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プロ野球 長期政権を築いた監督の条件を考える
毎日新聞社/アフロ
新庄剛志の監督就任で改めて指導者に注目される機運が高まる
2021年のプロ野球は、公式戦の全日程を終了。クライマックスシリーズから日本シリーズへと続くポストシーズンを離脱した球団から、来季に向けたチーム体制の整備に移っている。
そのような折、日本ハムの新監督に新庄剛志が就任するというニュースが舞い込んだ。
現役時代は阪神で活躍後、海を渡ってメジャーリーグでプレー。帰国後は日本ハムで2006年まで現役を続けて引退した。「少し、いやかなり奇抜だが、ファンの記憶に鮮明に残る」レジェンドが、監督としても末永く成功するか否か? 多くのファンが興味を抱いているところだろう。
そこで、プロ野球で長期政権を築いた歴代の監督にはどのような人物がいて、どの程度の期間連続で在任していたのかを改めて調査してみた。
その結果から導かれる「監督として成功する条件」に迫りたい。
2000年以降、5年以上指揮を執った監督は23名
最初に、2000年以降に5年以上指揮を執った監督をピックアップした。それを連続在籍年数順に整理すると(表参照)、ダイエー、ソフトバンクとまたいで14年連続で在任した王貞治が際立っていた。
そのあとには、巨人で2期目の監督を務めたときの原辰徳と、今シーズン限りで日本ハムのユニホームを脱いだ栗山英樹の2人が続いて、ともに10年。さらに、長嶋茂雄(巨人)が9年、落合博満(中日)、仰木彬(オリックス)がともに8年など、5年以上連続して在任した監督の総勢は23名におよぶ。
全体を俯瞰した特徴としては、当然のことながら、長く続いた監督ほどペナントレースの平均順位は上位の傾向にあり、Aクラス(1~3位)の回数も多い。
ただし、リーグ優勝や日本一の回数は必ずしもこの限りではないところが面白い。監督が長く指揮を任されるには、あくまでペナントレースで安定して上位の実績を残すことが重要視されるようである。
低迷していた球団を王者に底上げして14年間監督を務めた王貞治
続いて、連続在任年数上位3名の監督におけるリーグ順位の変遷を示したグラフから、長期政権の要因を考察したい。
まず、14年という長期間監督を務めた王貞治は、グラフを見ると監督就任当初は3年連続Bクラスに沈んでいた。
現役時代、巨人で通算868本塁打の世界記録を樹立。引退後も巨人の監督としてセ・リーグ優勝を果たすなど、人気球団で華々しい実績を誇った王にとって、当時、パ・リーグで長く低迷していたダイエーを一から立て直すには、多くの苦労があったようだ。
しかし、王を招聘して自らは監督を退いて球団専務に就いた根本陸夫が、トレードやドラフト、フリーエージェントで大胆な補強を次々と敢行。王自身も、過去のプライドを引きずることなく粘り強くチームづくりに徹した結果、1999年にパ・リーグを制覇し、日本シリーズにも勝利して、巨人監督時代に成し得なかった日本一の座を手にした。
そして、その栄冠にとどまることなく9年にわたりAクラスを堅守したことが、14年もの長期政権につながったと見ていいだろう。