置いて、冷静に弾いてみるとアレ?と思うことばかりなんです。でも忘れたころにノートが出てきて弾いてみたら、イイなと思うこともある。これもアナログな紙だからこそで、ICレコーダーに吹き込んだ自分の声では聞き直そうなんて思わないですよね。

ちなみに、メモを元にスタジオで作った楽曲は、ちゃんとした五線譜にあらためます。ボクの使っている五線譜は、ヨコがA3、タテがB5の特注サイズで、五線譜を12段にしているのが特徴。ちょっとマニアックな話になりますが、メロディとベースラインを入れた2段譜面も、ドラムを入れた3段譜面も、カルテットの4段譜面も、12段だと全部に対応できるんですよ。

ミュージシャンへは楽譜とデモの両方を渡します。バンドの場合は、コードだけを決めて細かい指定はせず、あとはバンドに任せるケースも多いですね。

譜面を書く際のペンは、ステッドラーの製図用ペンを愛用しています。芯の細いシャーペンだと、どうしても紙に引っかかってしまうんですね。しかもステッドラーのペンはとても握りやすい。譜面を書いているといつもペンだこのあたりが痛くなっていたのですが、このペンと出会ってから軽減された気がします。

オトの話。曲作りには“守る”のと“崩す”のが必要

ゼロから音を生み出す作曲にしても、生まれた音を活かす編曲にしても、曲作りには理論があって、理論に当てはめて作る部分と崩す部分の両方が必要だとボクは思っています。最近はクラウドにたくさん上がっているいい音(ボクも利用しています)を組み合わせて、コラージュのように楽曲を作る手法も流行りなのですが、理論から学んだボクら世代の人間には、どうしてこの音とこの音をぶつけちゃうんだろう?と思うこともしばしばあって。あんまりナゾを持ちすぎると老害になるので言わないのですが、理論をわかって崩しているのと、わからず崩れているのとでは、出来上がる曲はやっぱり違ってきますよね。

赤いチョッキの少年

ポール・セザンヌが描いた「赤いチョッキの少年」という絵があって、ボクはこの絵に惹かれます。明らかに手が長くてアンバランスだと当時の批評家には不興を買ったらしいのですが、でも、写実を崩すことでインパクトのある絵に仕上がっている。セザンヌは基本のデッサンを知っているからこそ、魅力あるものへ崩すことができたと思うんです。

そんなセオリーを崩す作業をサラッとできちゃう天才が世の中にはいるもので、槇原敬之くんもその一人。あるときボクが「このフレーズ、音と音が重なっているように思えるんだけど大丈夫?」と聞いたことがあるのですが、彼は「それぞれがキレイなフレーズだからイイんじゃない?」と言うんです。そのときはそうかな〜と思ったけど、実際に出来上がりを聞いたらスゴくよくて。ただただ、恐れ入りました。

あとビギンさんに聞かれたので答えますが、ウィキペディアに載っている「もう恋なんてしない」が当時失恋したボクを元気づけるために槇原くんが書いてくれた曲という話……ホントです(笑)。

本間昭光

本間昭光(ほんま あきみつ)
1964年大阪生まれ。’88年に「マイカ音楽研究所」に入学。松任谷正隆氏に師事し、作曲アレンジを学ぶ。’89年、上京とともに「ハーフトーンミュージック」に所属し、アレンジャーやサポートミュージシャンとしての音楽活動を開始。’96年に自身のプロダクション「bluesofa」を設立する。

’99年にak.homma名義でポルノグラフィティのトータルプロデュース・作曲を担当。「アポロ」や「サウダージ」等のヒット曲を数々生み出す。2009年には、いきものがかり「なくもんか」の編曲を担当し、その後も「ありがとう」など、多くの楽曲のサウンドプロデュースを担う。2020年にバンダイナムコアーツとともに立ち上げた「Purple One Star」レーベルでは、レーベルプロデューサーを担当。80’sの世界観を完全に再現した第一弾アーティスト、降幡 愛が話題に。早くも2ndミニアルバム「メイクアップ」がリリース予定。

降幡 愛オフィシャル YouTube Channel
https://www.youtube.com/channel/UCWfhLoV53Rwdc9WGw735IUg

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