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ジャパンブルージーンズ JAPAN BLUE JEANS ジーンズ

ジーンズを機能的に、より美しくアップデートしたジャパンブルージーンズの「サークル」シリーズ。前回は最大の特長となるシルエットと穿き心地についてレポートしましたが(以前の記事はこちら)、今回はデニム地の根幹である「綿」と「染色」にフォーカス。同社のモノづくりを支えるキーマンたちにお話を伺います。

ジーパンに現れる経年変化をアタリ、ヒゲ、ハチノスなどと名付け「わび・さび」的な魅力を見出したのは日本人だと言われていますが、マニアでなくとも、ジーンズを選ぶ時、綺麗なエイジングは気になりますよね? ご安心ください。ジャパンブルージーンズでは「デニム作りは綿選びから」という信念のもと、創業時から「色落ち」を徹底研究。そのノウハウはもちろん、サークルにも生かされています。

「モンスター」と呼ばれるデニム


「サークル」シリーズには、色落ちや履き心地を顧慮し、アメリカ、オーストラリア、アフリカなど世界の綿産出国から選ばれた最適なコットンが使われています。中でも人気なのが「モンスター」と呼ばれる16.5ozのコートジボワール綿だけを用いたセルヴィッチデニム。色落ちがスピーディかつ変化もはっきり現れるという特徴を持ち、デニムを「育てる」感覚が通常より早く楽しめると、デニム好きから支持される逸品です。実は、このコートジボワールコットン100%のジーンズ、国内で生産しているのはジャパンブルージーンズだけなんです。

コートジボワールコットン
日本に輸入されるコットンは、多い順にアメリカ、オーストラリア、ブラジル、ギリシャと続き、この4カ国で全体の95%を占める。他はジンバブエ、コートジボワール、ブルキナファソ、タンザニア、ウガンダ、インドなど。

綿は白く、太く、長いものが良いとされるが、それがデニムに最適とは限らない

ジャパンブルージーンズの約9割のアイテムで使われる綿の輸入を手がける大阪の山忠棉業で、コートジボワール産のコットンを見せていただきました。他の綿と見比べたところ、若干、ローホワイトな印象を受けます。

「綿は今どんどん品種改良が行われているんです」

と説明してくれたのは山忠紡績の代表取締役、武田 淳さん。綿は一般的には白く、太く、長いものが良いとされていて、綿産出の主要国であるアメリカやオーストラリアではその傾向が顕著です。対してアフリカ綿は、まだ発展途上の段階でそのレベルにはたどり着いていないんだそう。

「コートジボワール綿も、アメリカ綿なんかと比べると、少し白度が弱く、ちょっと黄色っぽいんですよ。本当に微妙な差ですが、デニムとしてブルーに染めると、違いが出てくるんですね。そのわずかなニュアンスをジャパンブルーさんは追求されていると思います」

山忠紡績株式会社 代表取締役社長 武田淳さん
山忠紡績株式会社 代表取締役社長 武田淳さん。1961年生まれ。趣味はゴルフと身体を動かすこと。所属するソフトボールチームではピッチャーを任されることが多いそう。

ジーンズにするにはもったいないくらい、いい綿

コートジボワールコットンは、原種に近く、初期デニムの綿に似通った風合いをもつと言われます。ちなみに綿は農作物なので、気候や栽培状態によって、同じ産地でも出来映えが変わってきます。そのため、綿花には品質管理の規格があり、明度、色合い、不純物の含有量、繊維の長さといった基準でグレードに分けられます。ジャパンブルージーンズで使用されているコートジボワール綿は、明度が上から3番目、色合いは最も白いものと決まっているんだそう。

「これはすごくいい綿なんですよ。ジーンズにするにはもったいないくらい(笑)」

と武田さん。糸の太さは「番手」という単位で表され、数字が大きくなるほど糸は細くなります。「ジーンズで使われる糸は通常、6〜10番ですが、このコートジボワールコットンは40番の糸でも引けるくらいの綿なんです」一般的に繊維は細いものほど優良とされ、細い糸が作れるのは、それだけ品質も良いということになります。

スライバーと呼ばれるロープ状の繊維
コットンのもつれあった繊維を解きほぐしてロープ状にした「スライバー」。これを撚って糸にしていく。

ジーンズが生まれた頃、紡績技術は未熟だった

デニムの魅力は、穿き込むことで現れるエイジングにありますが、未来の色落ちをデザインするうえで、原綿と同じくらい重要なのが、糸の形状だと武田さんは言います。

「ジーンズが生まれた頃は、紡績技術が未熟でまっすぐ糸を引けなかったんですよ。一本の糸に細い部分と太い部分があり、それでデニムを作ったところ、独特のアタリが出た。それが後にヴィンテージと呼ばれるようになったんです」

一本の糸で太さにバラツキがあると、生地にした際、凸凹ができ、それが浮き上がることでスレあたりが発生します。色落ちは、この糸のムラ具合に大きく左右されます。ジャパンブルージーンズには、長年のデータが蓄積されており、糸の段階でデニムがどのように変化するのかがわかるそう。そこで紡績前に逆算し、どれくらい糸のムラ感を出すのかを決めるといいます。

山忠紡績 ローラー
ムラ糸はローラーの回転数(需給バランスの強弱)を変えて作る。

「機械ムラ」と「コンピュータムラ」

「山忠紡績では、精紡と呼ばれる糸作りの最後の工程で、コンピューターで動きを調整したり、必要な機械の部品をわざと外し不正回転させることで不均一な糸を作っています」

武田さんから完成品の糸を見せていただくと、確かにそれぞれ強弱のパターンが微妙に異なります。

「最初は、なかなか言葉のニュアンスが伝わらず試行錯誤しましたが、今はジャパンブルージーンズさんと山忠紡績の間でイメージがほぼ重なりあい、最適なムラ糸ができるようになりました」

アフリカ綿といえばジンバブエが有名ですが、コートジボワールコットンも近い将来、デニムに欠かせない原綿になるかもしれません。

綿 2020年の輸入実績表
綿の協会が公開している2020年の輸入実績表を見ると、日本に入ってくるコートジボワールコットンはすべてジャパンブルージーンズで使っていることがわかる。

改めて知りたい デニムはなぜ色落ちするのか?

こうして完成したコートジボワール綿のムラ糸を経(タテ)緯(ヨコ)両方に使用したのがサークルの16.5ozのセルヴィッチデニム通称「モンスター」です。デニム好きはご存知だと思いますが、通常、インディゴで染められるのは経糸(タテイト)のみ。緯糸(ヨコイト)は白色のままです。つまり色落ちとは経糸の経年劣化であり、それにはインディゴ特有の染色方法が深く関係しています。

坂本デニム株式会社 営業部 元川貴司さん
坂本デニム株式会社 営業部 元川貴司さん。48歳。「話は得意ではない」ということでしたが、染色の工程、色の種類など丁寧に解説してくれました。

インディゴ染料はなかなか染まらない

「インディゴ染料は水に溶けないんです」

と解説してくれたのは、ジャパンブルージーンズで使われる糸の染色を請け負う、国内インディゴ染色のパイオニア「坂本デニム」の元川さんです。曰く、インディゴは還元剤を加え水溶性にしてから繊維へ吸着させるそう。それが空気に触れると酸化して藍色になるのですが、一回では色がつきにくく、濃い色にするには、同じ工程を何度も繰り返さなければなりません。そこで編み出されたのが「ロープ染色」という方法です。文字どおり糸をロープ状に束ねることで、効率良く美しい染色が可能になったのですが、ここにもデニムが独特の経年変化を生む秘密がありました。

ロープ染色
350〜500本の糸からできたロープの束が染色層に浸かっていく。

ロープ染色による「中白」

「インディゴは粒子が大きく、糸をロープ状にする際、強い力で引っ張り糸の表面が縮まると、染料の粒子が内部へ浸透しにくくなります。そのため、糸の外側は濃く染まりますが、中心に近づくほどブルーが薄くなって、芯は染まりきらず白色が残ります。これが『中白』と呼ばれるロープ染色の特徴なんです」

と元川さん。ジーンズを穿き込むと現れる「色落ち」とは、デニムの経糸(タテイト)表面が削れることで、この「中色」が徐々に現れることなんです。

ロープ染色の特徴である中白
糸の断面を見ると、中心が白いのがわかります。これがロープ染色の特徴である「中白」。

「ロープ染色では、精錬(繊維についた不純物を取り除く前処理)・染色・酸化・水洗・乾燥の工程が一つの機械で行われます。全長は約800メートルあり、一度動かすと染め終わるまでストップできないので緊張感が漂います。染色機には計測器がついていて、約500メートルおきに糸の色合い、赤みや、青の深さを調べます。染める糸は数千メートルになるものもあり、色差が出ないよう微調整をしています」

坂本デニムには、トータルで3000種類以上のカラーがあり、現在約200色が定番化しているそう。糸だけを見ると微妙な差ですが、生地にすると、はっきり違いが現れます。ジャパンブルージーンズと坂本デニムは、昔の本藍の色をインディゴで再現するなど、これまでさまざまな取り組みを通じて染色技術の研鑽を行ってきたのです。

原綿、糸、そして染色。全てが揃って表現される絶妙な色落ちは、穿き込むほどに心を掴まれます。

CIRCLE / 16.5oz コートジボワール綿セルヴィッチ(モンスター)

栽培から収穫まですべて手作業で行われ、品質改良がなく最も「原種に近い綿」と云われている素朴な風合いが特徴なコートジボワール綿を使用。糸の打ち込みをしっかりといれ、経糸を超弱テンションで織ることで手織りに近い風合いを楽しめるデニムに。硬めの糊を使うことによって最初は生地が硬く、 穿けば穿くほど身体に馴染むのが特徴でコントラストのある色落ち、変化の様子は “モンスター”と称されている。セルビッチはコートジボワール×日本国旗カラー仕様になっている。ベーシックなストレートモデル「J366」(詳しくはこちら)、すっきり見えるテーパードモデル「J266」(詳しくはこちら)ともに1万6000円。

問い合わせ先/ジャパンブルー ☎ 086-486-0002
https://www.denimlabo.com/c/japanbluejeans
サークルシリーズはこちら

※表示価格は税抜き


写真/井上雅央 依藤寛人 文/森田哲徳

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