Feb-01-2024

陶芸だって「田舎に泊まろう!?」日本六古窯の丹波焼をたんまり楽しむ『陶泊』が今、面白い!

家に泊まって農業が体験できる「農泊」や、漁村に宿泊して漁を体験する「渚泊」が人気です。「滞在型旅行」と呼ばれる新しい観光スタイルで、豊かな自然に囲まれ、村郷の伝統や生活に触れ人との繋がりを感じる、仕事体験はもちろん、作業や寝食を共にして育まれる地元の方との交流も魅力なんだそう。

そうした取り組みが日本各地で行われる中、2024年春から陶泊(とうはく)——窯元に宿泊し陶工の仕事や暮らしを体験できる試みが開始予定という情報を耳にした我々ビギン取材班は、兵庫県丹波篠山市で行われたモニターツアーに潜入。その気になる中身をレポートします!

つくる・知る・使うの三段活用で丹波焼を堪能

陶泊は丹波焼の工房に泊まり、陶芸の手仕事や里の空気、文化を味わえる1泊2日のツアー。作陶体験(つくる)、若手の陶工がガイドを務める窯元巡りや地域案内(知る)、陶工とのバーベキュー(使う)などを通じて、丹波焼がより深く感じられると言います。

そんな説明を聞き、胸を踊らせ向かったのが今回の舞台となる兵庫県丹波篠山市今田町立杭エリア。

京都・大阪と近接する山間部、南北約4kmの区域に60軒もの窯元が集積し、まち自体が1つの陶芸空間かのような丹波焼の聖地です。

県道292号線沿いに約60近くの窯元が並びます。

この地で陶器の製造が始まったのは850年以上前の平安時代末期と伝えられ、愛知の瀬戸・常滑、滋賀の信楽、岡山の備前、福井の越前に並び日本六古窯(にほんろっこよう)の1つを担っています。

丹波焼の伝統的な登窯。各窯元が自身の登窯を持つ。

丹波焼は新しい技術を積極的に導入し、現在まで多様なスタイルを発展させてきましたが、長年変わらない作陶方法も存在します。山の斜面に作られたトンネルのような「登窯」を用い、最高1300度まで温度を上げ陶工が三日三晩で火をくべ続ける伝統的な焼き方で、燃料となる薪の灰と釉薬が化学反応によって独特の模様を生み出します。これは「灰被り」と呼ばれ、丹波焼の特徴に挙げられます。

陶泊プレツアーに参加してきました!

陶工の工房に宿泊し仕事や食事を共にする「陶泊」。秋晴れが心地よい10月下旬のある日、プレツアーが行われました。

娘も一緒に陶芸を楽しめたら

左から醇也さん、由渚ちゃん、有美さんの大島さんファミリー

モニターに選ばれたのは神奈川県にお住まいの大島さんファミリー。醇也さんは広告代理店を営み、有美さんはフリーランスでブランドのコンサル業をされています。有美さんが陶芸に興味があり、娘の由渚ちゃん(4)に良い経験をさせられたらと考えて参加されました。ちなみに、陶泊は3名以内であれば、友達同士・カップルはもちろん、おひとり様でも楽しめます。
1泊2日の工程はこんな感じ↓

ツアーには陶工が「さとびとガイド」として同行し、丹波焼の説明や、普段は目にできない里のあれこれをご案内してくれます。

さとびとガイドをご紹介!

丹波焼の楽しみ方を知る1日目

JR福知山線「相野駅」からバスに10分ほど揺られると、丘の上に立つ「陶の郷(すえのさと)」が見えてきます。ここは、古い丹波焼や伝統工芸士のギャラリー、陶器ショップ、登窯、レストハウスなどがある丹波焼の拠点施設で、陶泊のスタート地点になります。
一同はガイドの先導で「窯元横丁」へ。こちらは丹波焼の協同組合に所属する窯元約50軒の共同販売所。ここで気になる作品を見つけ、窯元へ散策に出かけるのが丹波焼を楽しむセオリーだそう。大島さんファミリーも丹波焼の多様な表現に興味津々。一目惚れしたカップやお皿を購入されました。

後ろ髪を引かれる思いで窯元横丁を出て、向かったのは丹波焼の土を生産する坏土工場(はいどこうじょう)です。

丹波焼の原料となる坏土工場の土置き場。

ここでは四ッ辻粘土(兵庫県三田市四ッ辻の山土)と、弁天黒土(JR篠山口駅周辺の田土)をブレンドし、ブロック状にして丹波焼の各工房へ出荷しています。元々は窯元が原土を採掘し、ふるいにかけ陶土を作っていましたが、現在はこの施設が一手に引き受けています。ろくろを回して器を作ったり、窯に入れて焼くこと以上に、土作りは作陶の重要な工程で、坏土工場は産地の心臓部といえそうです。巨大な機械で土が出来上がるのを見学した後は、山土を袋に入れてお持ち帰り。これが何になるかは明日のお楽しみです。

持ち帰る山土を集めます。

多様なスタイルを持つ丹波焼が同じ土からできているということを知って驚く一同。粘土のような土がどのようにして美しい丹波焼になるのか、興味が湧いてきたところで作陶にチャレンジです。陶幸窯(とうこうがま)で、陶工の市野翔太さんから「手びねり」という手法を教えてもらい、醇也さんはカップ、有美さんはお皿、由渚ちゃんはアクセサリー作りに挑戦。「陶器は焼き上げると2割ほど縮むので、思ってるより大きめサイズにしてください」と説明を受け、目の前の土を思い思いの形にしていく3人。

カップの厚みを均一にするに苦労した醇也さんに対し、作陶経験がある有美さんのお皿作りは順調に進み「しのぎ」という丹波焼の伝統技法で模様を入れました。由渚ちゃんはクッキーの抜き型を使って、もみの木のモチーフのオーナメントをクリエイト。作品は約2ヶ月後に焼き上がり、家に届きます。

由渚ちゃん:ペタペタするのおもしろい!色はピンクにする

醇也さん:4歳の子にも優しく対応していただいて、安心して楽しめました。

 

 

有美さん:子供と一緒に集中できて1時間があっという間でした。

陶幸窯を出た一行は窯巡りへ。さとびとガイドを務める市野秀作さんの「省三窯」と、市野貴信さんの「信水窯」に伺いました。実は、丹波焼には産地問屋が存在しません。陶工は工房のギャラリーで作品を展示し、自ら販売も行います。このスタイルを長年続けてきたことで、丹波の窯元ではお客さんをもてなす振る舞いが自然に身についていて、陶泊に繋がったという背景もあるようです。

また、陶工から度々「里を歩いて色んな窯元を巡ってほしい」と聞いたことにも丹波の特徴を感じました。同じ産地でライバル関係なのですが、それよりも地域愛——丹波をみんなで盛り上げていこうという意識が強く、窯元さんの仲が良い。この後、宿泊する昇陽窯で行われたバーベキューにはガイドを務めた陶工、ホストを務める昇陽窯の大上裕樹さんのお子さんたちもいて、遠い親戚の集まりに来たような、笑い声の絶えない時間が流れているのがとても印象的でした。

宿のホストを務める昇陽窯の大上裕樹さんは、どういう経緯でこの場所をオープンされたんでしょうか?

「最初は自分たちがやりたいことを詰め込もう思って。お風呂があって、スタッフが寝れるスペースも用意して、盛りだくさんで作ったタイミングで、ちょうど陶泊の話が持ち上がったんです」と、大上さん。

昇陽窯では普段から美大や工芸学校からインターンシップを受け入れており、学生さん向けに作ったゲストハウスが陶泊の宿に使われています。ちなみに宿泊施設はこれから増えていく予定だそう。

昇陽窯 大上裕樹さん 昇陽窯(しょうようがま)の三代目。金沢美術工芸大学でデザインや工芸を学んだ後、瀬戸の鈴木五郎氏の内弟子として修業を積む。妻の彩子さんと2人バックパッカーで世界一周した経験が陶泊にも影響を与えているそう。今回の陶泊では大上さんの宿に宿泊。

 

地域をめぐって考える2日目

アメリカンレストラン「KONdA to(コナト)」のモーニング。ベーコン、バター、各種ソースと自家製で、小麦は国産100%有機栽培で栽培されたものを使用。

翌朝。鳥のさえずりで目を覚まし戸外に出ると、目の前に広がる雄大な自然に得も言われぬ美しさを感じ、丹波焼の原点に触れた気がしました。8時になるとアメリカンレストラン「KONdA to(コナト)」のモーニングセットが届き、昇陽窯の2階で里山を見ながら朝食タイム。自家製ベーコンのパンケーキを載せるお皿は、今回のために作られた昇陽窯の特製プレートです。

美味しい朝ごはんで元気をチャージしたら、仕事体験がスタート。前日の疲れ具合や、お子さんのいる場合は可能な作業を考え最適なものが提案されます。醇也さんは工房&ギャラリーの清掃、有美さんと由渚ちゃんは外に出て登窯の草むしりをすることになりました。掃除を終え、工房のワークテーブルに集まると、昨日、工場で貰った山土が。これをハンマーで細かく砕き、ふるいをかけ、水と混ぜて陶土にしたらオブジェ作りの始まりです。感性の赴くまま、粘土遊びの要領で手を動かす体験は、器作りとは違う楽しみ。「お子さんの手形を残しておくと良い思い出になりますよ」と裕樹さん。

続いては、昇陽窯の定番アイテム、黒枝豆をモチーフにした箸置き作りにトライ。豆の部分に撥水剤を付けると、釉薬が入らずリアルな質感になるということで、筆先に集中し、薬液を塗っていきます。

 

醇也さん:筆を持つ手に力が入りますね!

仕事を終えた一同は昇陽窯の登窯を見学。醇也さんと由渚ちゃんは窯の中に入り内側から観察します。記念写真をパシャリ。

有美さん:冒険ですね。すごい異世界!こんなに広いなんてびっくり。

由渚ちゃん:広くて楽しい!ひんやりしてた~

登窯の中から由渚ちゃんがやっほ~!

「登窯は焼き味がガスや電気窯のように計算できないんです」と話すのは大上裕樹さんの妻、彩子さん。「正解がわからないから、面白くて続くんだと思います。窯いっぱいに陶器を入れて、上手く焼き上がったとしても、陶工にとってこれだ!と言えるものは少ししかない。それで、次はこうしようと経験を重ねていくんです。登窯で火を焚いてる時は、炎の中で器が真っ赤に輝き本当にキレイで、それを見ているとこれが焼き物だなぁと感じます」

丹波焼「最古の登窯」は明治28年に造られ47メートルの長さがあります。

昇陽窯をチェックアウトし、大島さんファミリーは昼食を取るためカフェへ。取材チームは、2日目のさとびとガイド雅峰窯・市野健太さんの案内で、丹波焼「最古の登窯」に向かいました。明治28年に造られた長さ47メートルの登窯で、今も年に1回お祭りの際に火が入り、地域の陶工が集まって陶器を焼いています。「窯元にそれぞれに焼き方があるので、みんな言い合って焼いてますね」と市野健太さん。

締めくくりは、さとびとガイド清水辰弥さんの炎丹久窯でプレツアーの感想を聞きました。

春からのスタートの向けて、より良いものにしていくためにも、陶泊に参加した率直な感想、ご意見を聞かせてください。

醇也さん「工場に行って土作りの工程を見せてもらったり、丹波焼が作られるプロセスをイメージできてよかったです。あれは何ですかと自然に質問が出てきて、それに対してガイドさんが答えてくれるのが楽しかった。陶器好きの方なら更に深い疑問がでてくるんだろうと思います。家族視点でいうと、4歳の娘がいて、テンションの上がり下がりを、陶工さんが見てくださって、安心できる環境で大満足しました」

有美さん「シンプルにめちゃくちゃ楽しかったです。このエリアのファンになったし、もう1つ実家が増えたような感覚で、本当に来年また来れたらなと思います。何気ない瞬間に陶工さんの横の繋がりが見えたり、丹波焼を受け継いでいる人たちが間近に感じられ驚きと感動がありました」

醇也さん「窯元さんが集まって良い相乗効果を生んでいる、お互いが認めあって、応援する、そんな関係が根本にあるのが丹波の魅力なのかなと」

有美さん「あと陶芸はすごく良い体験でした。子供がここまで夢中になって楽しんでくれるとは思ってなかったので、嬉しかったし新しい発見がありました。ランチの後に散歩をして『山があるからトトロを探す!』とか、そういう経験も貴重。子供がいる家族からすると、とてもありがたかったです」

様々な産地を訪れて取材をしてきた我々が今回改めて感じたのは、良いものを作っている場所には、良い環境があり、良い人がいるということ。丹波焼の「陶泊」は、行くだけで満足しない、第二の故郷ができたような、地域をまるごと好きになる温かさと魅力に満ちたコミュニティーがありました。体験を通して長く付き合っていき、その場所に再度訪れていく。刹那的に終わらない、心と記憶に残る、「陶泊」を次の旅行の選択肢に選んでみては。

2月1日からは一般応募も開始。
陶芸に興味がある方も、自然の中でゆったりしたい方も、丹波という土地をもっと知りたい方も「陶泊」を通してもうひとつの故郷に訪れてみませんか。

「陶泊」の一般応募が開始!

 

自然の中で丹波焼の陶工と過ごし、ものづくりの根源を知る旅に出てみませんか?

 

泊数:1泊2日(夕朝食付き)
受付数:月に1組(最大3名)
料金:プランによって異なりますので、公式WEBをご確認ください
集合場所:丹波伝統工芸公園「陶の郷」(兵庫県丹波篠山市今田町上立杭3)
宿泊先:昇陽窯(兵庫県丹波篠山市今田町下立杭8)
アクセス:車での来場がオススメ(地域内を巡ることや、温泉への移動も可能になるため)
車:舞鶴若狭自動車道、三田西I.Cより車で約10分
電車:JR福知山線「相野駅」にて下車、駅前より「清水」「兵庫陶芸美術館」行き
の神姫バスに乗車10分「陶の郷前」で降車。
主催・運営:丹波立杭陶磁器協同組合
トランクデザイン株式会社
ミテモ株式会社
Satoyakuba
一般社団法人ウイズささやま
合同会社gyoninben

\お申し込みはこちらから!/
https://tamba-tohaku.com/tour/
※ 応募いただいた方の中から、抽選で参加者を決定いたします。


※掲載内容は発行時点の情報です。
写真/迫田真実 文/森田哲徳

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