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ここ数年、ファッション業界のキーワードになっている“サスティナブル”! 持続可能な社会を目指して、メゾンブランドから個人ブランドまで、SDGsへの意識が急速に高まっています。長く使えるようにするためのリペアサービスや環境配慮型素材の採用など、その取り組みの内容は実に多種多様……。本連載では「SDSEEDs(エスディーシーズ)」と称して、名門ブランドのサスティナブルの種を紹介していきます!

今回は、世界が熱狂した「FIFAワールドカップ 2022」に関わるお話。例年にも増して、SAMURAI BLUEの勇姿が心に残る大会でした。特に、スペイン戦でみせた三笘選手によるゴールラインきわきわのセンタリングは、今後、日本サッカー史で語り継がれる名プレーだったのではないでしょうか。

そんな歴史的な名場面を彩ったユニフォームには、サスティナブルな取り組みが行われていました。デザイン性の高さでも話題を集めましたが、生地にも見逃せない秘密が隠されています! 1999年からサッカー日本代表ユニフォーム、1970年からW杯公式試合球を作り続けてきた「アディダス」の新しいSDGsの挑戦をお届けします。

教えてくれたのは……

アディダス ジャパン マーケティング事業本部
マネージャー 高木 将さん

2015年からフットボールカテゴリーの商品企画を担当。今大会で日本選手が着用したユニフォームの企画開発を手掛ける。保育園のころからグラウンドでボールを追いかけ回っていた大のサッカー好き。「現地のカタールで日本選手を応援してきました! ドイツ戦では応援のしすぎで声が枯れ果てました(照)」

思いを乗せて、新しい歴史を創るユニフォーム
クーリング効果のあるアップサイクル生地を採用


「アディダス ジャパン」は、1999年よりサッカー日本代表ユニフォームを提供してきました。これまでに発表されたモデルは、FIFAワールドカップ本大会で着用された5モデルを含め12種類あります。

今大会のユニフォームが特別だったのは、「アディダス」の各国サッカー代表チームで初めて、生地に海岸などで回収したプラスチック廃棄物をアップサイクルして生まれたパーレイ・オーシャン・プラスチックを採用していること。

ユニフォーム全体で、40%以上のリサイクル素材が使用されています。持続可能な社会を目指して企画された、アディダスとサッカーにとって未来のための一枚です。

魚より、プラスチックゴミが多くなる未来を変える

パーレイ・オーシャン・プラスチックは、2015年に設立された海洋環境保護団体「パーレイ・フォー・ジ・オーシャンズ」と「アディダス」が共同開発した素材です。

両社の取り組みは、今からおよそ8年前にスタートしました。一足のシューズを皮切りに、パーレイ・オーシャン・プラスチックを使用した製品は、今や一年で1800万個以上も製造されるほどにプロジェクトが育っています。また、アディダスは、2024年までに、製品に使用するバージンポリエステル(未加工・未使用のポリエステル)をゼロにして、可能な限りすべてリサイクルされた100%素材に切り替えるのが目標です。

2050年までには、魚よりも海中プラスチックごみの方が多くなるという研究結果も出ているほど深刻な環境問題に、「アディダス」は独自のサスティナブル技術を武器に挑戦中です。

環境にやさしいだけじゃないんです


“エコ素材”と聞くと、そのパフォーマンス力をどうしても訝ってしまいますが、そこはサッカー日本代表選手を長年サポートしてきた「アディダス」のプロダクト。ユニフォームとしての機能性はしっかり担保されています。

ユニフォームには、クーリング効果を発揮するテクノロジー「ヒートレディ」が搭載。通気性、速乾性、冷却性が、パフォーマンスの前後、および最中に体温が上昇する選手の状態を快適に導きます。

「おそらく、観客がユニフォームを着て応援する文化が根付いているのは、ほかのスポーツと比べても、サッカーが一番だと思います。だからこそ開発する意義(=着る人数が多い)が大きいし、モノづくりも妥協できません(高木さん)」

“山折り、谷折り”で軌跡と想いを表現

サッカー日本代表のユニフォームは、素材開発やシルエットの調整など、テクニカルな部分は本国ドイツで行われています。ですが、コンセプトの提案およびデザインの最終チェックは日本の担当。そのリーダーを務めたのが高木さんで、ドイツ本国と連携をとりながら細かい修正を繰り返し、ORIGAMIモチーフのグラフィックを完成させました。

アイデアの着想は、2002年に開催された日韓ワールドカップの表彰式での光景。ブラジル代表が優勝を掴み取り、その際、歓喜を表現した折り鶴が270万羽ほどグランドに舞いました。デザインには「今度は、日本が歓喜の中心にいてほしい」という、高木さんの願いが込められています。

さらに、山あり谷ありあって進化してきた日本代表の軌跡と、それを応援してきたサポーターの積み重ねてきた歴史を、折り紙の山折り谷折りで表現。これ以外にも背中部分に日の丸が配置されていたり、ネックの内側に赤いパネルが施されていたり。デザインの細かいところまでストーリーが隠され、ていねいに設計されています。

もうひとつのユニフォーム

サッカー日本代表 2022 アウェイ オーセンティック ユニフォーム/1万7600 円(税込)

サッカーのユニフォームは相手国と色被りを防ぐため、2種類のパターンが準備されます。今大会では本試合でも練習試合でも、日本選手はブルーのタイプしか着用していませんが、もちろんアウェイ用も準備されていました。

これまでにないブラック&ホワイトを基調としたカラーリングで、袖部分の折り鶴をイメージしたグラフィックがアクセントになったデザイン。「アナグリフ」と呼ばれる特殊な表現手法を採用しており、折り紙が幾重にも重なって見えるような立体的な印象に仕上げられています。

とにかく、フットボールの商品が作りたかった


「社内のサッカー部に所属しており、今でも休日にプレーを楽しむ」という高木さん。ワールドカップの大舞台で活躍する日本選手のユニフォームをデザインすることを目標に「アディダス ジャパン」に入社されたんだそう。「プレッシャーよりも、やれる!という喜びの方が大きかった」と達成感に満ちた表情で、ユニフォームを見つめます。

「カタールの会場でユニフォームを着た選手を見たとき、『本当に着てるわ〜』とどこか信じられない気持ちでした。会場の周りでサポーターが着ている姿を見たときもうれしかった。一度デザインを担当するとバーンアウトするという人もいるかもしれませんが、自分の場合は違っていて(笑)。まだ魂は燃えまくっているので、もしチャンスがあるなら、次の大会のユニフォームのデザインも考えたいです!」

と、ここまで世界中を驚かした日本代表のユニフォームにてついてお話を伺いましたが、なんと、ワールドカップ公式球にも隠されたサスティナブルがあるんだとか!

無重力空間でテストも!?
新形状を採用したエコフレンドリーな14代目


「アディダス」は公式試合球の作成も担当しています。14代目となる「アル・リフラ」には、ワールドカップ史上初めて再生可能な水性インクや接着剤を使っています。加えて、大小2種類の異形状パネルを20枚使用した新形状「スピードシェル」を採用し、素材の裁断の際にできる端材を極力少量に。ボールの製造過程における廃棄物を削減しました。空気抵抗も少なく、過去モデルの中でも飛行速度はFIFAワールドカップ™史上屈指の飛行速度をを誇ります。

懐かしいサッカーボールがずらり!


サッカーボールと聞くと、切頂二十面体で且つ白黒のカラーを頭に思い浮かべます。実はそのデザインを世界で初めてサッカーボールに採用したのが「アディダス」。ワールドカップの公式試合球は、1970年に開催されたメキシコ大会から今回のカタール大会まで、半世紀に渡り制作を担当しています。

「アディダス」は2019年にISS米国国立研究所とのパートナーシップ締結を発表しており、開発中のサッカーボールの飛行特性を理解するために、無重力空間でも製品実験を行います。

ワールドカップの会場が高地にある場合、ボールに気圧の影響が出てしまうことも想定されます。そうした不具合を起こさないためにも、「アディダス」はISSとNASAの開発した技術のサポートを受けながらサッカーボールの飛行性能テストを実施し、より試合をエキサイティングにするための開発を続けているのだとか。

走った分だけ、海岸がキレイに
5年続く「ラン・フォー・ジ・オーシャンズ」


「アディダス」では、2017年から海洋プラスチック汚染問題に対する世界的ムーブメント「ラン・フォー・ジ・オーシャンズ」を開催しています。2022年の春に開催されたランイベントでは、「走行時間10分ごとに、プラスチックボトル1本相当のプラスチックゴミをアディダスとパーレイが沿岸地域から回収する」という試みを全世界で行いました。

その結果、約676万人以上のランナーが189カ国より参加し、総走行時間は約1,285万時間に。最大回収重量上限の250トン分、ペットボトルに換算すると約2,500万本分相当のプラスチックゴミの回収が実現されました。

サステナブルな商品開発が当たり前の世界を目指す


「サッカーを通して、多くの人が環境問題に目を向けるきっかけを作れたらと考えています。例えば、ラン・フォー・ジ・オーシャンズのムーブメントを次回のワールドカップでは直前に開催するなど出来たら面白いかもしれません。サッカーを起点として、未来のために取り組めることを増やしていけたら。サッカーを地球規模でポジティブに楽しめるように、私はエコフレンドリーな商品企画をすることで、今後もサポートを続けていきたいです」

と、世界中を驚かせ続けた、ワールドカップでの日本代表の活躍の裏には「アディダス」のサスティナブルな取り組みが隠れていました。世界的にもデザインで注目され、活躍を支え続けた2022ユニフォーム。3年半後に迎える2026年ワールドカップにはどのようなユニフォームが登場するのか楽しみですね♪ 今後のサッカー日本代表の活躍にも期待大です!

あの感動を忘れないために。セットで揃えて、レッツ・サッカー!

サッカー日本代表 2022 ホームオーセンティック ユニフォーム
史上初、沿岸地域で回収されたプラスチック廃棄物をアップサイクルして生まれた素材を使用。クーリング効果を発揮する「ヒート.レディ」を搭載するなど、環境に配慮したプロダクトでもパフォーマンスウェアとしての機能性も充実。1万7600円(税込)

アル・リフラ プロ 試合球
カタールの伝統産業のひとつ真珠を連想させるパール調の光沢原反を採用。パネル同士がサーマルボンディング製法で熱接着されているため、本体に縫い目はない。モデル名「アル・リフラ」はアラビア語で“旅”を意味する。1万8700円(税込)
(問)
アディダスお客様窓口 
0570-033-033

写真 /宮前一喜 文 / 妹尾龍都

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