文房具ルメ

ロンド工房 カードリッジ プロ

小さい水筒、というものが流行っているらしい。ブームの火付け役はポケトルという商品で、ポケットに入ってしまうほどスリムかつコンパクトでありながらも、保温保冷ができる水筒として大人気なのだという。何をかくそう、私もひとつ購入して、気に入って使っている。

水筒としての容量は120ml。コンパクトさが売りとはいっても、いくらなんでも少なすぎるのでは? と思うかもしれないが、これが案外ちょうどいい。120mlというのは、煎茶茶碗や、小ぶりなティーカップぐらいの容量だ。暑い時季なら物足りないだろうが、今ぐらいの寒い季節に「ちょっと喉が乾燥するから潤したいな」というときにはぴったりの大きさ。私は小一時間程度のウォーキングや、移動中の“保険”として飲み物を持っておきたいというときや、荷物をなるべく軽くしたい日などに持ち出している。

これまで持ち運べる飲み物といえば、ペットボトルでも水筒でも、小さいものを選んだとしても大体300ml以上はあるのが普通で、まあたしかに飲みきれないことも多いけれど、そういうものだと思って、特にそのことに対して不満も疑問も抱いてはいなかった。だが、いざこうしてミニマルなものがドン、と目の前に現れて「そうか、これでも十分だったのか」と気付かされるというのは、おもしろい体験だ。

ロンド工房 カードリッジ プロ

かつて、文房具で同じような発見をさせてくれたのが、ロンド工房が作るカードリッジ シリーズである。

カードリッジは要素を極限まで削ぎ落とした、超ミニマルな名刺入れだ。素材は紙で、3つ折りにした1辺を留めただけという、一瞬不安になるほどシンプルな構造だ。だが、これが案外ちょうどいい。

考えてみれば、営業職など頻繁に人と会う仕事でなければ、名刺交換の機会はそうそうないのではないだろうか。だが、その数少ない機会において、なるべく失礼はしたくないというのもまた名刺交換である。何しろ名刺を交換するということは初対面だ。名刺入れを忘れたとか、手帳のポケットや財布の中に大昔に予備として入れておいたはいいが、いざ引っ張り出してみたらくちゃくちゃになっていた名刺を渡すとか、そういった事態で第一印象を損なうのは避けたい。

そんなときのために、数枚の名刺をミニマルに携帯できるのがカードリッジなのである。名刺そのものとほとんど変わらない大きさと薄さなので、持っているのがまったく苦にならない。手帳のポケットなどに入れておいても、名刺をしっかり保護してくれるので、いつでもキレイな名刺を渡せて、いただいた名刺を整理するまで一時的に保管するのにも使える。

紙製といっても見た目には高級感があり、“間に合わせ”という感じがしないのもポイントだ。個人的には“かぶせ”があることで、名刺を取り出して渡し、いただいた名刺をしまうという一連の動きに、一般的な名刺入れと同じ“所作”が生まれることも、きちんとして見える要因ではないかと思う。

より高級感を求めるのであれば、革製のタイプもある。こちらも薄さ約0.5mmという紙のような革を使用しており、少々価格は上がるが、ミニマル感は紙製のものと遜色ない仕上がりだ。

滅多にないわりに、突然やってくる。そして、やってきたら、なるべくビシッと決めたい名刺交換。いつくるかわからないそのときに備えるためには、立派な名刺入れを常に持ち歩くしか方法がなかった。だがカードリッジがあれば、今までよりもずっと身軽に“そのとき”を待つことができる。

逆に、名刺交換の機会が多いゆえに「絶対に名刺を切らすことはできない!」という人は、ありとあらゆる上着と仕事カバンに予備の名刺を仕込んでおく、な~んて使い方ができるのも、ミニマルな名刺入れならではである。

水筒に、名刺入れ。こうでなくては、と思い込んでいるけれど、実は今よりもっとシンプルにできるものは、探せばまだまだありそうだ。

500円
https://rondowerkstatt.com/products/cardridge/

※表示価格は税抜き

ヨシムラマリ

ヨシムラマリ

神奈川県出身。子供の頃、身近な画材であった紙やペンをきっかけに文房具にハマる。現在は会社員として働くかたわら、イラスト制作や執筆を手掛けている。著書に『文房具の解剖図鑑』(エクスナレッジ)。

文房具グルメとは? 価格やブランド名だけでは価値が計り知れない、味わい深い文房具の数々。フランス料理店でシャンパングラスを傾ける記念日もあれば、無性にカップ麺が食べたくなる日もありますよね? そんな日常と重ねあわせて、文房具に造詣の深い気鋭のイラストレーターが気になるアイテムとの至福のひとときをご紹介!

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