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ワールドパーティー 角谷 圭一朗

時代のニーズや変化に見事に応えた優れモノが、日々私たちの周りで続々と誕生しています。そんな心を踊るアイテムは、どのようにして生み出されたのか? 本連載「ビギニン」では、そんな前代未聞の優れモノを“Beginした人”を実際に訪ね、その誕生の深層に迫ります。目からウロコな制作秘話やモノ作りに込められた思いを、まっすぐに紹介していきます。

傘の登場率が格段に増すこれから時期。梅雨明けたとしても、スコールのような夕立が頻発する昨今の夏。雨の日特有のストレスがもっとも高くなる時期ともいえます。特に私(筆者)が嫌なのは、雨で濡れた傘をたたむ行為。スッキリまとめようと思うと手がビショビショになりますし、まとめなければ今度は洋服がビショビショに……。周りの人にも当然迷惑です。同意してくれる方も多いのではないでしょうか。

今回登場するビギニンは、そんな雨の日のストレスを解消する「濡れない傘」を開発したアイデアマン。「傘なのに濡れない⁉︎」という矛盾の答えは上の動画をご覧いただければ一目瞭然。その撥水力の凄まじさにご納得していただけるでしょう。ジョウロで勢いよく傘にかけられた水は玉のようにコロコロと表面を滑り落ち、そのあと傘をバサバサと2回ほど振ると、まるで未使用同然のようなさらっとした生地に。予想以上のその様に取材チームも驚愕。「もう一度見せてください!」と、ビギニンに撥水力テストをアンコールしたほどです。

雨傘 長傘 UNNURELLA LONG 65

とはいえ、撥水力をウリにした傘は市場にも多数出回っていますよね? もちろんこの傘、スゴいところはただ撥水力が凄いというだけではありません。他の傘と違うのは、“強力な撥水力が長期間持続する”ということ。通常ワンシーズン使えば撥水力がなくなる傘がほとんどの中、「ダントツ撥水」という特別な加工を施した、目の細かいポリエステル生地を採用することで、今までの常識を覆すことに成功したのです。簡単なお手入れを続ければ、ビギニン曰く100回使っても十分な撥水力を感じられるんだとか‼︎

その傘の名は「アンヌレラ」。特徴をうまく捉えたユーモア溢れるネーミングセンスもなかなかですが、「日本で最も撥水する傘」は果たしてどのようにして誕生したのか。「アンヌレラ」のビギニン、角谷 圭一朗さんに伺った内容をお届けしたいと思います。

今回のビギニン

ワールドパーティー 角谷 圭一朗
ワールドパーティー 角谷 圭一朗

1984年生まれ。和歌山県出身。福岡で染め物の見習い職人として経験を積んだ後、2009年に入社。現在は同社の執行役員兼営業本部長として商品企画から広告戦略、販売まで幅広い分野を統括している。平日は大阪と東京を行き来する生活、休日は趣味のフットサルで汗を流すのが定番。

idea:
濡れた傘だと、周りの人に迷惑をかける

雨傘 長傘 UNNURELLA LONG 65

業界を牽引する大阪の雨具メーカー「ワールドパーティー」で手腕を振るっている角谷さん。入社前は福岡の染め職人の下で修行を積んでいたんだとか。事実だけを切り取ると、角谷さんが異業種へ転身を果たしたかのように聞こえますが、両職種には深い部分で共通点があったのです。

「昔からモノを作る仕事をしたいと思っていたんです。だから社会に出るとすぐ、染め修行をはじめました。山奥にある工場で、たくさんの良い経験を積ませてもらったと思います。たとえば、桜の木から抽出したピンク色の染料でストールを染めてみたり。でも、やっぱり給料が安くって(笑)。自分が作ったものを多くの人に使ってもらっているという実感が次第に持てなくなってしまったんですよね。」

そんなとき、たまたま求人サイトを眺めていた角谷さんの目にワールドパーティーが飛び込んできます。

「正直、考えてもいない分野だったのですが、雨具であれば需要がなくなることはないし、自分が作ったものを多くの人に使ってもらえると思えました。ブランドのビジュアルも先鋭的でお洒落だと感じたし、面接に行ってみたらその場で採用。翌週には出勤していました(笑)。」

ワールドパーティーのロゴ

傘と聞くと岐阜県が有名ですが、洋傘が盛んなのは実は大阪府って知っていました? ワールドパーティーは、その大阪に本拠地を置く雨具メーカーです。創業は1985年、1994年にはそれまでの洋傘加工業社「中村」から社名変更。現在、3つのオリジナルブランドを展開しています。

角谷さんが入社したのは2009年。同社が主力ブランド「Wpc.(ダブリュピーシー)」を立ち上げて、ちょうど5年を迎える節目の時期でした。当初は女性用の傘を中心に販売製造していましたが、2014年に男性用の傘にも着手。角谷さんが開発した「アンヌレラ」も、元をたどると「Wpc.」から派生してできた雨傘ブランドなのです。

「ブランドがスタートした頃は、世の中に広く知られるような洋傘専門のドメスティックブランドってあんまりなくて、『やるからには徹底的にお客様から愛され、必要とされるようなブランドにしよう!』と同社代表がブランドの軸を決めたんです。アンヌレラの開発時にも、こだわりを詰め込んだWpc.の事業で培ってきた知識と経験がとても役に立ったと思います。」

ワールドパーティー 角谷 圭一朗

角谷さんが「アンヌレラ」の開発に取り掛かったのは、雨具業界に足を踏み入れてから5年後のこと。きっかけは、私(筆者)もひどく共感した傘に対する些細なストレスでした。

「濡れた傘を電車で持っていると、周りの人に迷惑がかかるし自分も不快ですよね。出勤するだけで、けっこう疲れちゃいます。このストレスがなくなれば、雨の日の憂鬱な気持ちが少しは晴れに変わるだろうと企画を練りはじめました。」

傘が雨で濡れたままの状態を回避するには、撥水性を持たせることが業界のセオリー。そこで角谷さんは「濡れない傘を作りたい!」という思いを代表にぶつけ、生地開発で世界的に有名な石川県の繊維工場へ。かくして「アンヌレラ」誕生の第一歩が踏み出されました。

trigger:
最高基準の撥水性、しかし満足はできなかった

雨傘 長傘 UNNURELLA LONG 65

傘が濡れないことの価値を示してくれる「アンヌレラ」。雨に打たれた駅の中でバサッと傘を一振りすれば、表面の水気は驚くほど一気に吹き飛んでしまいます。

「アンヌレラは雨の日のストレスを軽減したいという思いから始まったブランドです。特徴は日本一の撥水性と、その撥水性が持続する耐久性。第一弾の開発から世界的ファブリックメーカーである小松マテーレさんの協力を仰いでいます。」

小松マテーレは、1943年に石川県小松市に創業した繊維加工メーカーです。75年以上の歴史が物語る高度な染色技術に、最先端の加工技術をミックスして仕上げる素材は、日本だけでなく世界のアパレル業界から注目されています。ちなみに、社名のマテーレとは素材を表す「material」と、再生を表す「re」を掛け合わせたもの。その名の通り、同社は繊維業にとどまらず建築や土木、環境関連まで手広く事業を展開しています。

ワールドパーティー 角谷 圭一朗

「私と代表の2人で『撥水性に富んだ傘を作りたいんです!』って工場に直談判しに行きました。私たちの説明不足もあってはじめは共感されなかったんですが、熱意を持って趣旨を伝えると理解を示してくれて。どうにか傘づくりに協力してもらえることになったんです。」

「アンヌレラ」第一弾が発売されたのは2015年。他とは一線を画す撥水力に注目が集まる一方で、市場に類似商品が多数出回りはじめました。「アンヌレラ」としては、他との差別化を図るべく次なる一手が必要。角谷さんは直ぐに動き出しました。

「撥水力って、使いはじめは最高基準を保証できていても、どうしても使っていくうちに威力が弱まってしまいます。特に傘の折り目の部分がウィークポイントでした。ですから、類似商品と差をつけるためにも耐久性を磨いていこうと思ったんです。」

撥水力ってなんで低下するの?

雨傘 折りたたみ傘 UNNURELLA MINI 60 HANDOPEN / AUTOMATIC

「撥水性をセールスポイントに掲げる傘は、ほとんどがその効果に耐久性はない」と角谷さん。この現象をアパレルに置き換えてみても、思いあたる節はチラホラあります。それでは、なぜ撥水力って低下するのでしょう。

「撥水加工は専用の溶剤を生地に浸透させて施します。しかし、その定着率が良くないと簡単に水で流れ落ちてしまうんです。空気中の埃など、雨の中には不純物も混ざっていますから尚更です。また、手や物に触れることで起こる摩擦も持続期間を下げる要因。ハンドクリームをつけた手で触ったりすると、やはり撥水力は格段に落ちてしまいます。」

他の追随を圧倒するためには、最高ランクの撥水性を持続させることが重要。「アンヌレラ」は発売以降、耐久性を追い求め進化を繰り返してきました。そして、2021年春、とうとう角谷さんも納得する「ダントツ撥水」加工が施された「アンヌレラ」が発売を迎えました。そのときのエピソードと、撥水力を持続させるお手入れ方法は後半にて!

後編:「THE世界仰天!超耐久撥水加工を傘に」に続く

雨傘 長傘 UNNURELLA LONG 65
業界屈指の耐久性を誇る撥水力が魅力の傘。一般的な傘に比べ効果は倍以上も継続、雨粒を長い間キレイに振り払うことができる。加えて紫外線遮蔽率も90%をマーク。猛暑日の日傘としても使用可能だ。持ち手は片手で開くジャンプ仕様で、持ち手の先には机などに引っ掛けやすいよう滑り止め加工が施されている。汚れや摩擦からボディを守れる、ファスナーケース付き。450g。4840円(税込)

 

雨傘 折りたたみ傘 UNNURELLA MINI 60 HANDOPEN / AUTOMATIC
先に紹介した長傘の折りたたみバージョン。ボタン1つで傘が開閉できる自動式と、手開き式の2種類を展開。軽量化を図るため自動式は傘の骨が5本に変更されている。豊富なカラバリも魅力でギフトにも最適だ。側面が大きく開く傘を収納しやすいジップケース付き。自動式280g。5500円(税込)。手開き式220g。4620円(税込)

(問)ワールドパーティー
https://unnurella.jp/index.html


写真/穂苅麻衣 文/妹尾龍都

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