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時代のニーズや変化に応えた優れモノが日々誕生しています。心踊る進化を遂げたアイテムはどのようにして生み出されたのか? 「ビギニン」は、そんな前代未聞の優れモノを”Beginした人”を訪ね、深層に迫る連載企画です。

突然ですが、座っている時と立っている時、どちらが腰への負担が大きいかご存じでしょうか。答えは前者で、その差は約1.4倍。しかも、姿勢が悪いと、腰には約2倍の負担がかかってしまうんだそう。インナーマッスルを鍛えているわけでもなければ、日頃から気を付けていてもついつい猫背になっちゃう筆者にとっては、非常に恐ろしい事実なんですが……。腰に対するそこはかとない不安な気持ち、共感してくれる人も少なくないはずです。

とある調査によると、日本人の座位時間は世界20か国の中でサウジアラビアと並んで一位。椅子に腰掛けている時間は1日だいたい7時間で、これは理想的な睡眠時間に匹敵します。体の疲れを取るために寝具にこだわる人も多くいますが、このデータを知ってしまうと椅子回りにも気を配りたくなりませんか? 今回のビギニンでは、睡眠科学を応用した骨盤サポートクッション「Keeps(キープス)」を開発した寝具メーカー・西川の池田さんを紹介します。

今回のビギニン


西川株式会社 企画開発担当 池田 奨さん

静岡県御殿場市出身。2011年に入社。3年間営業経験を積んだのち、ウレタン素材を使ったマットレス・まくらの企画開発部に移動。大谷翔平選手が愛用する[エアーSX]マットレスの開発に携わった経験も。「趣味はランニングです。休日はフルマラソンに参加することもあります!」

Idea:
西川の寝具を使っているはずなのに、姿勢が悪い……?

西川本社のショールーム

西川は1566年に創業した、日本の寝具メーカー。商品は日本各地の直営店や百貨店、寝具専門店などで取り扱いがあり、世界で活躍するスポーツ選手からもアツい信頼を寄せられています。最近では、ロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手が使っているコンディショニング・マットレス[エアーSX]が話題になりました。

池田さんは、マットレスやまくらの企画開発を進める部署に所属。10年以上“睡眠”と“姿勢”に向き合い、[エアーSX]マットレスの開発にも携わった経歴の持ち主です。キープスのアイデアを思いついたきっかけは、同じ部署に所属するメンバーの働く姿を改めて観察したときでした。

「新商品のアイデアを考える部署ですし、みんな寝具はいいものを使っているはず。でも、恥ずかしながら上司から部下まで腰痛持ちが多く。気になって、ふと、椅子に座って働いている姿を見ると姿勢が軒並み悪い。そのうえ終業時間に近づけば近づくほど、どんどん姿勢がひどくなっていく(笑)。体の歪みが腰の不調を引き起こすのは、これまでの経験からすぐに察しがつきましたね。弊社社員に限らず、自然とよい姿勢になるクッションがあれば、喜ぶ人はきっと多いんじゃないかと思ったんです」

とはいえ、長い歴史の中でも西川がクッションを発売するのは初めて。寝具メーカーならではのクッションを開発するにはどうすればいいのか。そう考え込んでいた時に辿り着いたのが、まくらの快適性を追求するために導き出された理論でした。

Trigger:
「まくらの三点支持理論」を応用

まくらの三点支持理論とは、いわば黄金比。圧力のかかり方を「肩1.2:首1.0:後頭部2.5」になるように設計することで、頭にかかる圧力を分散し理想的な寝姿勢を実現させるのです。肩こりや首痛の相談を受けてきた整形外科医の奥山医師と西川の共同研究により算出され、この理論を元に作った「医師がすすめる健康枕」はグッドデザイン賞を受賞。根強い人気を誇る、西川のロングセラー商品となっています。

池田さんの粘土模型から開発はスタート

お尻にかかる圧力を、バランス良く分散させる。池田さんは西川の研究機関である日本睡眠科学研究所に相談を持ちかけ、まくらの三点支持理論のクッション版、トライアングルサポートシステム®︎を開発します。

「初めは粘土でサンプルを作りました。私が作ったので、子どもの工作みたいな出来栄えですが(照)。その後、当社のデザイナーに協力してもらい、発泡スチロールで形を整えていきました。完成品はミニマムなデザインですが、初めは背もたれ付きを想定していたんですよ」と池田さん。

トライアングルサポートシステム®︎は、上半身にかかる圧力を坐骨1.0:仙骨1.7:大腿部1.0のバランスで支える構造のこと。そのためには独自の設計が必要で、池田さんは頭の中の情報を藝大出身の社内デザイナーに、上の画像のようにイラスト化してもらい、さらなる開発を進めました。

「ふだん作っているまくらやマットレスはスクエア型なので、デザインについてはさほど考えなくてもいいんです。しかし、キープスはそうとはいかず……。細かいデータは研究所が出してくれたんですが、その数字に近づけるためにはどんな形のクッションにすればいいのか、イメージを具現化して立体にするのがとても難しかったんですよ」

予算も潤沢にあったわけではなく、むやみやたらに金型を作ることもできない。デザイナーにはひとまず工作用の発泡スチロールでサンプルを作ってもらい、座り心地を試しました。

「ちょうどコロナ禍だったので、デザイナーには自宅で作業をしてもらっていたんですが、そのせいで部屋中が発泡スチロールだらけになったらしくって。片付けがどれだけ大変だったかは、私の家じゃないのでわかりませんが(笑)」

座椅子のようなシルエットから今の形状へ

データをイラスト化して、それを立体にしていく。CADデータにして金型の制作に進むまで、サンプル作りと検証を何度も繰り返したキープスの開発プロジェクト。坐骨と仙骨、そして大腿部の3箇所を支えるために、一般的なクッションにはないユニークなアイデアが詰め込まれています。

まず、控えめな背もたれには、仙骨を支えるための突起をプラス。坐骨が収まるように、座面には2つの大きな穴が開けられています。池田さんは、骨の模型を使いながら構造を説明してくれました。

「骨盤を立てるためには、腰部分をやさしく押し出すことと坐骨をピタって固定させることが大切なんです。でも、それをどうしたら実現できるのかわからない。市販のクッションに穴を開けて座ってみたり、さまざま試してみました。最終的に出来上がったサンプルだけでも、5個以上はありました」

「太ももの裏が触れる部分はアーチ状にしています。圧力がかかるとむくみの原因になりますし、張り付く感じのしない、包み込むようなフィット感でストレスフリーの座り心地です」と、続けてこだわりを語ってくれた池田さん。素材選びも妥協せず、マットレスやまくらに使われているウレタンフォームを採用し、どんな体型、姿勢の人でも対応できるクッションに仕上げました。

さて、後半では、ついに出来上がったサンプルを用いた実証実験について紹介。クッションに説得力を持たせるために、世界で初めて、座ったままでMRI検査を実施しました!

後編:世界初! 座ったままでMRI検査を実施に続く

Keeps (キープス)
骨のポジションを安定させることで理想的な姿勢に導くヘルスケアクッション。独自開発のトライアングルサポートシステム®︎を採用し、坐骨にかかる圧力を通常よりも約55%軽減する。素材はクッション性に優れたウレタンフォームで、幅広い種類の椅子に対応。座面に密着する部分が滑り止め生地になったカバー付き。取り外し可能なため、いつでも清潔な状態を保つことができる。イエロー、グレー、ブラックの3色展開。W44×H18×D41㎝。1万1000円(税込)。

(問)西川/0120-36-8161 (受付時間:平日10:00~17:00)


写真/丸益功紀 文/妹尾龍都

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