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サメ愛
沼口麻子

(写真:左)1980年、東京都出身。東海大学海洋学部を卒業後、同大学院海洋学研究科水産学専攻修士課程を修了。大学在学中にサメ相調査と、サメの寄生虫の調査に没頭。世界唯一のシャークジャーナリストとして、「サメのいるところ沼口あり」と言わんばかりに活躍中。自身でも「サメ談話会」というサメファンクラブを主宰し、全国各地にサメ好きの輪を広げている。挨拶の基本は「よろシャークお願いします」。主な著作に『ほぼ命がけサメ図鑑』(講談社)。

製麺愛
不死鳥カラス

(写真:右)老舗人気製麺所「浅草開化楼」の営業担当。大仁田 厚氏のマネージャー兼レスラーを経て、フリーレスラーに。プロレスをしながら新聞折り込みで見つけた浅草開化楼に飛び込み、配達ドライバーから製麺所修業を始める。社員として実際に製麺に携わるようになってからまたたく間に、六厘舎(現在は取引終了)の麺をはじめ、人気店の麺づくりを一手に引き受けるカリスマ製麺師に。製粉業界最大手の日清製粉でNB商品のオリジナルブレンドを手懸けるほか、ラーメン業界に留まらず、新感覚生麺パスタ・低加水パスタフレスカを開発するなど、麺作りへの情熱は留まるところを知らない。「拉麺界一の傾奇者」「闘うカリスマ製麺師」として常にラーメン界にプロレスを仕掛けていく要注意人物。公式ブログはこちら

まるでドラマみたいな話

沼口:今でこそあちこちのお店から製麺の依頼が引きも切らないカラスさん。製麺職人として一人前になるまでには、どんないきさつがあったんですか?
カラス:浅草開化楼の麺を実家の中華料理店で使っていたので、入社した後「あそこの息子か」と社長や専務には目をかけていただきました。だからこそ、自分も役に立たないといけない意識は高かったですね。
沼口:つけめんの麺を作り始めたきっかけは?
カラス:俺が製麺業界に入った頃はまだラーメン店のつけめんというのが今のように一般的になる前でした。浅草開化楼にも、つけめん用の麺というのは無かったんです。ただ実際に製麺配送のバイト時代に出逢った店(※注2)で、自分が食べて受けた衝撃と感動に、必ずブームになるという予感というより、確信があった。ですから、それを作ったらどうだろうと、会社に提案したんですね。今から18年前のことです。
沼口:今やつけめんと言えば浅草開化楼、ですものね。
カラス:もちろん反対意見も多かったですよ。入社したての、麺のいろはもわかってないヤツにやらせられるわけがないだろう、とか。でも社長と専務に約束したんです。
沼口:どんな約束だったんですか?
カラス:この麺を使う店は俺が全部新規で獲ってくる! だからやらせてくれって。
沼口:アツい! しかも、ストレートな約束ですね!
カラス:で、松戸に行列ができるラーメン店があって、そこに俺が麺を配達していたんです。そこの主人と話しているとき、「俺はとにかく讃岐うどんみたいにコシのある麺が欲しいんだ」という声を聞いた。俺はその主人にかわいがってもらっていたから、絶対に満足させるものを作ろうと躍起になったんです。

沼口:そこが第1号の店になったんですか?
カラス:いや、実はその店は主人が病気になってしまって、店を休むことになったんです。オヤジさんに認められる麺ができる前に連絡もつかなくなって、約束も宙に浮いたかに見えた。でも、俺は「あそこのオヤジさんの期待に応える麺を作りたい」と思って作り続けたんです。
沼口:ご主人の復帰を待っていたんですね……。
カラス:しばらく経って、その店が復活したという噂を聞いて、とにもかくにも駆け付けました。でも、そこでは製麺店から麺をとらずに、自家製麺を作ると……。
沼口:そんな。
カラス:そこは自宅に厨房を備え付け、リビングを客席として開放する小さな店でした。だから麺をとるより自家製麺のほうがロット面でもいいという判断だったんです。で、自家製麺にしたのはもうひとつ理由がありましてね。「お前のところ以外で麺をとるつもりはないから、自家製麺にしたんだ」ともいわれました。
沼口:一転して、嬉しいお言葉ですね。
カラス:俺はオヤジさんに喜んでもらいたい一心でつけめんの麺を作ってきた。だから、自家製麺ならそれでもいい。でも、せめて俺の麺を食べてくれと麺を出したんです。
沼口:そうしたら……?
カラス:「なんだよ、お前やるじゃねえか」って。俺の麺づくりはそこから始まりました。その麺をやがて使うようになるのが、あの六厘舎(※注3)なんです。

(※注2)前編より。不死鳥カラス氏が製麺配送のバイト時代、初めて食べすごく感動したとある店のこと。
(※注3)濃厚なスープに極太の麺を合わせるというスタイルでファンを獲得。つけめん業界で大躍進した屈指の人気店(現在は浅草開化楼との取引は終了しています)。

製麺男子のお宝②

日常的なユニフォーム代わりになっている開化楼×カラスTシャツ。背中の「粉人」は、「製麺店は粉をかぶってナンボ」というカラスさんの製麺スタイルを言葉にしたもの。

ウチは営業なんてしないし、俺が有名にさせてやるんだ!

カラス:ところで、沼口さんがシャークジャーナリストになったのはどうしてですか?
沼口:私は学生の頃からサメに夢中でしたから、就職するにもサメに関する就職先なんてまずないわけです。
カラス:確かに(笑)。
沼口:それで、プログラマーとして8年ほどやっていたのですが、「このままじゃ自分のやりたいことができずに終わってしまうな」と思ったんですね。
カラス:そこで一念発起したわけですか。
沼口:シャークジャーナリストという言葉をつくり、その肩書をつけて、毎日サメ関連の情報を発信していました。半年くらいしてからかな、バラエティ番組のオファーや、憧れの雑誌に連載をいただけるようになったりしたのは。
カラス:シャークジャーナリストは好きなことをやる仕事だから、ポリシーも強いのでは?
沼口:サメについては、私にしか言えないこともあるので、言いたいことはちゃんと言っていこうということですね。
カラス:沼口さんにしか言えないこと?
沼口:例えば、「人食いザメ」なんて言葉がありますが、意外に人って思ったよりサメに食べられていないんです。しかも人を狙って食べに来るのではなく、だいたいアザラシやウミガメと勘違いしてカプッといかれているだけ。
カラス:そうなんだ?
沼口:でも、「研究者」という肩書だと、それを断定できないんですよね。本当に人を狙って食べられていたらいけないから。私は研究者ではなくサメの「伝道師」だと思ってやっていますから、言えることでもあるんです。
カラス:その気持ち、すげーわかりますね!浅草開化楼って、実は広告とか一切出したことがないんですよ。俺がブログで情報発信してることもあって、e-beginみたいな媒体がおもしろがって取材しに来るけど(笑) ヨソの製麺所の中には偏った営業活動をして「あの有名店もうちの麺、この行列店もうちの麺」みたいなブランドイメージを作ってるところがある。店によってはそのイメージにほだされて、ころっと麺を変えるところもあるんです。でも俺はね、本当に美味い麺なら営業なんてする必要ないと思うんです。「いいよウチは営業なんてしないし、俺が有名にさせてやるんだ!」ってね(笑)
沼口:麺の伝道師ですね! 確かにカラスさんは、お客さん相手でも言いたいこと言っていますしね(笑)。
カラス:以前、六厘舎が東京駅に出店するとき、もはや「つけめん業界に六厘舎あり」という確固たる地位はゆるぎないものになっていましたから、あちこちから六厘舎と同じ麺を欲しいと依頼があったりしたんです。「ふざけんじゃねえ」と全部断りました(笑) 無名のころから一緒に頑張って作った友情を切り売りできないですからね。
沼口:会社からすると、黙ってても売れるものをなぜ売らないんだという話になりませんか?
カラス:当然なります(笑) けどね、六厘舎単体で考えても、伝説を作った大崎の店の後に東京駅に出店が決まったとき、「たとえ基本スープの味が同じだったとしても、麺に関しては新しいものでやろう」というのはこちらから提案しました。他所からどんなに欲しいという要望があっても決して外には出さない。大崎のあの小さな店にまで実際に行かないと食べられない麺だからこそ、意味も価値もあるんです。
沼口:カラスさんの麺は、まさに男気の塊みたいな麺ですね。またぜひ食べてみたいと思います。今日はありがとうございました。

製麺男子のお宝③

日清製粉から出ているNB商品と、日東富士製粉の浅草開化楼PB商品のパッケージ。「傾奇者」は、カラスさんが敬愛する戦国時代の武将・前田慶次郎から命名。ファリーナ・ダ・サローネはパスタ専用粉で、チーメンは配合完成当時流行っていた、大木こだま・ひびきのギャグ、「チッチキチー」から(大流行するくらいつけめん業界を席巻してやるという意気込みで)命名。

製麺男子のお宝④

浅草開化楼が麺を卸している店は、こぞって店先にこの札を掲げる。「麺にこだわりがある」とアピールするにつけ、浅草開化楼の名札をこだわりの象徴としているという。

 

サメ女子のお宝③

イギリスの「JOULES」というメーカーの長靴。安全靴は水に濡れると乾きにくく、ニオイもこもりやすいのでフィールドワーク時には防水性優先で長靴を履くことが多い。

 

製麺道三種の神麺①

カラス作の麺の中でも最も小麦の味わいが「濃い」と言われるチーメン。老若男女誰が食べても「麺が美味いと伝えたい」が開発テーマ。もちもちした食感も、甘みの強い味わいも中華麺の基本・小麦粉とかんすいの組み合わせ「だけ」で生まれたものだ。

製麺道三種の神麺②

傾奇者の細麺。小麦粉とかんすいだけで打った細麺ながら、塩水で茹でたうどんの麺よりもしっかりとしたコシを保ち、麺を噛むのが楽しくなる。細麺のつけめんにしても麺同士がくっつかないのも大きな特長。

製麺道三種の神麺③

有名イタリアン「SALONE」グループのエグゼクティブシェフ・樋口敬洋氏と共同開発した低加水パスタフレスカ。カラスと樋口の名前をとってカラヒグ麺とも呼ばれる。パスタは開化楼でも直接販売している(1日10kg限定/おひとり2kgまで)。

白熱するサメvs製麺対談 全2回!
第一回 カラスさんの製麺修業入門秘話はコチラ!

 

著書紹介

 

『ほぼ命がけサメ図鑑』(講談社)

人類よりも先、地球に4億年前からすみつづけるサメは世界中に500種類以上存在する。全長17メートル(これまで確認された最大サイズ)の「最大の魚類」ジンベエザメから、手のひらサイズのツラナガコビトザメまで、分布や生息域、繁殖方法も多様性に富む、まさに”百鮫百様”の生き物。そんなサメを愛してやまないシャークジャーナリストが、サメの本当の姿を世の中に伝えるべく奮闘を繰り返した体当たり図鑑。本体1800円。

※表示価格は税抜き


写真/植野 淳 構成・文/新田哲嗣 イラスト/鈴木海太

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