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連載 通ジマン時計

機械式に見えて実はクォーツ!「ブローバ」で“通ジマン”を黙らせる

BULOVA

【時計マニアのあいだではこんな自慢バトルが繰り広げられています】
時計通ってヤツは、スキありゃ所有時計のジマンをネジ込んでくるモノ。こちらもダマって聞き流さず、ソレに負けないユニークピースで迎撃したい。そこで、通も一目置くポイントを備えた注目モデルをご紹介。

スイープ運針自慢也
普通のクォーツに較べて8倍の振動数だから精度も抜群!!

口火トーク

チクタクと動いていない運針(秒針)を見て機械式だと思ったでしょ(笑)でもじつはこの時計、スイープ運針クォーツなんだよね?

念願の本格時計を手に入れたなら、誰かにジマンしたくなるのは人のサガ。特にバーのカウンターなんかは“得物”アピールのバトルフィールドとなりがち。隣に座ったビギナー・サブマリ君が、先日買った高級R社ブランドをチラつかせつつ、ほろ酔い気分でこちらの左腕を偵察、なんてのはよくあるハナシ。そんなイカニモな新兵サンには先制口撃でダマらせるのが得策だ。

「コレ機械式だと思った? 実はこの時計、スイープ運針クォーツ式なんだよね。流れるように動く秒針が珍しいでしょ?」と一発カマしておけば、「へぇー」とばかりに出バナをバシッとクジけるというワケ。

流れるようなスイープ運針は機械式時計の特徴のひとつであり、その滑らかさは機械の振動数と比例する。高振動になるほど脱進機の動きも細かくなり、運針がスムーズになる。また電池式クォーツは、主に消費電力軽減の観点から、チクタクと1秒間に1ステップの運針方式を採用するのが一般的。

しかし今回紹介するブローバの「マリンマスター シリーズC」は、あたかも高振動機械式のごとき超スムーズな運針を見せるクォーツ式。ブローバといえば、1960年に世界初となる音叉式電子時計「アキュトロン」を打ち出したブランドとしても知られている。そんな進化を止めない古豪による、より正確さを意図した新作こそ262kHzの高振動クォーツムーブメントを搭載した本作なのである。

一般的なクォーツ時計は心臓部となる制御装置に、2つ足の振動子を持つが、この新モデルは独自開発の3つ足振動子を採用。「ゆえに通常のクォーツに較べて、8倍もの高振動を実現しているってワケ。つまり運針に関しても1秒間に16刻みという驚きの高速運針。

だから秒針が滑らか至極に見えちゃうというメカニズムなのよ!」と追撃しとけば、さしものビギナー・サブマリ君も「……はい、メカらウロコが落ちました」白旗をソッと出し、通ジマン話から撤退せざるを得ないのである。

飲み屋カウンターで機械式ビギナーに出会ったら!?

飲み屋カウンターで機械式ビギナーに出会ったら

R社のダイバーズを着用し、意気揚々とバーに挑んできた時計ビギナー・サブマリ君。マウントを取れるかと思いきや、思わぬ反撃を喰らい「クオ〜ッ!!」と漏らしたとかナンとか(笑)

スムーズ運針の高精度クォーツ!!

BULOVA

BULOVA[ブローバ]
マリンスターシリーズC

通常の約8倍の高振動を誇る「プレシジョニストクォーツ」ムーブメントを搭載。12角ケースが腕元にシャープなエッジを添える。SSケース、ラバーストラップ、径43mm、クォーツ。20気圧防水。9万1300円(ブローバ相談室)

BULOVA

エッジの効いた12角のベゼルには、セラミック製トップリングをインサート。傷つきにくい上に艶っぽさを感じさせる。黒 × 金カラーが何ともリッチ!

BULOVA

文字盤には、「プレシジョンクォーツ」の頭文字である“P”と、絶え間なく動く様子から名付けたインフィニティエイトのマークと、比類ない高精度を示す「262kHz」を表示している。

コッチは逆に機械式なのにステップ運針

Rolex

Rolex[ロレックス]
ロレックス オイスター パーペチュアル トゥルー ビート

機械式時計でも1秒1秒の進みが分かりやすい表示の「デッドビート(ジャンピング)セコンド」モデルは以前から存在する。しかしそれには一般的な脱進機構に加え、運針制御機構がマストのためムーブメントは複雑になる。なかでもスーパーレアだと評価されるのがロレックスの本作。1950年代にそんなマニアックモデルが存在したことを、ぜひ知っておきたい。

通ジマン用語解説
 
【スイープ運針】
滑らかに途切れず連続した運針をスイープ運針と呼ぶ。「sweep」は“一掃する”の意味があり、ザーッとホウキで掃くようなイメージからこの名が付いた。
 
【クォーツ式】
電圧を掛けると規則的に振動するクォーツ(水晶)の特性を利用した時計のこと。通常の水晶振動子は3万2768Hzで振動する。ちなみに一般的な機械式時計の振動数は3〜5Hzである。
 
【脱進機】
脱進機は機械式時計の速度を一定に保つための機構。針を動かす歯車が、ゼンマイの力で一気に回ってしまうのを防ぎ、一定の速度で進むように調整する。
 
【音叉式電子時計】
クォーツ式以前の1960年に発明された調速方式。コイルに電圧を掛けた際に音叉から発生する共鳴振動を利用し、トランジスタ回路を経て秒針を動かす。振動数は約360Hzを誇った。
 
【白旗】
戦場において交戦対象にはあたらないことを表明する証として、白色の旗を掲揚したことが起源。日常的には“降参”の意味で「ハイハイ分かりました、白旗ですよ!」などと使われる。
 
【ステップ運針】
チクタクと断続的に繰り返す運針をステップ運針と呼び、基本的には1秒ごとに動く。「step」は“階段”や“足取り”の意味があり、一歩一歩、歩くような様からこの名が付いた。

グランドセイコーのスプリングドライブもスイープ運針!

世界にジマンできる「スプリングドライブ」を搭載
スイープ式に運針する時計の代表格は機械式だが、よりマニアックなメカニズムを持つ「スイープモデル」があることも押さえておこう。グランドセイコーの一部に搭載される「スプリングドライブ」は、技術のセイコーが世界に先駆け完成させたハイブリッドなユニークムーブメント。

動力は主ゼンマイから供給する機械式にして、調速をテンプではなくクォーツに担わせるという、まさにイイとこ取りのメカニズム。アンクルによる往復運動を持たないため、秒針は従来の機械式よりも一層スムーズな動きを見せる。世界各地のバーでジマンできること確実だ。

Grand Seiko

Grand Seiko[グランドセイコー]
エレガンスコレクションSBGA407

スプリングドライブモデルの組立工房がある、本邦信州地方の雪面に空の青が反射したかのように「雪白ダイヤル」が特徴。72時間のパワーリザーブと平均月差±15秒という精度を誇るcal.9R65を搭載する。SSケース、レザーストラップ、径40.2mm、スプリングドライブ。10気圧防水。83万6000円(セイコーウオッチお客様相談室)

スイープ運針の動きはコチラ!

 
※表示価格は税込み


[ビギン2025年9月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。

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