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本間昭光 山内Dr.隆義 降幡 愛

本間昭光

本間昭光

プロデューサーとして、アレンジャーとして、作曲家として、誰もが口ずさめるヒットソングを数多く生み出してきた本間さんは、大のモノ好き。興味を持ったらとことん!な性格から、あらゆるモノに深い思い入れがあります。そんな本間さんの愛するモノの中から、音にまつわるアイテムにフォーカス。その魅力&エピソードを語っていただく連載、今回のお題は「カメラ」。仕事仲間にして同じく写真が大好きなレコーディングエンジニアの山内”Dr.”隆義さん、アーティストの降幡 愛さんをゲストに迎えて、カメラ&写真の醍醐味を語らいます!

山内Dr.隆義

Guest / 山内”Dr.”隆義さん

1964年生まれ。長きにわたりJ-Popサウンドの良音を支えるレコーディングエンジニア。2008年の第15回 日本プロ音楽録音賞 最優秀賞など賞の受賞多数。携わってきたアーティストは、鈴木雅之・ポルノグラフィティ・平井堅・広瀬香美・miwa・橋本愛・鈴木愛理・布袋寅泰・井上陽水・福山雅治・稲垣潤一・山崎まさよし・あいみょん・秦 基博・奥田民生・米米CLUB・ウカスカG etc.。本間昭光さんとは30年来の仲。同じく今回のゲストである降幡 愛さんのレコーディングも担当し、現在“本気の80`sサウンド”に傾倒中。”Dr.”のミドルネームは、ドラマーであったことと、医者のような仕事ぶりから。写真のほかオーディオにも造詣が深く、批評記事の執筆も手掛ける。

降幡 愛

Guest / 降幡 愛さん

長野県出身。歌手、声優。2015年に「ラブライブ!サンシャイン!!」の出演が決まり、黒澤ルビィ役で本格声優デビュー。同作品のスクールアイドルグループ「Aqours」のメンバーとして活動し、2018年年末のNHK紅白歌合戦に出演を果たす。2020年9月には本間昭光氏がプロデュースを手掛ける「Purple One Star」レーベルより、作詞も担当したソロデビューミニアルバム「Moonrise」をリリース。こよなく愛する’80年代サウンドを現代へ昇華した楽曲が話題を呼び、同年12月には2ndミニアルバム「メイクアップ」を続けてリリースする。2021年9月29日には、1stシングル「ハネムーン」と「降幡 愛 1st Live Tour APOLLO」のBlu-rayが発売予定だ。写真誌「フォトテクニックデジタル」(玄光社)では「降幡写真工房」を連載していた。

思い出が美化されるのも
瞬間を切り取る写真のよさ(本間)

本間昭光と山内Dr.隆義と降幡 愛対談開始前から大好きなカメラの話に沸くお三方。本間さんと山内さんは30年来の付き合い。皆さん、降幡さんの楽曲製作に携わる音楽仲間でもあります。

──早速カメラ談義で盛りあがっていらっしゃいますね。まずは皆さんが写真にハマったきっかけから教えてください。

本間:中学生の頃、写真部ではなかったんですが友人と写真部の暗室に遊びに行くのが楽しくて、それからですね。

降幡:暗室なんて行ってたんだ! すごい。

本間:うん、あった。もともと祖父がカメラ好きというのもあって、ハーフサイズカメラの「オリンパス ペン」を借りて、いろいろなところへ撮りに行きましたよ。でも当時は、写真部の連中が一眼レフを持っているのが羨ましくて仕方がなかった。中学3年のときの担任がまたカメラマニアで、ちょうど発売間もない頃の「ニコン F3」を修学旅行へ自慢げに持ってくるんだ(笑)。

降幡:すげー(笑)。

本間:赤線一本入ったデザインがカッコよくてね。でも中学のときは、結局カメラは買わなかった。「写ルンです」が出始める頃というのもあったのかな。それが東京に出てきて、写真展やらいろいろ観に行ったら、やっぱり写真いいなーと思って「コンタックス T2」を買ったんです。

山内:いきなり!

降幡:スゴいの買うなー(笑)

本間:ハワイに持って行っていろいろ撮ったら、どの写真もキレイに撮れてた。そのときは槇原敬之くんとか10人くらいで行ったのだけど、何が違うとキレイに撮れるんだろうねーという話になって。結局、光が違うんだろうという話に落ち着いて、写真は光のコントロールが大事なんだなと気づきました。

写真集もいろいろ見て、町歩きのスナップよりも広告写真のほうが興味あるなと思って。ハーブ・リッツっていうマドンナのジャケットを撮っている写真家の写真とか。あとはミケランジェロみたいに写真を撮るブルース・ウェーバーとかね。一時期そっち方面にハマって、またメイプルソープっぽい写真に興味が戻って。でも誰の写真を見ても、絶対に35mmのフィルムで撮ってない。大判で撮っている。欲しいけど、とてもじゃないけど大判カメラなんて手が出せないから、今度は中判カメラにチャレンジしようという話になったの。連中とね。

山内:お金あるからー(笑)。

降幡:アハハハハ。

本間昭光さん愛用のカメラとレンズ
本間さんの愛用機。パリの撮影旅行を供にした、思い出の「ハッセルブラッド 503CXi」と、独・カールツァイス製のレンズ群。この頃、ちょっぴりシャッターがご機嫌斜め。

本間:で、ハッセルブラッドの中判カメラを買っていろいろ撮っていたんだけど、せっかく撮るならシチュエーションが大事だよねーとなって。なら外国へ行くか! パリ行こう!という流れに。

降幡:いい時代だなー。

本間:三脚も持って行ったから、とにかく重い重い(笑)。さておき、緯度が高いからなのか何なのか、ヨーロッパの光もやっぱり何か違くて、パキッ!と写るんですね。日本の映画みたいにちょっと霞んだ感じとかもいいんですけど。ちなみに現像は、当時の槇原くんのマンションに集まって、流しでしました。

ここは何秒光を当てようとか、手で覆ってみようとか、試行錯誤して。すごいアナログなやり方なんですが、見よう見まねでメチャクチャに。今ならライトルームのソフトを使えば、PC上で一瞬でできちゃいますけどね。

──楽しそうな思い出ばかりです。

本間:瞬間を切り取る写真は、前後の思い出が美化されるところがいいですよね。イヤな写真は基本的に見ないし捨てるでしょ(笑)? スマホに入ってる写真でもそう。ビデオだとリアルすぎてそうはいかない。

山内:なんか深いねー。

カメラを構える本間昭光

本間:そういえばユーミンさんの還暦パーティがあったときに、写真家のレスリー・キーさんとハービー・山口さんがずっとパーティの様子を撮っていたんですね。

降幡:すげー(笑)!

本間:それで様子を見ていたら、レスリーさんはバシャバシャバシャバシャ!って撮ってる。一方のハービーさんはパシャ、パシャ、って感じ。記念撮影も一回しかシャッターを切らない。「押しますよー。はい、ありがとうございました」って(笑)。その方向性の違いとかも面白くて。

余談になりますが、ポールの妻のリンダ・マッカートニーが撮った写真もいいんですよ。僕、リンダ・マッカートニーが撮ったビートルズのオリジナルプリントというのも持っています。

降幡:オリジナル!?

本間:それはそれはリラックスしてるビートルズの写真。写真ってやっぱり撮る人との関係性も大事なんだなと思ったりしましたね。

降幡:へぇー。

本間:レコーディングも一番いいときを切り取るわけだから、写真に近いものがありますよね。演奏でも歌でも一回しかやらない人がいたりするでしょ? 逆に何回も何回もやって調子が出てくる人もいる。

──なるほど。ちなみに皆さんがカメラを撮るときはレスリーさんタイプですか? ハービーさんタイプですか?

本間:デジタルならレスリーさん、アナログならハービーさんですかね(笑)。中判だと12枚しか撮れないし。

山内:僕はあんまり撮らないですよ。ハービーさんタイプかな。カメラがライカだもんで、撮ろうと思っても撮れないというのもありますが。録音も本当はここだ!って瞬間だけ録りたい。直したり加工したりというのもあまりしたくなく、その時々を大事にしようと心掛けています。

降幡:私は割とバシャバシャタイプかもしれません。今!今!今!今!みたいな。構図もそのときのインスピレーションでバババババっと。こだわりがあるようで、ない撮り方です。レコーディングは……自分でこうしようと決めてからスタジオに臨むので……ディレクターさんによりますね(笑)。

親の写真がないことに気づいて
ふいに写真を撮りたくなりました(山内)

カメラを構える山内Dr.隆義

──山内さんが写真にハマったきっかけは?

山内:僕はもともと全然興味がなかったんです。というのも父親が写真が好きすぎちゃって、どこか旅行に行く度に「タカヨシ撮るぞ。ほら撮るぞ!」っていうのが面倒で面倒で。たぶんそれで写真を避けてたんだと思いますが、だんだん自分が歳をとって、ふと親の写真って全然ないということに気づいた。

本間:あー、お父さんはいつも撮る側だったから。

山内:そう。だから写真を撮りたくなった。そのタイミングで、さっき話に上がったハービー・山口さんが仕事場でたまたま僕の写真を撮ってくれたんだけど、その写真があまりにもすごくて。それでこの人にカメラのことを聞いてみようと思ったのが、ある意味間違いだった(笑)。

「ハービーさん、写真始めようと思うんですけどカメラは何買ったらいいですかね?」と聞いたら、「それはね、ライカが一番だよ」と言われて。でも知識がないからそうかライカかーと。買う段になって値段にまず驚き、でも知識がないからカメラってこのくらいするんだろうなーとデジタルの「ライカM-P」を買っちゃった。

降幡:イヤイヤイヤイヤ、まるで詐欺にあったみたいな(笑)。

本間:最初にそれ買うのスゴいなー。

山内:それが5、6年前の話です。おかげで鍛えられましたよね。手ブレ補正とかないし、簡単にはキレイな写真撮れませんから。

──そういえばツイッターにお父様が撮られた猫の写真を載せていましたね。

山内:フィルムを撮りきらないと僕の写真や猫の写真をやたらと撮っていたんですけど、それがこないだ出てきて。

本間:ちなみにコレは俺が若い頃の画像ね。

パリで撮影した当時30歳の本間昭光1994年、ハッセルブラッド&三脚をかついで行ったパリ撮影旅行。本間さんは当時30歳。若い!

降幡:えーっ! 若っ! なんでスマホに入ってるんですか(笑)。サングラス掛けてる写真とかちょっとTM感ありますね。「GET WILD」のPVみたい。

山内:今と服が似てるのが面白い(笑)。何歳のとき?

本間:’94年だから30歳かな。

降幡:わぁー、そうなんですね!

山内:そういえば本間君、よくスタジオに本格的なカメラを持って来てたよね。でもその頃は俺、全然カメラに興味なかったから、スタジオで何撮ってるんだくらいにしか思ってなかったよ。

降幡:本間さんより山内さんのほうが後に写真にハマったというのは意外。

本間:ふふふ。山中湖のスタジオ行ったときも何か撮ったなー。

山内:スゴいセットを組んでたよ。

本間:ストロボ持ってったね。でもあれも元々は槇原くんのもので、使わないから引き取ってと言われて引き取った。

山内:そういや「ストロボ」って曲も編曲してたよねー(笑)。

山内Dr.隆義さん愛用のカメラとレンズ
山内さんの愛用機。右/ハービー・山口さんの薦めで購入したデジタルの「ライカ M-P Typ240」。レンズの「ライカ ズミクロン f2 50mm」は、結婚記念で奥様から贈られたエンゲージレンズ! 中/1964年製の「ライカ M2」は山内さんと同い年のそれを狙い撃ち。レンズの「ズミルクス f1.4 50mm」も同い年。左/AE機能が初搭載された「ライカ M7」。レンズの「ライカ エルマー f3.5 35mm」はなんと1938年製。

──山内さんの銀色のライカは年期が入っていますね。

山内:勢い余って買った生まれ年のセットです。ライカの「M2」ですね。

降幡:金額聞いたら引いちゃいそうな(笑)。

本間:でも思ったより安かったんだよね。

山内:うん。というかデジタルの「ライカM-P」が高すぎたからねー。

──もう1つお持ちの「ライカ M7」は?

山内:2002年に発売されたフィルムカメラで、ライカで初めて露出やシャッターのオート撮影機能が付いたモデルです。僕の中では“最強”のライカのフィルムカメラです。生まれ年の「M2」は“最高”のフィルムカメラ。

本間:“最強”と“最高”。あとほら、デジタルのは値段が“最高”(笑)。今日は持ってきてないけど俺のライカは「M6」なんだよね。

降幡:すごい! ライカは憧れますねー。でも絶対触れないし扱いきれる自信がないです。可愛いんですけどね。

山内:持った感じ、似合ってるじゃない。

降幡:いやー、扱いが難しいから性格的にもちょっと……。もっとカメラを知れたら挑戦してみたいですが、まだまだライカを持つには全然自分は実力が追いついてないです。

山内:ライカ、いいよー。質感とか、あとシャッターの音とかね。

本間:優しい音なんだよね。

山内:もう音だけ聴いてられるもん(笑)。いつ撮られたかわからないような。

本間:ハッセルブラッドは「バシャ!」って強い音。女優さんなんかは、この音を聴くと気分があがっていくという人もいますよね。バシャ! バシャ!って。

山内:降幡さんは撮られることあるでしょ? やっぱりバシャバシャバシャって撮ってもらったほうが気分がいい?

降幡:そうですね、たしかにテンション上がります。でも「すごい枚数撮ってるなー」とか密かに思うときも(笑)。

本間:そういえばモノクロ専用のデジタルのライカもあるじゃない? あれ、どうしてあんなに値段するんだろうね?

山内:素晴らしいのよ、あれは。全然違う。カラーをただモノクロ化したんじゃない、本物のモノクロってこんなに階調豊かでキレイなんだ!という驚きがあって。モノクロしか撮れないのに100万円くらいするけど……。

降幡:マジか!(笑) 強気ですね。

本間:お手軽には買えないよなー。

ライカのモノクロ専用機で撮影した写真
件のモノクロ専用機、ライカ M10モノクローム+ライカ APO ズミクロン f2 50mmで山内さんが撮影した『Telefono』。レンズ含めての総額は200万円(!)とあって、階調表現の豊かさは圧巻です。

〈Part 2〉世界共通のボケ、そしてアナログとデジタル へ続く

本間昭光

本間昭光(ほんま あきみつ)

1964年大阪生まれ。’88年に「マイカ音楽研究所」に入学。松任谷正隆氏に師事し、作曲アレンジを学ぶ。’89年、上京とともに「ハーフトーンミュージック」に所属し、アレンジャーやサポートミュージシャンとしての音楽活動を開始。

’99年にak.homma名義でポルノグラフィティのトータルプロデュース・作曲を担当。「アポロ」や「サウダージ」等のヒット曲を数々生み出す。2009年には、いきものがかり「なくもんか」の編曲を担当し、その後も「ありがとう」など、多くの楽曲のサウンドプロデュースを担う。最近ではアレンジを手掛けた筒美京平先生のトリビュートアルバム『筒美京平SONG BOOK』が発売中。また2020年にバンダイナムコアーツとともに立ち上げた「Purple One Star」レーベルでは、レーベルプロデューサーを担当。80’sの世界観を完全に再現した第一弾アーティスト、降幡 愛が話題。2021年9月29日(水)発売、1stLive Tour APOLLO at ZEPP DIVER CITY (TOKYO)【Blu-ray】のダイジェストを公開中↓↓↓

降幡 愛オフィシャル YouTube Channel
https://www.youtube.com/channel/UCWfhLoV53Rwdc9WGw735IUg

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