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岡重 オリジナル図柄 オリンピック競技文様

本間昭光

本間昭光

プロデューサーとして、アレンジャーとして、作曲家として、誰もが口ずさめるヒットソングを数多く生み出してきた本間さんは、大のモノ好き。興味を持ったらとことん!な性格から、あらゆるモノに深い思い入れがあります。そんな本間さんの愛するモノの中から、音にまつわるアイテムにフォーカス。その魅力&エピソードを語っていただく連載、#04は和服です!!

♯04
五輪ピクトグラム柄の
羽織

岡重 五輪ピクトグラム柄の羽織
岡重オリジナル柄があしらわれた正絹の西陣織りで仕立てられた羽織

スピーカーとアンプ、ケーブルを選ぶように、羽織や着物、帯と組み上げ、理想を追求していく

HTBの番組「水曜どうでしょう」の予告映像の音楽を作っていた関係で、2013年に行われた番組のお祭りイベントに招待していただいたことがあります。

ステージでは、大泉くんをはじめ皆さん和服姿。その凜としたお姿を見て、すごくイイな、ボクも着てみたい!と思いまして。衣装を担当された方のご紹介をいただき、早速、京都へ和服を仕立てに行きました。

行ってみて初めてわかったのですが、和服というのは、羽織はココ、着物はココ、襦袢は、帯は、足袋はココ……と、アイテムによって得意とするお店が違うんですね。これを組み上げていく作業はまさしく、オーディオのそれと一緒。和服とはコンポーネントなのだということがわかりました。ちなみに、アイテムをひととおり揃えている呉服屋さんは、家電でいうと大型量販店のイメージですね。

和服選び オーディオ選び

そのときは京友禅の老舗「岡重」の岡島社長にそれぞれのお店を案内していただいたのですが、京都のお店は文字どおりの意味で“間口が狭い”。これは間口の広さによって課せられる税金の額が決まった江戸時代の名残だそうですが、奥に通されるとバ〜ッと一気に空間が開けるから面白い。

そして羽織や着物を扱うお店の座敷の上には色とりどりの反物が山のように積まれていて、「お顔の色にはこちらのほうがよろしいおすなぁ〜」みたいな感じで、一枚ずつ広げて見繕ってくださる。生地を選んだら採寸をして、仕立て上がるのをひたすら家で待つ。それはそれは楽しく、飛び込みでは絶対に経験のできない貴重な経験をさせていただきました。紹介の大切さ、ありがたみを感じましたね。

オーディオと同様、“一点豪華主義”では
ポテンシャルを引き出せない

一番のお気に入りは、羽織です。羽織は洋装でいえばジャケットに当たるコンポーネントなのですが、選んだ生地は柄モノで、1936年に開催された「ベルリン五輪」の競技が表現された西陣織り。もう一目惚れでした。

東京五輪が今年開催されるかどうかはわかりませんが、ボクは五輪というイベントが大好きなんです。超人たちが、ほんの一瞬のために一生をかけて真剣に臨む……。商業がうんぬんという批判もあるけれど、純粋にこんなカッコいいものはないと思います。さておき、当時の絵師がイメージで描いたという図柄には、何なのかまるでわからないナゾの競技も散見され興味が尽きません。

岡重 オリジナル図柄 オリンピック競技文様
岡重のオリジナル図柄「オリンピック競技文様」。1936年に行われたベルリン五輪をモチーフに、岡重の絵師が当時の少ない情報からイメージでデザインしたものだという。槍を投げる人、走る人、格闘技(?)など、今でいうピクトグラムのような絵柄が描かれている。ちなみにピクトグラムが初めて五輪に導入されたのは1964年の東京大会だというから驚きだ。

着物や帯などの生地は、この羽織の生地を元に、それぞれの分野の目利きの方のアドバイスを聞きながら選んでいきました。聞けば、色だけでなく生地の目の細かさや、光の具合まで合わせないと綺麗にまとまらないのだそう。だから、一点豪華主義なんてものは通用しない。これってやっぱり、スピーカーが100万円でアンプが5万円じゃ音のポテンシャルを引き出せないのと同じじゃん!と思うんです。

時間をかけて選んだいいモノは
目利きには一瞬で通ずる

そして無事に手元へ届いた和装一式。さて、どこへ着ていこうかと思っているときに、ちょうど松任谷由実さんの還暦パーティへ呼んでいただく機会に恵まれました。由実さんといえば、実家が八王子の呉服屋さん。和装で参加すれば何か感じとってくださることもあるかもしれないと思い、プロの方に着付けをお願いして参加しました。日本人のDNAなのか、和服に身を包むと不思議と身が締まりましたね。

すると由実さんも和装姿。早速目に留めてくださって「本間くん、イイねそれ」と言ってくださった。本連載で、松任谷正隆さんのところへウエストンのローファーを履いて行ったら一言目に「それを履いているなら仕事も順調だな」と言われたという話をしました(過去記事)が、ちゃんとしたモノは目利きの方には一瞬で通ずるものなんですね。

また、いいモノを選んで身に着けていますという姿を人に見せることは、頑張っている姿を表すこと。お世話になった方への恩返しにもつながるとボクは思っています。

松任谷由実さんの還暦パーティ 本間昭光さん

ちなみに当の還暦パーティは、松任谷由実さんにはナイショで企画された完全サプライズな会でした。井上陽水さんが即興でジョン・レノンを歌われたり、くまモンがいたり……。豪華で、とてもステキな会でした!

本間昭光

本間昭光(ほんま あきみつ)
1964年大阪生まれ。’88年に「マイカ音楽研究所」に入学。松任谷正隆氏に師事し、作曲アレンジを学ぶ。’89年、上京とともに「ハーフトーンミュージック」に所属し、アレンジャーやサポートミュージシャンとしての音楽活動を開始。’96年に自身のプロダクション「bluesofa」を設立する。

’99年にak.homma名義でポルノグラフィティのトータルプロデュース・作曲を担当。「アポロ」や「サウダージ」等のヒット曲を数々生み出す。2009年には、いきものがかり「なくもんか」の編曲を担当し、その後も「ありがとう」など、多くの楽曲のサウンドプロデュースを担う。2020年にバンダイナムコアーツとともに立ち上げた「Purple One Star」レーベルでは、レーベルプロデューサーを担当。80’sの世界観を完全に再現した第一弾アーティスト、降幡 愛が話題に。2020年12月には、2ndミニアルバム「メイクアップ」がリリース。「メイクアップ」より、「真冬のシアーマインド」のMVはこちら↓↓↓

降幡 愛オフィシャル YouTube Channel
https://www.youtube.com/channel/UCWfhLoV53Rwdc9WGw735IUg

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