「篠原風鈴本舗」の江戸風鈴が奏でる別格の音色【涼を支える民藝品】

篠原風鈴本舗の宙吹きの江戸風鈴

日本には昔から、目で、手で、音で涼を取り入れる知恵がありました。どれも暮らしの中にすっと入り込み、夏を心地よくしてくれるものばかり。そうした日用品の中に美を見出してきたのが「民藝」です。職人が丹精込めて作った日常の道具たちは、暑い季節の食卓や部屋の景色を涼やかに整えてくれるんです。

耳で感じる涼
篠原風鈴本舗の宙吹きの江戸風鈴

【澄んだ音色が江戸の夏を知らせる】

五感で涼を取り入れるのが日本の夏の知恵。その中で「聴覚の涼」を担ってきたのが風鈴です。もともとは中国の占いの道具が起源で、日本に寺院の魔除けとして伝わったものが江戸時代には庶民の夏の風物詩へと変わっていきました。鉄や陶器などさまざまな風鈴がある中で、銀座たくみが勧める東京の手仕事のひとつ、篠原風鈴本舗が作る江戸風鈴です。

篠原風鈴本舗の宙吹きの江戸風鈴

絵付けのこだわりも江戸風鈴の見どころ。すべて職人の手仕事で、しかもガラスの外側ではなく、内側に描く。こうすることで表面の絵が落ちにくくなるだけでなく、透明なガラス越しに絵がやわらかく浮かび、独特のぬくもりが生まれるのだ。「藤」(写真右)や「あやめ」(左)など夏の風物を描いたさまざまな絵柄が揃う。各1760円(銀座たくみ)

「この工房が作る風鈴は見た目も音色もひと味違うんです。その特徴のひとつが、伝統的な宙吹きによって生まれるやわらかなフォルムです。型を使わず、ガラスを空中で吹きながら成形するため、少しでも手を止めると、たちまち形が崩れてしまいます。さらに特徴的なのが、あえてギザギザに仕上げられた鳴り口。鈴の舌が触れたときに摩擦によって細かな振動が生まれるため、澄んだ音色につながります。切り口や仕上げの違いによって鳴り方にもわずかな差が生まれるのも手仕事ならでは」

野﨑 潤さん

「形や絵、音色が一つひとつ微妙に違うのが手仕事の証し」

ガラスの内側に手描きされた草花や金魚といった絵柄も、素朴で親しみやすく、江戸の粋を感じさせるものばかり。ガラスの成形から絵付けに至るまで、江戸の美意識と手仕事が息づきます。

「しかも、その工房は高温の窯を扱うため、すごく暑い。涼を呼ぶ道具が灼熱の中から生まれる。その逆説もまた、この風鈴の味わい深さの一部といえるでしょう」

篠原風鈴本舗

 
「篠原風鈴本舗」
1915年に東京都江戸川区で創業した風鈴工房。熱したガラスを空中で吹きながら成形する伝統技法・宙吹きと澄んだ音色を生むギザギザの鳴り口が特徴だ。鈴の形状や切り口、手描きの絵柄まで手仕事で仕上げられた風鈴は、工業製品にはない味わいを感じさせる。

 
※掲載商品はすべて数に限りがあります
※表示価格は税込み


[ビギン2026年7月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。

Begin 2026年7月号の表紙

Begin 2026年7月号

これからの涼品名鑑

定価820円(税込)

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