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美酒? 美醜? ビシュウ? そう、尾州です! 最近耳にすることが多くなってきているこの言葉。確かにスーツなどでは頻繁に聞く気がするけど、それだけでもないような……。

ちなみに尾州とは愛知県西部~岐阜県の一部を指す地名で、アパレル業界では彼の地の生地が重宝されてるみたい。ってことで、何やら気になる尾州をこのたび掘ってみた次第。尾州、かなり期待大!

 

尾州は織物のみならずニッティングにも長けていた

尾州は織物のみならずニッティングにも長けていた

スーツを着ない人こそ尾州を侮ることなかれ!

尾州といえばスーツ。そう思ってましたが、こんなにカジュアルなモノがあるなんて!(汗)。しかも、織物ではなく“ニット”です。

こちらを手掛けた宮田毛織は、パリで行われる生地見本市、プルミエール・ヴィジョンにも参加する世界的なニットの名手。超有名メゾンブランドにも、生地を提供しています。

で、このニットにも“バックカット”という、さりげなくも重要な技術が盛り込まれています。通常、細かな柄を表現する場合、2層で編み立てるダブルニットになりますが、こちらは軽く羽織れる風合いをキープするため、1層のシングルニットで作製。

すると、柄を表現するための糸が裏(バック)側で繋がってしまうのですが、いちいちそれをカットしているんですね。ダブルで編めばいいのに……なんて突っ込みは野暮。柄は表現したい、でも軽さは損ないたくない。そんなブランドの細やかなリクエストに応える匠の仕事ってわけ。

なるほど、世界のメゾンに頼られるのも頷けます。尾州はスーツのみにあらず! 木曽川が育んだ繊維産業の聖地、その底力を感じさせる秀作でした。

 

「バックカットジャカード」とは?


裏地を見るとわかりやすい!

表裏のない一枚のニットで、このように細かいジャカード柄を表現するのは大変な手間。ジャカードでは繋がった横糸が裏地に出現してしまうので(写真左)、整理加工で裏糸をカットしている(写真右)。
 
スーツを着ない人こそ尾州を侮ることなかれ!

 

“尾州=堅い”? そんな先入観を鮮やかに覆す

“尾州=堅い”? そんな先入観を鮮やかに覆す

ヒステリックグラマーのカーディガン2万6000円(ヒステリックグラマー)トゥモローランドのニット1万2000円(トゥモローランド)ユナイテッドアローズのパンツ2万円(ユナイテッドアローズ 六本木ヒルズ店)パラブーツの靴6万5000円(パラブーツ 青山店)
 

背中でも主張♪

背中でも主張♪
 
ヒステリックグラマーのニットカーディガン

ヒステリックグラマーのニットカーディガン

ライトな羽織りものとしてタイムリー! 部分的に厚みが異なるチェック柄のジャカードを採用。ところどころクラッシュしているように見える箇所もあり、ヒスらしいロックな雰囲気のアイテム。アクリル90%ウール、10%。各2万6000円。(ヒステリックグラマー)

 

「宮田毛織」とは

愛知県一宮市に構える、丸編みニットの専門メーカー。

独立系のニッターとしては国内最大手、だからこその充実の設備

愛知県一宮市に構える、丸編みニットの専門メーカー。世界のニット展示会で何年も連続して最高評価に輝くなど国際的に評価が高い。

名前こそ宮田毛織だが、現在は基本的に丸編みニットの専業メーカー。およそ150台もの丸編み機を所有し、8~40ゲージまでと、ひとつのニッターとしては異例の幅広いレンジに対応。
 
国内では宮田毛織にしかない
国内では宮田毛織にしかない、3つの異なる組織の編み地をひとつのニットに編み立てられるパイルニッティングマシン。ビックリ!
 
新しいニットの開発&提案に余念がなく、海外メゾンからの引く手が途絶えないのだとか。
新しいニットの開発&提案に余念がなく、海外メゾンからの引く手が途絶えないのだとか。ストレッチ系のスーツ生地なども手掛ける。

 

尾州毛織の基礎知識

尾州毛織の基礎知識

イギリスの「ハダースフィールド」、イタリアの「ビエラ」と並ぶ“世界三大毛織産地”のひとつ

尾州のスゴさを知らないのは日本人だけ。それが過言ではないほど、たとえば誰もが知るメゾンブランド(言えないのが残念!)も、じつは尾州生地を重宝しています。

その背景となるのが豊かな水質と水量を誇る「木曽川」ですが、無論それだけではありません。毛織物の各生産工程は専門性が高く、細かな分業が不可避。その各工程を担う工場が全て木曽川周辺に集合しているのが強みであり、世界屈指の品質に繋がっているんです。

Q.尾州ってどこ?
奈良時代から明治初期まで続いた「尾張の国」の別の呼び名。今日の行政区でいえば、愛知県一宮市をはじめにぐるっと名古屋のほうまで。さらに岐阜県・美濃地域の一部も含まれる。

Q.なんで盛んなの?
上のマップの通り、肥沃な濃尾平野に恵まれた水質の木曽川が流れているから。繊維産業では、原料の洗浄や染色で相当な水量を使うのだ。で、昔から桑や綿花の栽培が盛んだった。

Q.いつ頃から?
もとは麻や綿織物を手掛けていたが、約100年前、明治時代の殖産興業政策の流れでウールを選択。一次大戦の影響でヨーロッパの毛織物がストップし、軍需を下支えに発展した。

 

※表示価格は税抜き


[ビギン2018年11月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。

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え〜!? そうだったの!? じつは“尾州”はカジュアルにも強いッ!

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