連載[令和に響く昭和のハナシ]
「録画できるの!?」昭和のビデオテープに詰まった“近未来感”が今見るとエモすぎた
エモさ満点のジャポニズム傑作を知る[令和に響く昭和のハナシ]
昭和を愛し、昭和暮らしを謳歌する平山 雄による、後世に語り継ぎたい名作語り。今回は、誰もが世話になったビデオテープを紹介!

昭和ヲタク
平山 雄さん
古物商として働きながら、SNSやブログを通じて昭和をレポート。著書に『昭和ぐらしで令和を生きる』(303BOOKS)など。
当時の“近未来感”を思わせるパッケージも今では新鮮に映る
実家暮らしだった若い頃の話ですが、我が家にビデオデッキが導入されたのは、確か1982年でした。一般家庭用のビデオデッキは、ザ・ドリフターズの仲本工事氏がCMに出演したことでも知られる「松下電器」(現:パナソニック)の「マックロード」をはじめ、70年代からありましたが、80年代初頭の普及率はまだ10パーセント程度なので、世間的に見れば割と早い導入だったようです。
今回ご紹介するマクセルの ビデオカセット「HGX ゴールド」は、その当時、僕が一番最初に買ったビデオテープ。これを新宿駅前のカメラ店で買った時のことは今でもよく覚えていますが、それが40年以上前のことかと思うと、時が経つ早さにゾッとします。価格は忘れてしまいましたが、当時中学生だった僕にとっては安い買い物ではありませんでした。
さて、こうして改めて見ると、いつのまにかパッケージデザインにもヴィンテージ感が出ています。真っ黒に金縁のトリコロールという配色も、じつに80年代らしい。それに、ビデオテープのケースは、ほとんどがプラスチックだったと思いますが、このケースは素材が厚紙。
ラベルには、僕が当時によく聴いていたセックス・ピストルズやエコー&ザ・バニーメン、ディーヴォ、U2などのバンド名を印字しています。音楽ジャンルがめちゃくちゃですが、この頃は若かったので許してください(笑)。
ついでの話ですが、ラベルの文字は当時の流行りだった「インスタントレタリング」、通称「インレタ」で転写されたもの。シートに並んだ文字をボールペンなどで擦って、一文字ずつシールのように貼っていくのですが、手書きよりも綺麗に見えるので重宝しました。カセットテープのインデックスにも、よく使っていたものです。
「インスタントレタリング」でラベルに印字した文字も懐かしい
やがて2000年代に入るとビデオテープに代わってDVDが普及し、今となっては映像を所有できることが当たり前の時代に。ですが、ビデオデッキを使い始めた当初は、「好きな映像が自分のものになる」「観たいときに観れる」「繰り返して観れる」「一時停止できる」「録画できる」そういったひとつひとつのことが革命に思えました。
現代にインターネットが誕生してからは、ユーチューブなどの動画配信サービスでどんな映像も観れるし、スマホでいつでも動画を撮れるし、ずいぶんと映像の常識も変わりましたね。
このビデオテープは、もはや使い道がありませんが、自分が生きてきた証のひとつとして、これからも捨てずにとっておこうと思います(笑)。
2019年にユネスコが、2025年ごろに磁気テープに保存された情報が失われる危険性を発表。VHSの寿命は長くても30年ほどなので、どうしても失いたくない情報があるなら今すぐデジタルへの変換を!
※表示価格は税込み
[ビギン2025年6月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。