焼けつく夏に“昭和の風”を。レトロ扇風機と過ごす贅沢な時間
エモさ満点のジャポニズム傑作を知る[令和に響く昭和のハナシ]
昭和を愛し、昭和暮らしを謳歌する平山 雄による、後世に語り継ぎたい名作語り。今回のテーマは、昭和に姿を消した“あのカゴ”。

昭和ヲタク
平山 雄さん
古物商として働きながら、SNSやブログを通じて昭和をレポート。著書に『昭和ぐらしで令和を生きる』(303BOOKS)など。
焼けつくような暑さの今日も変わらず心を癒やしてくれる
毎日暑い日が続いていますが、夏に欠かせない電化製品といえばエアコンですよね。確か僕が子供の頃に、実家にエアコンが導入されたのは昭和50年代に入った頃だったと思いますが、それ以前のことを思い出すと、よく扇風機だけで夏を過ごしていたなって思います。
まあ、当時の夏は、暑いといっても東京でせいぜい気温32〜33℃くらいだったので、エアコンに今ほどの必需性はなかったと思いますけど。
僕が高度経済成長期の暮らしを再現しながら生活していることは以前にも話しましたが、気温40℃超えをするような現代で、エアコンなしの生活はさすがに無理ですね(笑)。でも、エアコンは暑さに耐え切れない時の最終手段として使う程度で、今でも扇風機をメインに使っています。それは、無理にそうしているわけではなく、エアコンより扇風機の風にあたるほうが好きだからなんです。
そんなわけで、今回は、夏になると毎日のように活用している「東芝の扇風機(TJ型)」を紹介します。じつはこの扇風機、手に入れたのが2度目。最初に買ったものは、何を思ったのか十数年前に手放してしまい、ずっと後悔していたんです。
ですが、2年ほど前に僕が通っている業者市場に偶然流れてきてくれたので、迷わず競り落としました。同じものを手に入れるのは難しいと思っていたので、本当に運が良かったです。
正確な製造時期は不明ですが、デザインや使われている素材からして、おそらく昭和30年代後半頃のものと思われます。この扇風機のどこが好きかといえば、なんといっても風速切り換えスイッチの「バチン!」という押し心地。今時の真っ平らボタンでは味わえない、いかにも機械を操作している感じがたまりません。
レトロ扇風機ならではのスイッチは押すのも楽しい♪
見た目も、ベースの素材が金属で高級感がありますし、スタンドが緩やかにカーブしているところが凄くおしゃれ。幼い頃に実家で使われていたものにもよく似ているので、眺めているだけで癒やされます。
古い扇風機の使用には、ある程度のメンテナンスが必要です。電源を入れても羽根がしっかり回転しなかったり、異音や振動が大きいなどの異常が見られる場合は、発火する危険があるので要注意。そんな時は、モーター部を分解して掃除するようにしています。
内部の構造はシンプルなので、修理は意外と難しくありません。ホコリを取り除いたりグリスアップしたりするだけで、大抵は調子よくなります。機械を分解したり組み立てたりするのも、プラモデル感覚で楽しいです(笑)。
モダンなインテリアに馴染むように、その他の家電と同様、扇風機も色味やデザインがミニマル化の一途。ファンが付いていないタイプも人気ですね。こんな「ザ・扇風機!」なフォルムも、残っていってほしいものです。
※表示価格は税込み
[ビギン2025年10月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。