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一見ベーシックなジーンズのようでどこにもない・・・。そんな、誰でも穿ける佇まいでありながらユニークなアプローチが随所に漂う『CRT』。その源泉を探るべくトロピカル松村さん(以下トロ松さん)のお宅へ潜入取材! ディレクターのお宅ってヘリンボーンの床にお洒落なインテリア~な印象かと思いますが、その期待裏切ります(笑)。
トロ松さんは今から20年前、若干14歳!にして蒐集を始めたという生粋の『昭和アメリカオタク』。きっかけは、当時雑誌で見た70年代リバイバルサーフファッションだったとか。「昭和のなんでもが好きってワケじゃないんです。洒落たものが大前提。年代は70年代から80年代前半に絞っています。ずっと“日本人が独自解釈したアメリカンカルチャー”に興味がありますね」(トロ松さん)。
“中野ブロードウェイ系”の昭和感度とは一味違う。トロ松さんのお宅に潜む“和メリカン”モノから“CRTのジーンズってなんかイイ”の理由を紐解きます。



本棚にはアメリカ文化を追う古い日本のファッション誌からスポーツ誌、旅にまつわる書籍からコミックまで! 周辺にも当時モノがわんさか収められています。
「イラストレーターの小林康彦さんが手掛けていたアウトドアウェアブランド『スポーツシャック』のウェアは、どれもヘビーデューティな趣でほとんどが日本製なんです。軽井沢や吉祥寺に店舗があった『ザ ボックス』はクマとスポーツをアイコンにしていて、あの有名なベアロゴが世に出る10年くらい前からココはやってます(笑)。メガネは当時のサーファーが愛用していた『レイバンのバガボンド』か『アイヴァンのアイビーリーガーズ』の2択! そういえば、70年代のサーファーの足元ってVANSだと巷では言われてますよね? でも実際その当時の人に会って話を聞くと、日本でデッキシューズといえばトップサイダーが主流だったと。やっぱり現場の声からカルチャーを探っていかないと、見誤ります」。
ここじゃ書ききれないお宝だらけなので、じっくり写真を拡大して見てみて(笑)。



ディスコ通いと昭和のレコード掘りで磨かれ過ぎた!?音楽観を手に入れたトロ松さんは、二子新地のリバーサイドベースにて『トロピカルレコード』を運営する音楽オタクの一面も!
ちなみに、愛用しているレコードプレーヤーは1972年から続く名機『テクニクスのSL1200』、ヘッドホンは『ゼンハイザーのHD414』。「このヘッドホンは15年前くらいから使ってます。みぽりんが『波の数だけ抱きしめて』で愛用していたあれ。最近シティポップブームとかで付け始めてる人もいますけど(笑)」。
で、なんと今熱中しているジャンルは合唱!?という超変化球! 「サイクル野郎っていう漫画にハマったのがきっかけで。主人公が自転車旅をするんですが、その道中でユースホステルに泊まるんです。ユースホステルって響きがカワイイのもあって掘り下げ始めて、今では少年少女合唱団による全国ユースホステル協会のレコードに夢中です」。青山学院大学のユースホステル部のTシャツからユースホステルハンドブックまでコレクションされています。
取材中油断していると・・・突如“和製マイルス・デイビス”へと変貌。「ド・レ・ミ・ファ・ソまで吹けるようになりました(笑)」。



トロ松さんといえばヴィンテージサーフボードのコレクター・・・というのは少し前の話。もちろん、今でも海に通いクラシックスタイルで波を乗りこなしているのですが、最近はスキーにお・ネ・ツ♡な模様。
「高一のとき、デニムのホットパンツにネルシャツでデビューしたサーフィン。それ以降もクラシックなサーフスタイルで海に入っていたら珍しい目で見られていたんですが、最近サーフィンもレトロカルチャーブームでなんだかなって。実際、もうやり切ったしね!(笑)。そこで、同じノリでスキーを始めてみようと思ったんです。向かって一番右のスキー板は『ザ・スキー』のもの。スキー界ではトップ・オブ・トップのブランドで、サーフィン界で例えるなら、ジェリーロペスのライトニングボルトですかね。アメリカのブランドなんですが、当時ヨーロッパがスキーのメインだったところに抽象的なデザインで衝撃を与えたんです。本森隆史さんが描いたレコードの表紙でも履いている真ん中の『オーリン・マークシリーズ』の板は、現行のビンディングをセットしてオルタナティブな思考で楽しんでいます。ちなみに『007』のジェームズ・ボンドの愛用品でもあります」。
スキー以外にもサイクリングやノルディックウォーキングなど、アクティブライフを嗜むトロ松さん。日本製のキッズライクなザックや日本初のフリスビーチーム『代々木フリスビーファミリー』のジャージなど、そのほかにも知られざる名品(迷品!?)の玉手箱なのでした。




ブラウン管(cathode-ray tube)を意味する『CRT』。「何気ない日常を色鮮やかにしてくれるものってなんだろう?と考えたとき、そのほとんどが“アナログ”でいるときだと気づきました。海や山、川でスポーツやレジャーを楽しむ時間、公園や河川敷でくつろぐひとときや、ときには街で過ごすアーベインな夜だったりするかもしれません」。『CRT』には、これまでの時代を支えてきたジーンズ&ウエアを発掘し、身近な感動を共にするパートナーになりたいという想いが込められています。

「ブランドタグは大体ポリエステル製なのですが、雰囲気を重視して綿×レーヨンにしました」と語るのは、日本の文化を世界に発信するデニムブランド『KURO』のデザイナーにして『CRT』のデザイナーも務める八橋さん。「アメリカのカルチャーをそのまんまマネるのではなく、自国の様式に落とし込むのが“日本の文化”だと思っています」というトロ松さんの想いと合致。出会ってすぐの2022年初頭に『CRT』は始動しました。

いつの間にか自分の家かのようにトロ松さん宅を訪問するようになっ八橋さん(笑)。真っ先に目を奪われたのは“ディナージーンズ”でした。「ディナージーンズとは、1978年頃~1981年頃にブームとなったデザイナーズジーンズの愛称。当時日本のサーファーがこぞって穿いていて、そのままディスコにも行けるトラウザーズのようなキレイなシルエットと腰回りの仕様が特徴。フランス発祥のサスーンをはじめ、マッキーンやボール、カルバンクラインなんかも作ってましたね」(トロ松さん)。17歳で初めて手に入れたサスーンを穿いて、リアル世代が集まる真のディスコへ繰り出していたのは当時トロ松さんとサスケさんという相棒くらいだったとか。

「ディナージーンズはカッティングやシルエットが秀逸で『CRT』のベースにしたいなと思いました。また、ディナージーンズを掘り下げてアーカイブしている人なんて出会ったことがなかったですし、デザイナーとして衝撃を受けましたね」(八橋さん)。

あーだこーだ2人で幾多の夜を語り明かして辿り着いたのがこちら。ラインナップは2型×2色。ストレート・フレアともにジェンダーレスに穿ける美シルエットとなるよう、八橋さんはオリジナルに対してミリ単位でのパターン修正を施しています。「フレアはやりすぎないようストレートに近いシルエットを心掛けました」(八橋さん)。生地はもちろん岡山・児島製で、通常よりほんのりライトな12.5ozってのもイイじゃない。

全体のシルエットに加えてディテールにも注力! まずはディナージーンズの生命線ともいえる腰回りとヒップ。ストレートタイプはヨークが入り、尻ポケ内側のステッチをデニムと同系色にすることでほんのり品を添えています。小ぶりのポケットサイズもso cute♡

一方フレアタイプはヨークを入れずストレートタイプより広めの腰テープが特徴。尻ポケ内側のステッチ色はストレートタイプと同様です。

「当時のディナージーンズには“Jeans&Sports”という文言が添えられていました。ここでいうSportsはカジュアルの意味。でも、ボクらは実際のアクティブシーンで穿いてもらいたいと思って、フロントトップをスナップボタンに変更しています」(トロ松さん)。
そのほか、可動域を広げられるように2枚の生地を繋ぎ合わせた腰テープやトラウザーズ調のスラッシュポケット。フロントジッパー脇のステッチは通常2本のところを1本にするなど、スポーティかつ繊細な仕様へとアレンジされているんです!

そして、トロ松さんが一番こだわったところ・・・それがツインウォッシュ加工! 「“空の青さと海の青さを足したら、ジーンズになった”っていうキャッチとともに放映されたとあるジーンズのCMが大好きで。70年代後半のデッドストックを手に入れたんですけど、一回洗っただけでボロボロになっちゃった(苦笑)。だから、どうしても『CRT』で再現したかったんです」(トロ松さん)。
そこで八橋さんは早速リサーチを開始。そしてなんと当時の加工を担当していた人物に辿り着いたのです。薬品の配合分量や加工方法など門外不出の秘伝のタレが染み込んだ『CRT』のツインウォッシュ。2度づけ禁止なんてムリムリ~。毎日ガンガン穿いちゃってください。

 

 

この企画はサーフィンをしながらの雑談から生まれました。まわりにこれほど好きなモノゴトを添加物なしで探求し続けている人はいない!と思ったのがきっかけです。オタク訪問連載は、そんな日本を代表するオタク・トロピカル松村さんが同じニオイがする人を嗅ぎ分け、次回から本格スタート! 是非、お付き合いくださいませ。

問い合わせ先/CRTショッピングサイト
写真/上野 敦(プルミエジュアン) 文・編集/増井友則(Begin)

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