「無地T」に差をつける名作デザインは、ズバリ「顔T」だ!
デザイナー激推し
顔が命のTシャツ
芸能人は歯が命なんて格言?がありますが(懐っ)、服好きにとってはそれより何より、Tシャツ選びは顔が命!……これ、頭に叩き込んどきましょう。やっぱり無難はお洒落の大敵。今年こそ無地T一辺倒からの脱却を!と目論むなら、センスフルなグラフィックTをば。とくにカギになるのは「顔」。デザイナーの趣味嗜好がど直球に反映されるモチーフだし、何よりインパクトは絶大。ってことで、ここでは今季夏コーデの顔役になりそうな顔Tを厳選。各々のデザイナーに愛を込めてリコメンドしていただきました
オーベルジュの「ジェフ・バックリー」Tシャツ
英国の写真家ケヴィン・カミンズ氏が、95年のツアー中にフランス・トゥールーズで撮影した一枚。1万9800円(オーベルジュ)
基本泣き顔のような表情ですがこの目には輝きを感じました
オーベルジュ デザイナー 小林 学さん
「わずか30歳で、事故とも自殺ともハッキリしない形で溺死した、90年代のアメリカを代表するアーティストのひとり。「歌声が基本泣き声で、“この人以上にナイーヴな人間はいない”と思わせる独特の世界観を持っている。彼の歌を聴くと、その謎多き死と相まってヒリヒリした緊張感が漂います。」
「キツいときに聴くと、“彼のほうがキツいわぁ”と思うに至り復活できる、いわば自分にとってのセーフティネット的存在。歌声と同様に、顔も泣き顔の様な表情の写真が多いのですが、今回は少しでもポジティブな印象を受ける、目に輝きのある一枚をセレクトしました」
ジェフ・バックリー「Grace」(1994)
27歳で発表した唯一のオリジナルアルバムは、名だたるメディアが90年代を代表するアルバムのひとつだと絶賛している※編集部私物
レーの「フリーダ・カーロ」Tシャツ
特徴的な自画像(模写)の周囲には、フリーダ氏が寄る辺ない心を詠う“君は愛にふさわしい”の一節をプリント。1万1000円(レー)
時代を超えたセンスと強さ 個性の塊みたいな顔も好きですね
レー デザイナー 三上卓也さん
「20代の頃にパリのルーブル美術館でオリジナルの自画像を初めて見て以来、知らないうちに彼女の思想や生き方に影響を受けているかもしれません」。そう三上さんが惚れ込むのは、服飾業界でも信者の多い、20世紀中頃に活躍したメキシコの女性画家。
「代表作の自画像は、メキシコの色彩が色濃く、オリジナリティーがあり、時代を超えたセンスと強さを持っていると思います。彼女の顔自体も個性の塊で、一度見たら忘れないところも好きです。今作は彼女の自画像をモチーフに、ペインターのaoyaさんに、自らの感性と擦り合わせながら模写していただきました」
フリーダ・カーロ 「折れた背骨」(1944)
交通事故で障害を負って以降、多くの自画像を残したなかでもとくに強烈な名画。かのジャン=ポール・ゴルチエにも影響を与えた。
「インパクト勝負ソース顔」
カルト的人気を誇る名画に登場する若き日の名優の顔
ブラックウィドーの「レポマン」Tシャツ
レーガン政権時代を風刺した映画『レポマン』より、スーパーで働くパンク青年オットーをプリント。1万3200円(ブラックウィドー)
ブラックウィドー デザイナー蒲田めぐむさん
「1984年に公開された、鬼才アレックス・コックス監督による長編デビュー作、『レポマン』。モハベ砂漠で止められた、1964年型シボレー・マリブのトランクを開ける白バイ警官が、閃光とともに蒸発するあの迷シーンが印象的です」。パンクの名曲が数々散りばめられたカルト的人気を誇る名画。今作では俳優兼映画監督としても著名なエミリオ・エステベス扮する主人公オットーの多彩な顔が拝めます。玄人ウケは申し分なし!
[インパクト勝負ソース顔]
公開時のポスターをアレンジしたシルクスクリーンプリント
フラグスタフの「鉄男」Tシャツ
名だたる映像作家がファンを公言する、塚本晋也監督による怪作。その象徴的顔を大胆にプリントした。1万3200円(フラグスタフ)
フラグスタフ デザイナー 村山靖行さん
主人公“男”役の俳優・田口トモロヲが目を見開いた顔があまりに有名な映画、『鉄男』。「ブランドの10周年記念として、邦画との取り組みを模索するなかで、“何も考えたくないな”というときがくるたびに見返していたこの映画を選びました。1989年の公開当時の広告製作物を意識して、あの特徴的なポスターをアレンジし、シルクスクリーンで表現。海外からのリアクションがとくによかったですね」。世界中が知る名画の顔は存在感特大!
[取り入れやすい塩顔]
色使いもタッチもジャズそのもの
マンドの「スティーヴ・デイヴィス」Tシャツ
ジャズトロンボーン界の顔役の名盤。そのジャケットのイラストを配したアートピースは色数も少なく大人な印象。2万900円(マンド)
マンド デザイナー 髙巢満導さん
当代屈指の名手として著名なアメリカのジャズトロンボーン奏者。「今季のテーマをジャズにしようと決めたとき、以前から気になっていたイラストレーターの早乙女道春さんを思い出したんです。彼が手がけたスティーヴ・デイヴィスのアルバム『Portrait in sound』のジャケットが素晴らしく、今作はそれを元に、丸いレコード盤風にプリントしました」。味わい深いタッチやシンプルな色使いで描かれた顔はジャズに通じる抜け感あり♪
[取り入れやすい塩顔]
カリスマアーティストのジャケ写を思いのままにパッチワーク
フィンガリン×ビューティー&ユースの「スタイル・カウンシル」Tシャツ
1983年リリースの「Money-Go-Round」 のレコードに使われた多様なデザインをミックス。1万3200円(エイチ ビューティ&ユース)
フィンガリン デザイナー 小林資幸さん
英国が生んだ稀代のファッションアイコン、ポール・ウェラーが結成した伝説的ポップ・ロックバンド。「『Money-Go-Round』の表ジャケットの本人写真が使用できず、許可された数種の写真から選び直すことになったのですが、これが逆にいい方向に。裏ジャケットの写真を加工して素材として配置したり、シングル自体のカラーリングを反映させたり、思いのままアレンジしています」。顔写真は小さくても、センスをアピールするには十分洒脱!
[取り入れやすい塩顔]
サーフィンを描いた世界初のアニメの象徴的シーンを描写
ポータークラシックの「ディズニー ハワイアン ホリデー」Tシャツ
キャラクターたちがハワイにいるのが分かりやすいシーンを採用した、夏にジャストな一着。2万900円(ポータークラシック 銀座)
ポータークラシック デザイナー 吉田玲雄さん
ウォルトディズニー自身がミッキーの声を担当していた初期作から見返している吉田さん。「今作には1937 年公開の短編映画『DISNEY HAWAIIAN HOLIDAY』のワンシーンを使用。世界で初めてサーフィンを描いたアニメというところに普遍的な価値を感じます。ディズニー社の素晴らしいアートとハワイに敬意を示し、椰子の木やバンブーフレームを描いたのもポイントです」。ハワイでくつろぐミッキーマウスの穏やか〜な顔もSOキュート♡
顔じゃないけど……くぎ付けになるミステリアスT
Tシャツは顔が命!とは言ったものの、マイルドに着こなしたいならフォトTもおすすめ。顔はなくてもデザイナーの顔を拝んでみたくなる!? 語れるフォトTシャツはこれだ!
カイメン
「芳賀日出男」Tシャツ
稲の種籾を握った農民の手は、60年以上にわたり世界中の祭礼を撮り続けた民俗写真家、芳賀日出男氏が撮影したもの。農家の顔が浮かぶほど真に迫るこの写真には、日本古来の文化にもアートにも通じる、不思議な奥行きが。同氏が著し『日本の民俗〜暮らしと生業〜』(角川ソフィア文庫刊)が付属する。1万890円(カイメン)
ブランデット
「菅原 一剛」Tシャツ
「日本の植物界の父」とも称される植物学者・牧野富太郎氏が製作した桜(センダイヨシノ)の標本を、写真家・菅原一剛氏が1億5000万画素のカメラで撮影した、趣深い写真。裏面には牧野氏による、植物に対するリスペクトの念を忘れないようにというメッセージをプリントした、リバーシブル仕様。9680円(ブランデット東京)
※表示価格は税込み
[ビギン2024年8月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。