草履がビーチサンダルになり、スポサンが生まれた——サンダルの歴史と豆知識を知る

誰もが知っているあの「定番」にまつわる常識からウンチクまで、でサクッとお勉強! 今回のテーマは、この酷暑の中で避けては通れない「サンダル」です。

原始の靴であるサンダルがファッションになるまでを知る

原始の靴である“サンダル”がファッションになるまでを知る

文明が誕生する以前から、植物や革で人間の足を守ったサンダルは、今や夏に欠かせないファッションのキーアイテム。どうせ履くなら、歴史や豆知識も知っておきましょう!

Q.サンダルの歴史を教えて!

A. あまりにも古くから人類の足を支えてきただけに、サンダルの源流は判明していないが、文明が誕生する前から履かれていたことは確かだ。樹皮、草、皮革に布。時代時代の最も身近にある素材でサンダルは作られ、さまざまな地域で独自の発展を遂げた。

洞窟に残っていた約1万年前のサンダル

約1万年前のサンダル
写真は米・オレゴン州、フォートロック洞窟で発見された樹皮繊維製のサンダル。およそ1万500年前に作られたものと推定される。ソールを紐状の何かで甲に固定するサンダルの構造は、文明誕生以前から変わっていない。

なかでもユニークなサンダル文化を形成したのが、日本である。今も、和装において最もフォーマルな履き物といえば草履。明治以前は他にも、雨の日や用を足す際に用いる高下駄や、草表の草履の裏に革を貼って耐久性や耐水性を高めた雪駄など、多種多様なサンダルが日常的に用いられていた。

さて、その日本において戦後、サンダル革命が起こる。クッション性に優れるゴム製のビーチサンダルが発明され、レジャーに最適な履き物として米国へ輸出されたのだ。モチーフはもちろん「草履」であった。

Q.サンダルってどんな種類があるの?

A. 鼻緒で足を留めるビーチサンダル、甲を一本のベルトで覆うシャワーサンダル、足首まで固定するスポーツサンダル。レザーストラップを編み込み、つま先とかかとを覆うグルカサンダル。歩きやすさを追求したコンフォートサンダルなど、その姿は用途によって大きく異なる。

一般的に女性用が多いミュールは、かかとのないつっかけ型でヒールがあることが特徴。木靴をルーツに持つサボサンダルは、丸みのあるフォルムと安定感のある履き心地が魅力である。麻縄のソールを特徴とするエスパドリーユは、地中海のリゾートを思わせる軽やかな一足だ。

もともとは暑さをしのぎ、足を守るための簡素な履き物だったサンダルだが、今や海辺のレジャーから街履き、アウトドア、きれいめな装いにまで対応する万能選手へと進化した。構造はシンプルだが、選択肢は奥深い。それこそが、サンダルという定番の面白さなのである。

コンフォートサンダル
コンフォートサンダル
足裏に沿うフットベッドと調整ベルトで、履き心地を優先するもの。
ビーチサンダル
ビーチサンダル
鼻緒を足指で挟み、ゴムや樹脂底が使われる主に水辺用のサンダル。
サボサンダル
サボサンダル
木靴を起源とし、丸みのある甲と厚い底を備えるかかと開放型。
シャワーサンダル
シャワーサンダル
甲を幅広ベルトで覆った最も簡易的な作り。水場での使用が主目的。
ミュール
ミュール
かかとを覆わず、甲のアッパーで足を支えるヒール付きのサンダル。
スポーツサンダル
スポーツサンダル
甲や足首をストラップで固定し、動きやすさに重きを置くサンダル。
エスパドリーユ
エスパドリーユ
ジュートを巻いた底と、布や革の甲を合わせたもの。スペイン発祥。
グルカサンダル
グルカサンダル
編み込み状のアッパーで、つま先から甲全体を覆う。主にレザー製。

Q.ビーチサンダルは日本生まれって本当?

A. 前述のとおり本当だが、考案者は米国人の工業デザイナー、レイ・パスティン氏。彼は戦後の復興政策で来日した際、草履の合理性に衝撃を受けて帰ったという。

これをシンプルにし、クッション性のあるゴムで作ったら米国でも売れると考えた同氏は、ビーチサンダルの原案を持って再来日。内外ゴムの生田庄太郎氏と出会い、二人三脚での開発が始まる。

“ビーサン”生みの親はこのお二人

ビーサン生みの親
当初、草履や下駄メーカーに製作を依頼したパスティン氏は、申し出をことごとく断られる。だが畑違いのゴム会社の技術者だった生田氏は、自身の素材が活躍する予感を抱き快諾。運命の出会いだった。

生田氏は戦時に発明した「独立気泡スポンジゴム」の使用を思い立ち、1952年、試作の末に履き心地柔らかな今日のビーチサンダルが完成した。左右が同じ形ではなく足に沿った形状をしていることも、草履からの大きな改良点といえるだろう。

開発当初“ビーサン”には木型があった

木型
製品第1号は米国人に向けたもの。パスティン氏は足型を研究し、鼻緒部分に切れ込みのあるビーチサンダル専用の木型を製作した。日本の草履とは異なる、靴と同じ左右非対称の構造も彼のアイデアだ。

Q.ビーチサンダルはどうやって普及したの?

A. 1952年に誕生した世界初のビーチサンダル“ビーチウォーク”は、1956年にはハワイで月10万足を売り上げ、大ヒットを記録した。

時は移って1962年。ブラジルの靴メーカーがビーチサンダルの製造に乗り出す。これが現在世界トップシェアを誇るハワイアナスであり、まずブラジルの庶民層へビーチサンダルを広めることとなる。そしてʼ90年代の半ばにファッション方向へ舵を切ったハワイアナスは、2000年代に入ると、ハリウッドを舞台に仰天の戦略へ打って出る。

アカデミー賞ノミネート者に無料で配り、プライベートで履いてもらうことで、メディアへの露出を拡大。とともに一躍、セレブ御用達アイテムのイメージを築いたのだ。現在は世界60か国以上へ進出。文字どおり世界中へビーチサンダルを広めた。

Q.スポーツサンダルはどうやって生まれたの?

A. グランドキャニオンでリバーガイドを務めていたマーク・サッチャー氏は、ビーチサンダルにアンクルストラップを付けることを思いつく。サンダルが脱げ、川に流されてしまう客が多かったのだ。

脱げにくく、また動きやすいそのサンダルこそ、スポーツサンダルの元祖。当初はバンで売り歩いていたが、1984年に“テバ”を立ち上げ本格展開。大成功を収めた。

スポーツサンダル
川を何日もかけて下る米国のラフティングは、旅の要素が色濃い。脱げづらく動きやすい、スポーツサンダルのメリットは多大だった。

 
※表示価格は税込み


[ビギン2026年9月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。

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