隠れカー・オブ・ザ・イヤー!? ボルボV60
2年連続で日本COTYを獲ったボルボ
じつはツウも唸るのはV60と断言!
輸入車が獲ること自体が稀だった日本カー・オブ・ザ・イヤーを、昨年のXC60に続き2018年はXC40で受賞するなど、北欧の名門、ボルボが勢いにのりまくっています。ちなみに自動車評論家の先生方は基本、クルマ好きなので、ペタンコでいかにもスポーティな走りのクルマに点数が入りやすい地合いの中、背の高いSUVで2年連続COTYを制したのはダブルの意味で快挙なんです。
ボルボといえば、平成ひとケタ辺りにワイワイやってた世代には、そう、スタイリッシュかつ実用的なエステートワゴンの代名詞。サーファーかフォトグラファーかスタイリストかアーキテクトか空間プランナー、みたいな、何となく自由な匂いのする横文字の肩書の人々が、絶対に死なないといわれた究極の安全性グルマの、愚直なまでに真っ四角のラゲッジスペースを敢えて選ぶ。そんな雰囲気がクレバーでカッコよくて、240や760、850といった数字だけの車名も国産車とはひと味違う、合理主義なイメージだったんですね(苦笑)。
さて2018年を振り返ると、じつはボルボの現行ラインナップの中でも直球ど真ん中、久々に放った渾身の球筋といえるミドルクラスのエステートワゴンが、この新しいV60なのです。






エステートワゴンだったらすでにV90があったわけですが、よりスペシャリティ・ワゴン色が強くてシュッとしていることが至上命題のV90に対し、V60は今どきの洗練フォルムとディテールに身を包んでいるとはいえ、よりスクエアで実用的。しかも1850mmという全幅は先代比-15mmで、ボルボ・カー・ジャパンの求めに応じてこれ以上拡げなかったらしく、日本の路上で日常的な扱いやすさと乗り味の余裕を味わえる、ちょうどいいバランス感といえるでしょう。要は四角くてジャストサイズなボルボのエステートが帰ってきた、そう捉えて間違いないのです。


ワゴンとしての随所要所に光る本領を、あのボルボが丹念に磨いてアップデートしているワケですから、荷室の使い勝手の工夫だけでもう、おかわり何杯もいけそうなほどの蘊蓄が詰まっています。テールゲートの開閉はリモコンキーとゲート側、ダッシュボードという3か所のボタン式スイッチで操れ、足をバンパー下で振るだけでゲート開閉するハンズフリー・オープン&クローズも備わります。またフロアはフラットであるのみならず、フロア下に仕切り付きストレージスペースが設けられ、テールゲートと連動してロックもかかるので貴重品を任せても安心。ちなみにリアシートバックを立ててトノカバーで覆った状態では、ラゲッジスペース容量は529ℓです。6対4のシートバックをボタン一発で倒せるのは競合他車でも見られる仕掛けですが、V60は電動モーター式でヘッドレストまで同時に畳まれるので、キビキビした動きとともに1441ℓもの巨大&フラットスペースが出現する様たるや、ちょっとしたトランスフォーマーのようです。
パワートレインは、今のところ直4・2ℓターボ「T5」と8速ATが組み合わされたFFモデルのみで、来年3月以降に「T6」と「T8」という2種類のプラグインハイブリッドAWDが揃う予定です。とはいえ254psに350NmというT5は、すでにボルボのラインナップの上から下まで積まれているよく出来エンジンで、小さいモデルに積めば活発、大きいモデルに積めばスムーズという、恐ろしいほどに得なキャラクターなんです。
そのT5が、1700kgという今どき重くもなければ特別に軽くもないV60ではどうか……と思ったのですが、そのマッチングぶりがこれまた、こなれててココロ憎い。しっとりとして過不足ない適度なパワー感に、落ち着いたしなやかな乗り心地で、運転していてじつに疲れにくいんです。しかもハンドリングは自然なフィールで、正確さはもちろん軽快さすら感じさせる類のもの。昔のボルボのエステートの、中立付近が妙に鈍くてゆったりした雰囲気からすれば隔世の感がありますが、手の内への収まりがよくて疲れにくいタイプといえます。
そして何より感心したのは、試乗当日は生憎の強風と大雨だったにもかかわらず、卓越したボディ剛性による静粛性と密閉感、もっといえばテッパンの守られ感がV60の車内では醸し出されていたことです。この強烈な守護天使ぶりに加えて、ボルボ自慢の安全デバイスは最新モノが全投入されています。具体的にはインテリセーフと呼ばれる16種類以上ものパッケージで、アダプティブ・クルーズ・コントロールやレーンキープエイドといった運転支援機能だけでなく、駐車場でのバック時から交差点での対向車、挑戦走行時の反対車線まで、クロス・トラフィック状況での衝突を防ぐ機能がひときわ充実しています。


今どき感を求めるなら、栄えあるCOTYを獲った最新SUVは確かに旬のチョイス。でもドイツの高級車とも甚だ異なるボルボというクルマ造りを「わかっている感」、ひいてはツウも唸る完全無欠のエステートワゴンならば、真芯で食っているのはV60一択なのです。テキスタイルとのコンビ内装の「T5モメンタム」が499万円、パーフォレーテッド・ナッパレザー内装が標準の「T5インスクリプション」は599万円です。
文/南陽一浩