パロサント第一人者が伝授。インカ帝国時代から愛される“香木”の楽しみ方
インカ帝国時代から愛され続け、今また再燃中!
【フォートメントのパロサントスティック】
ペルー政府公認の輸出業者から薪ぐらいの大きさのパロサントを日本に空輸。畑中さんらが自らの手で幅を1cm、高さを10cmほどに丁寧にカットした後、袋詰めしているから香りが飛ばず濃厚。品質にこだわり抜いたパロサントだ。4本入り。1100円(フォートメント)
令和の今、“分かり手”がメロメロな香りを知ってる?
「パロサント」で身体も精神も癒やさんと。
コロナ禍を機に部屋を快適にしてくれるアロマ関連商品の需要が爆増。とりわけ高感度な“分かり手”たちを虜にしているのが、パロサントというもの。この分野の第一人者である畑中清志さんによれば、その正体は南米原産の香木。ニューヨークでは、10年以上も前にクリエイターたちの間で話題になっていたといいます。
昔も今も人気の理由は、アロマディフューザーともお香とも違う、まんま木の棒という完全無欠なナチュラルさ。ケミカルな香りを嫌う人にササりまくりなんです。しかも、焚いた煙が放つ甘くスモーキーな香りも短時間で消えてくれるから、ケミカル系のアロマみたいにいつまでも香り続けて、料理の香りを損なうなんてこともありません。
産地である南米諸国では、インカ帝国の昔から焚いた煙が悪い気を浄化すると信じられてきたパロサント。リラックスしたい時はもちろん、イライラ、モヤモヤといったネガティブな気分を払拭したい時、発想にひらめきが欲しい時に、サッと焚いて香りを楽しむのがオススメです。え? 胡散臭い? いやいや、スピリチュアル味を抜きにしても、良い香りはそれだけで気分をアゲてくれるもの。まずは試さんと♪
時に人の感情を大きく揺さぶる聖なる香り。遡れば時の権力者を夢中にさせた香木もあるし、ちょっと昔には洒落者をヤミツキにさせたショップのお香もあったりして。じつは結構、侮れないものです。
奈良時代から天下人を魅了してきた「蘭奢待(らんじゃたい)」
東大寺正倉院に保存されている日本でもっとも有名な香木。東南アジアで採取され中国経由で奈良時代の日本に伝来、聖武天皇の手に渡ったといわれる。足利義政、織田信長、明治天皇など歴代の天下人が切望し切り取ったことでも知られている。
90年代からスケーターを魅了してきた「NAG CHAMPA(ナグ チャンパ)」
スケートボード専門店としてスタートした「シュプリーム」だが、当時から来店客の間で話題になっていたのが、店内を満たすイイ香り。じつはコレ、インド原産のお香でその名も「ナグチャンパ」。天然オイル由来の香りが豊潤で皆ウットリ~。
日本におけるパロサントの第一人者が基礎から解説
フォートメント 代表取締役 畑中清志さん
日本でいち早く良質なパロサントの輸入卸を始めた先駆者。本職は商業施設やアパレルブランドの展示会などで、植物を用いたディスプレイを手掛けるボタニカルスタイリスト。
[Q.]ただの木じゃないの?
[A.]エクアドルとペルー原産の希少な「聖なる木」なんですよ
パロサントとは、スペイン語で「聖なる木(棒)」の意味。エクアドルとペルーを2大産地とする乾燥熱帯林に自生する樹木で、正式名はブルセラ・グラベオレンス。リモネンなどの精油成分を豊富に含み、生木は爽やかな香りを、焚いた煙は甘くスモーキーな香りを放つ。インカ帝国時代には、その香りや煙が空間を浄化するとしてシャーマンらが儀式に用いていた。近年、資源の枯渇が懸念され、ワシントン条約のⅡ類に指定。エクアドル、ペルー両政府も立木の伐採を固く禁じ、採取は自然倒木したものに限ると厳しく管理。年々希少性が高まっている。
[Q.]どれくらいの間使える?
[A.]1本あたり30回ほど着火できます(≒30日程度)
香りが弱くなっても、カッターで削れば再び香る!!
パロサントは火を付けても30秒から1分で自然と燃焼が止まる。これを1回とカウントした場合、パロサントスティック1本で、20~30回はスマッジングできる計算。先端が炭化して香りが悪くなってきた時は、カッターなどで炭化部分を削ぎ落とせば、香りは復活する。5~6回焚いたら削ぐ、ぐらいのペースが◎。火を付けない状態であれば、香りは何年ももつ。ただし、空気に触れれば触れるほど香りは飛んでしまうので、パウチなど密封できる容器に保存しておきたい。香りが弱まってきたら、同じくカッターなどで表面を軽く削れば香りは復活する。
[Q.]どうやって楽しめばよい?
[A.]そのまま置いておくもよし“スマッジング”するもよしです
楽しみ方は主に2つ。1つは、器などに積んで木そのものの香りを楽しむこと。柑橘類と同じ精油成分リモネンを含んでいるので、爽やかな香りが広がる。もう1つは、燻した香りを楽しむスマッジング。まずはパロサントの先端にライターなどで火を付け、燃焼させる(黒いススが出るので、換気扇の下などで着火するのがオススメ)。炎を消すと、甘くスモーキーな香りを放つ白い煙が立ち昇るので、手に持って歩き、燻香を部屋の隅々にしっかりと行き渡らせる。そのまま受け皿に置いておけば、30秒から1分で自然と火種は消えるし、煙も出なくなる。
[Q.]オシャレに飾るには?
[A.]置き方と受け皿にこだわるべし(必ず、耐熱性のあるもの!)
インテリアとして映えるのも、パロサントの人気の所以の一つ。ゆえに、パロサントを設置する受け皿にはこだわりたい。まずもって耐熱性は絶対条件で、ないものを使用すると割れたり溶けたりする恐れが……。その上で、フォートメントが展開する溶岩をスライスしたものや美濃焼のもののように、ナチュラルさにこだわった受け皿を選ぶと、テイストがマッチしやすい。置き方にもバリエーションがあり、シンプルに置くだけでも◎だが、縁部分に立てかけたり重ね置きしたりすると、上級者感ムンムン。工夫のしがいがあるのも面白いポイントなのだ。
平たいお皿に置くだけでもサマになる
高さのあるものに立てかけるとニュアンスが
他のパロサントと重ねて置くと玄人感アリ
※表示価格は税込み
[ビギン2024年9月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。