部屋に飾っても涼やか。人間国宝が作る名物うちわ【涼を支える民藝品】

日本には昔から、目で、手で、音で涼を取り入れる知恵がありました。どれも暮らしの中にすっと入り込み、夏を心地よくしてくれるものばかり。そうした日用品の中に美を見出してきたのが「民藝」です。職人が丹精込めて作った日常の道具たちは、暑い季節の食卓や部屋の景色を涼やかに整えてくれるんです。
あと何本作れるのか……
人間国宝・芹沢銈介の型絵染めのうちわ
染色家
芹沢銈介
1895年静岡県生まれ。東京高等工業学校卒業後、柳宗悦の思想と沖縄の紅型に出会い染色の道へ。下絵から型彫り、染めまでを一貫して手がける独自の型絵染めを確立し、暖簾や着物、屏風、掛け軸まで幅広い作品を制作した。
【秘蔵の型絵染め和紙を使った名物うちわ】
うちわの歴史は古く、弥生〜古墳時代に中国から伝わり、奈良・平安時代には貴族の儀式用として使われ、江戸時代になると庶民にも広まりました。銀座たくみにも毎年色とりどりのうちわが並びますが、一番人気を誇るのが芹沢銈介の型絵染めのうちわです。

銀座たくみの倉庫に眠る芹沢銈介の型絵染め和紙。以前は額装して販売していたこの和紙を使い、国の伝統的工芸品にも指定されている房州うちわに仕立てた。芹沢工房やうちわ工房と深いつながりを持つ同店だからこそ実現できた特別な一品だ。写真の「紅葉文」のほか、毎年8~10種類の図柄が入荷する。6600円(銀座たくみ)
「芹沢染紙研究所から仕入れたうちわ用の型絵染めの和紙が多く残されていました。そして今から3年前にこれを活用してうちわを仕立てようとなり、版権者の許可を得て今に至ります」(野﨑さん)
植物や文字、風景を大胆に捉えて、リズミカルな文様へと昇華するのが芹沢銈介の作風。どの図柄もおおらかで、かつ暮らしになじむ温かみを備えています。また、うちわ自体も工芸品です。
「染色と工芸、職人の手仕事が生み出す風の民藝です」(野﨑さん)
「千葉の房州うちわは京、丸亀と並ぶ日本三大うちわのひとつ。しなやかな女竹を一本のまま使い、節から上を割いて骨を作り、節から下を柄にする丸柄の構造は、丈夫で持ちやすく、使い心地のよさにもつながっています」
あおいでみると竹のしなりが生む風は力強く、それでいてやわらかい。和紙のざらりとした質感や竹のひんやりとした手触りも涼を感じさせてくれます。実用品でありながら、部屋に飾っても涼やかな景色を演出できます。
作れるのは店にある和紙が尽きるまで。この夏好みの柄に出会えたら、それは幸運です。
※掲載商品はすべて数に限りがあります
※表示価格は税込み
[ビギン2026年7月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。
