連載[令和に響く昭和のハナシ]
【昭和ヲタク・平山 雄の戯言】メッキレバーがエモい!「東芝」の湯沸かし器”
エモさ満点のジャポニズム傑作を知る[令和に響く昭和のハナシ]
昭和を愛し、徹底した昭和暮らしを謳歌する平山 雄による、後世に語り継ぎたい名作語り。今回は絶滅危惧の湯沸かし器について。
昭和ヲタク
平山 雄さん
古物商として働きながら、SNSやブログを通じて昭和をレポート。著書に『昭和ぐらしで令和を生きる』(303BOOKS)など。
今回から連載をさせて頂くことになりました。僕は日頃からタイムスリップ感を味わうべく、昭和40年代に建てられた一戸建てを購入し、家具などのインテリアから食器などの小物類まで、家の中にあるものをすべて当時物で揃えて生活しているのですが、これを機会に、それらのアイテムを一つずつ紹介していきたいと思います。
プラスチックでは味わえないメッキのレバーが唯一無二
今回はその第一回目ということで、中でも特に思い入れのある「東芝」の湯沸かし器(昭和47年製)をピックアップしてみました。この湯沸かし器、じつは使えるようになるまでにちょっとした苦労があったんです。
今では見られない赤枠の筆記体ロゴも
中古品では安全性に問題があるので、がんばってデッドストックの新品を探し出したのですが、ガス会社に設置を依頼したところ、「型が古過ぎて取り扱えない」と、断られてしまったのです。
ですが、湯沸かし器は台所の中でも特に目立つ、いわば“顔”なので、タイムスリップ感を出すためにはなんとしてでも設置したい。
そんなことから止むを得ず、自分でトライしてみることにしたのです。そして、見よう見まねでなんとか設置しました。と、「ボワッ!」という音とともに種火が点き、無事にお湯が出てくれたのです。いやー、爆発しなくて良かった(汗)。
現代の湯沸かし器は、丸い操作ボタンを「ポン」と押すだけでお湯が出ますが、この時代のものはレバーを「ガッチャン!」とひねる必要があるのが大きな特徴。現代の感覚だと、少し使い勝手が悪いかもしれませんが、いかにも“機械を操作している”という感覚が、僕にとっては大きな魅力なのです。
操作がかんたんなほうが一般的に好まれるのかもしれませんが、多少なりとも手間がかかっても、それを動作させる過程が楽しかったりするんですよね。
ガチャっと回してお湯を出すアナログ式にロマンあり
素材についても、この時代のものはお金がかかっている。今時の製品はコスト削減のために何かとプラスチックを多用しますが、このレバーはメッキ加工された金属製のため、見た目的にもカッコイイ。そのほか、ツマミが点火と湯温調節の2つに分かれているのもお気に入りです。僕にとって、これ以上の湯沸かし器は他にありませんね。
一般家庭で見る機会がグンと減った屋内設置型の湯沸かし器。最近は「瞬間湯沸かし器」として取り扱うメーカーもありますが、東芝の代表作『エコキュート』は今年の3月をもって販売を終了したそうです。残念。
※表示価格は税込み
[ビギン2024年9月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。