着ているだけで整う服/【COVEROSS】と語るミライ服vol.9

OpenAIがChatGPTを公開して以降、急に身近な存在となったAI。ナノテクノロジー、コールドフュージョン、タイムトラベル……。先端技術が今、実際のところどこまで進んでいるのか、研究者でもない私たちが知る機会はなかなかない。
一方、私たちが毎日着ている「服」も、最近ずいぶん進化しているような気もするが、相変わらず夏は暑く、冬も外へ出たくない。洗濯も面倒だ。しかし、もう少しすると35℃の真夏でも快適にゴルフができて、氷点下でも外出がしたくなる、しかも洗濯不要! そんな服が当たり前になるかもしれない。
そんな“新しい当たり前”を作らんとするブランドが、機能服のテクノロジーを日々前に進め、ファッションだけでなく産業界や行政からも話題を集めている「COVEROSS®(カバロス)」。我々の「衣」がこの先どこに向かって、今はどこまで来ているのか? Beginは密着取材を通してカバロスに聞いてみることにした。

カバロスとビギンのコラボブランド「COVEROSS W(カバロス ダブル)」より、特殊なセラミックスが発するマイナス帯電した電子によりカラダを“整える”力をサポートする「Perfect Reset Slacks(パーフェクトリセットスラックス)」=「最高に整うスラックス」がリリースされた。
特殊なセラミックスとはいかなるもので、どんな作用をするのか? 原料の開発者であるバイオケミカルイノベーションの徳田美幸氏と、スラックスの制作に携わったビギン本田に話を訊く。
おさらい COVEROSS Wって?
多機能を同時に付与する独自のテクノロジーで、さまざまな問題を解決せんとする話題のブランド「カバロス」とビギンによるコラボブランド。「ダブル」には価値を倍加するという意味と、世界に打ち出したい願いを込めた。
ミライ服共犯者 No.12

バイオケミカルイノベーション 取締役最高技術責任者 徳田美幸さん
1960年、新潟県生まれ。地元の高校を卒業後、日本工学院専門学校公害工学科へ入学。水処理の専門企業に入社し開発部を立ち上げ、取締役に就任する。その後、新潟県上越市にて開発研究会社を設立し、現職へ。機能性セラミックスのプロフェッショナルとしてさまざまなセラミックスの開発に勤しむ。特許の出願実績は200件以上。モットーは「できるまで、やり続ける」。
ミライ服共犯者 No.6

Begin グローバル戦略部 本田純一
2007年に世界文化社へ入社。パズル誌の編集を経てBegin編集部へ移り、現在は雑誌メディアの枠にとらわれず世界へ向けた発信を行うグローバル戦略部に所属。ハップ代表の鈴木さんとは昨年6月に出会い、意気投合。密着連載を進めながら、コラボレーベルの設立に奔走する。座右の銘に「生きるはつなぐ」。
リセットの要は、マイナス帯電した電子を放つセラミックス!

オフィスで仕事をしながらカラダが整い、部屋で寛ぎながらさらに整う。そんなパンツがもしあれば、QOLの向上に付与してくれるのではないか──。そんな思いから「最高に整うスラックス」こと「パーフェクトリセットスラックス」の開発は始まった。
ドレッシーであること、楽ちんであることは当然として、キーテクノロジーとしてカバロス ダブルが採用したのが、半永久的にマイナス電子を発生させる機能性セラミックス素材「セラメア」だった。セラメアには血流量の増加であったり、副交感神経への働きかけであったり、さまざまな作用があることが信州大学とカバロスの共同実験によって示唆されている(※セラメアを用いた別のウェアの実験に基づく)。

この特殊なセラミックスのなんたるかについて、原料である機能性セラミックス粉「セラメア」を開発したバイオケミカルイノベーション徳田美幸氏は次のように語る。
「セラミックスは、日本語では『無機酸化金属』といいます。瀬戸物もセラミックスですね。『機能性セラミックス』は文字どおり機能を付与したセラミックス。『セラメア』は、マイナス帯電した電子を放つセラミックスです。電子が左から右に流れると、電気が右から左に流れる。だからセラメアの周りの空間には、電気が流れているんです。
じつは昨今人気のリカバリーウェアにも、電気の力を利用したものがあります。寝返りをすると、生地が擦れて微弱な静電気が生じますよね? その電気によって、さまざまな効能を得るのです。ベストセラーの美顔マッサージ器も、生じた電気の微振動によるマッサージ効果を利用するものだったりします。ただ、セラメアが大きく異なるのは、まったく動かなくても半永久的に電気が流れるというところです」。
電池のイメージがあると半永久的という言葉にピンと来ないかもしれないが、その疑問については以下の説明で納得がいく。
セラメアは天然鉱石の合成物で、特に地球を構成する地殻の成分である二酸化ケイ素がベースとなっています。これは、非常に過酷な環境下(1000℃以上など)を除けば不変とされている鉱物あり、したがって、セラメアの寿命も半永久的というわけです。
セラミックスへ電子を放つ機能を付与するテクノロジーについてはマル秘だが、成分のベースとなっている二酸化ケイ素含め、食品や化粧品としても摂取しても害のないもののみだという。
「ざっくりいうと、配合や粒径などの工夫で、電子を飛び出しやすくしています。電子は核の周りをぐるぐる回っていて、エネルギーを掛けると飛んでいくんですね。物質を細かくするとお互いの引力で物質同士が引っ張られるんですが、これを少し離して固定すると、間に電子が飛んで電気が流れる。セラメアはその集合体だと思っていただければ。ちょっと難しい話ですけどね」

試しにイオンテスターというマイナスイオンを測定する機器を用い、セラメア粉が詰まった袋から60cmほど離れた場所でこれを測定すると、「6」という数値が出た。これが15cmの距離に近づくと「132」。袋にぴったりくっつくと一気に「10836」という数値に達した。
ちなみにマイナスイオンとは、極小のマイナス電子が原子や分子に結合したより質量の大きな荷電粒子を指すが、ここではマイナス電子の量(電気が流れる量)の指標として用いる。
「パーフェクトリセットスラックス」の腰と両ふくらはぎに配したセラメア原料配合のフィルム上でマイナスイオンを計測すると、「156」の数値が出た。後述するが、セラメアは食品の鮮度保持のためのフィルムやトレーにも用いられており(高級フルーツの上にペラっと乗っているフィルムにも用いられていたりする)、この場合、20〜30ほどの数値が出ていれば効果がばっちり期待できるという。

次章ではこのマイナス電子(電気)が、どんな作用をもたらすかについてより詳しく見ていこう。
マイナス電子が、酸化や老化のジャマをする
機能性セラミックス「セラメア」の前身が完成したのは、2001年のこと。そもそもの開発の目的は魚などの食品の鮮度保持であり、当初は築地市場にてセラメアが用いられた。しかしマイナス帯電した電子を放つセラミックスがなぜ、魚の鮮度保持に効果があるのか? ヒミツは「酸化」のメカニズムにあるとセラメアの開発者である徳田氏はいう。

「酸素は生きるのに欠かせない元素ですが、物質は酸素とくっつくと酸化します。食品の場合は、酸化すると腐る。でも、食品の近くにセラメアがあると、マイナス帯電した電子がくっつき、食品自体がマイナス帯電します。酸素もマイナスに帯電していますから、同様にマイナス帯電した食品と反発し合い、酸素が食品につきづらくなる。つまり、酸化と腐敗を防げるんです。冷凍技術が発達していなかった頃の遠洋漁業では、獲った魚の頭と尻尾にピンを打ち、電気を流すことで鮮度を保っていました。これも同じ原理なんですね。さらにセラメアは、マイナス電子を放って周囲の空間に電気を流すので、直接触れていなくても作用するメリットもあります」。
そして酸化を防ぐことは、生物に置き換えればすなわち老化を防ぐことでもある。やがてセラメアが、エイジングケアの化粧品分野で注目を浴びることとなるのは当然の理であった。そしてこれをリカバリーに応用したのが、件のパーフェクトリセットスラックスなのである。
みかんが甘くなる!? マイナス電子の不思議な作用

セラメアの開発者である徳田氏には、こんなエピソードがある。あるとき徳田氏は、スネを骨折してしまったことがあるという。
「痛みを我慢しながら歩いて病院を探したんですが、そのうち足が腫れて、革靴が入らないような状態になってしまった。そこで閃いて、たまたま持っていたセラメアの粉を脛に当ててみたんです。痛みが引いたりはしませんが、目論見どおりにむくみは引いた。なのでまた革靴を履いて、病院へ向かうことができました」。
むくみが引くメカニズムについて、徳田氏はこう説明する。
「血液の赤血球は本来、周囲がマイナスに帯電しているんですが、ストレスが掛かったりするとプラスに帯電するものが出てきてしまうんです。するとマイナスに帯電した赤血球とくっつく。これがいわゆるドロドロの血液です。ここにマイナスの電子を飛ばしてやると、プラスをマイナスに変えることができます。赤血球がバラバラになるので、血液がサラサラになる。血流もよくなり、むくみが軽減されるというわけです」。
そして「血流がよくなると、副交感神経が優勢になるという論文もある」と徳田氏。実際、先にも紹介した信州大学とカバロスの共同研究においても、セラメア原料を用いたウェアを着ると総血流量が若干増加し、指先の抹消血流量も増加傾向にあることが示唆されている(※下図を参照)。

「副交感神経が優勢になると眠くなるといわれています。レム睡眠、ノンレム睡眠でいうレム睡眠の状態ですね。人間の体はレム睡眠の状態のときに体を修復したり疲れを取ろうと働きますから、血流量の増加は副交感神経を優位にし、リカバリーを支えるという図式が成り立つ。なお、人間は太陽が出ている昼間は基本的に交感神経が優勢ですが、そのときも副交感神経は働いていますから、活動時にマイナス電子を浴びることにも意義があるんですよ」。
また、電気が流れると微弱な振動が生まれ、そこにはマッサージのような作用もあると徳田氏はいう。これを証明する極めてシンプルな実験が、「半分に割ったみかんの半分をセラメアの上に置いて10分放置すると、置いたほうのみかんはそのヘンに置いたほうに比べて味が甘くなる」実験だ。眉唾? いやいや、正直にいえば我々取材陣も最初は眉唾だったが、試してびっくり。違いは歴然!だった。

「みかんの酸味や香りの成分は揮発性なんですね。だから電気の微振動によってこれが揮発して、甘さだけが残る。甘さが増すわけではありませんが、酸味が抜けるので相対的に甘く感じるというわけです」。

ちなみにセラメア上へコーラを注いだコップを置くと、微振動により大粒の炭酸が湧き出てくるのが視認できる。当然ながら、炭酸の抜けたコーラはマズい(笑)。
“最高に整う”を目指して

「パーフェクトリセットスラックス」は、セラメアを練り込んだパッチを、腰と両ふくらはぎの3箇所に搭載する。
以上の作用により鮮度保持や化粧品の分野で重用されるセラメアだが、セラメアのテクノロジーをウェアに転用したのは、カバロスが初である。糸に練り込む試みはこれまでもあり、カバロスでも当初はその形を考えていたというが、実現には至らなかったのだという。セラミックス粉を練り込むと糸切れが起こりやすくなり、繊維に必要な強度を保てないのだ。その点、件の「パーフェクトリセットスラックス」では、セラメア粉をシール状に加工し、血流の要所である腰と両ふくらはぎ3点に貼るという工夫で機能を付与しながら、強度の問題をクリアしている。

さて、そんなパーフェクトリセットスラックスには、「最高に整うスラックス」というもう1つの呼称がある。「最高に整う」を目指すにあたっては、セラメアの応用のみならず、ありとあらゆる箇所に気を配ったと企画に携わったビギン本田はいう。

「仕事中も、ソファで寛ぐ際にも履いていただけるよう、品のいい見た目とリラックスした履き心地の双方にこだわりました。ウエストはイージー仕様ですが、サイドにのみゴムギャザーを配し、ベルトループも付けました。紐は表に出してもいいし、裏側へしまうこともできるようにしています。センタークリースは折り目をステッチで固定した、いわゆる永久クリース仕様ですね。

ウール見えする生地は、ポリエステルにポリウレタンを4%混紡したもの。ストレッチ性や吸汗速乾性に優れ、シワになりにくいのも特徴です。なるべく荷物を抑えたい出張の相棒にもぜひ、ご活用ください。日常でもここ一番のシーンでも、パーフェクトリセットスラックスが、皆さまのカラダを整える“縁の下の力持ち”になれば幸いです」。
鮮度保持にエイジングケア、そしてリカバリー。
半永久的にマイナス電子を放つその特別なセラミックスは、誕生から20年超のときを経て、今なお活躍の場を広げている。まさに化学のチカラが我々の暮らしの“新しい当たり前”をつくっているのだ。
オフィスからソファまで
これ1本で“最高に整う”!

カバロス ダブルの
パーフェクトリセットスラックス
マイナス電子を半永久的に発生させ、副交感神経の活性や抗酸化といった作用をもつ機能性セラミックス「セラメア」を、腰と両ふくらはぎの計3箇所に配置。カラダの整える力をサポートする、新しい発想のスラックスだ。生地はポリエステル96%、ポリウレタン4%の混紡。ウールライクな風合いにしてストレッチ性に優れ、イージー仕様のウエストと相まって、ドレッシーな見た目と楽ちんな着心地を両立する。「tsukumo」と連携するICタグを搭載。1万7600円。詳しくはこちら>>
写真/田邨隼人 文/秦 大輔