特集・連載
“モノ好き中枢”を刺激する原点からのOPEN the DOOR “ギア”編
アウトドア界の501「シェラカップ」の成り立ちとその魅力とは
アウトドアはじめる!! パーフェクトBOOK 「今年こそアウトドアを!」というアナタへ。初心者、ギア音痴、センスゼロでも大丈夫♪ これならできる! 買っていいじゃん!なリアルなフィーリングを交えながら、アウトドアテク&モノ選びをどこよりもやさしくレクチャーします。きっと家族から、彼女から、友達から見直されること間違いなし! それに正しいギア選びをすれば、IN⇔OUTで使えて普段の生活までアップグレードしてくれますし、損はありません♡ さぁ、いざフィールドへ! この記事は特集・連載「アウトドアはじめる!! パーフェクトBOOK」#12です。
その道の“オリジン”と聞いただけで尊敬の念と物欲が湧くのが定番好きの性。アウトドア界では金属コップと同義ともなっている“シェラカップ”の成り立ちと魅力を、当代きってのフォロワーにお聞きします。
シェラカップとはいわば「アウトドア界の501」なんです
― 談・.....RESEARCH デザイナー 小林節正さん
シェラカップを集め始めたのは、たしか2000年頃。いろいろなキャンプ用品を蒐集し始めた時期だったんですが、飲み物に使うには実に按配が悪いことに気がつき……(苦笑)。底が浅いうえに角度が緩やかな逆台形フォルムに作られてるせいで、飲み物を飲もうとすると大抵こぼしちゃう。正直コップには不向きだと思います(笑)。
ただ食べるシーンでは優れている! 直接火にかけられるから調理器具として使えるし、口が広いからすごく食べやすいんです。でも、おそらくそうした“ギア”としての機能よりも、山好きたちの間で“オリジン”として認知されているということのほうが、シェラカップのコアな魅力なんじゃないでしょうか。
そもそもシェラカップは、自然保護の父と称されるジョン・ミューアが、1892年にサンフランシスコで創設した自然保護団体「シェラクラブ」で、会員証代わりに配られていたステンレス製カップが起源とされています。後に会のスタイルが変わり、カップを販売して売り上げの一部がクラブに寄附金として充当され、それを自然保護に役立てるようになりました。が、いずれにしろシェラカップを持っているということは、自然保護に関心のある人、という目印になったのです。
1984年に、シェラカップの容量に不満を持つバックパッカーが1パイントの水が入るロッキーカップを開発。山好きの定番品としてすぐに定着しました。今ではシェラカップとロッキーカップをひと括りに“シェラカップ”と呼ぶようになり、アウトドア界の公用語として浸透しています。と同時に、数多くのブランドが独自に“シェラカップ”を製作。
かく言う自分もその一人で、“アナルコカップ”と題し、東京の職人技と巧を駆使したシェラカップのクローンを製作しています。この流れは現在進行形。今もフォロワーは増えているようです。
これは言うなればリーバイスの501と一緒。多くのレプリカが誕生しているものの、オリジンとして未だにリスペクトされている。501を穿いてればとりあえず“わかってるじゃん”となるし、シェラカップを使えば、“環境に配慮している人”となる。
それもあってか、クラシックなアウトドアズマンはカップをリュックにぶら下げているでしょう? トレイル上で一番効く缶バッジ的な存在なんです。これこそシェラカップの偽らざる真価なのかもしれませんね。
Rocky Cup&Sierra cup
ロッキーカップ(上・中)&シェラカップ(下)
ヴィンテージ市場ではウン万円で取引されるステンレス製カップの原点。プラスチックと違って火にかけられるし、丈夫でガシガシ使えるのも魅力だ。熱が伝わらないように二又に分かれたハンドルも、象徴的なデザイン。小林さん私物。
多くのブランドがこぞってオマージュする
ANARCHO CUPS
アナルコカップス
アナルコカップ
オリジナルがプレス製法なのに対し、“ヘラ絞り”という伝統技法で職人が手作業で仕上げた工芸品。Φ12×H6cm。5800円(.....リサーチ ジェネラルストア)
CHUMS
チャムス
ブービーシェラカップ
内側に水の容量を計る目盛りを装備。使用時に底面に鎮座しているブービーバードと目が合うのも癒やし効果あり。Φ12×H4.5cm。1200円(チャムス表参道)
UNIFLAME
ユニフレーム
UFシェラカップ300
オリジンに近いフォルムを再現しながら、炊飯時の計量カップとしても使えるように1合目盛りが刻まれている。Φ11.9×H4.1cm。1000円(新越ワークス)
.....RESEARCH デザイナー
小林節正さん
1961年生まれ。服好きと山好き双方に愛されるマウンテンリサーチを筆頭に、“.....リサーチ”と題し、いろいろなジャンルを深く追求した製品を手掛ける賢人にして趣味人。
※表示価格は税抜き
[ビギン2019年6月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。