ええ、“A”? ええ、“A”!?
見まがうアメトラ靴は浅草でまだ進化!
アサトラ -Asakusa TRAD-
海外からの観光客で連日賑わう超人気スポット、浅草。面白いことに外国人が「憧れの日本像」を投影するこの街は、今、「日本人が憧れるアメトラ像」を投影した靴の一大産地に。
結局みんな好きな顔を守りながら独自色を注入
え? 日本に焦点を当てた特集じゃないの!? なんて首を傾げるのも無理はありません。なんたってこの風格ですもん。パッと見じゃあ本場アメトラのA世定番靴と見分けがつきませんよね。でもこの3足はどれも正真正銘のジャパンメイド。それもすべて日本濃度がとくに濃イイ、浅草生まれのブランドが手がけたものなんです。
浅草といえば古くから靴作りが盛んで、腕利きの職人も、各種部材を供給する業者も集結する一大産地。加えてアメリカンファッションの集積地である上野が、目と鼻の先に位置することも相まってか、こうしたトラッド・オブ・トラッドな靴を志向するブランドを育む土壌が整ってるんです。
ただやっぱりあくまでフォーカスすべきは編集力。浅草生まれのアメトラ靴には、日本の服好きが焦がれるトラッド像を守りつつも、独自の色がしっかり注入されてるんです。ここ10年前後の間で創設された上の御三家たちは、そのトップランナー。
超絶技巧で特殊なV字を描いた、コードバンのVチップ。よくあるクローム鞣し×顔料染めではなく、タンニン鞣し×染料染めで仕上げた、オリジナルカーフのペニーローファー。米軍用サービスシューズの木型を、日本人の足向きにモディファイさせた、立体造形のプレーントウ。
どれも遠目にはA級保証のアメトラ靴そのもの。ですがその実どれも日本の匠が利き、美しさや履き心地がブラッシュアップされてる、言わば進化系アメトラ。定番好きだって、何気に今の気分にハマるのはアサトラの方なんじゃない?
名作軍靴の木型を日本人向きにモディファイ
WHEEL ROBE[ウィールローブ]
#15066
トラッドにもラギッドにも装える靴作りが十八番。40年代のUS NAVYサービスシューズの木型をベースに、 日本人仕様にモディファイした木型を使った今作は、トウはワイド→土踏まずはシェイプ→ヒールは小ぶりなアーチ形状と、立体的な作りが自慢。アッパーには厚さ2mm超のホーウィン社製クロムエクセルレザーを使い、堅牢なダブルレザーソールを用いているため、少々の雨ならへっちゃらなのだ♪ 4万8400円(ウィールローブ)
タンニン鞣し×染料染めした育つブラウンカーフ
BROTHERBRIDGE[ブラザーブリッジ]
KELLY
日本人の足に優しいトラッド靴の急先鋒。今作にはオランダ産カーフを姫路のタンナーでタンニン鞣し後に染料染めした、独自レザーを採用。これは革本来の風来を強調しつつ、しっかりと茶色味を出すため、長らく試作を重ねて完成したもの。また日本人の足を研究し、センターラインを内側に定めつつ肉付けして、外側を削った独自ラストを採用。履き心地も◎だからヘビロテして育てたい派向き。5万9400円(ブラザーブリッジ トーキョー)
国内に数台しかない先端裁断マシンでV字に切り込み!?
The Ruttshoes &Co.[ラッドシューズ]
RIDLEY
部材の調達から革の裁断、縫製面まで、ほぼ全工程を浅草の企業とタッグを組む、生粋のアサトラメーカー。その代表作は国内でも数台しかない先端裁断機を使い、革にV字の切れ込みを入れてから手縫いでモックトウを再現した、スプリットVチップ。あらかじめV字状に裁断したパーツを甲に縫い付ける、一般的なVチップと比べて、一枚革で構成できる分、より美しい曲線美に。ホーウィン社のコードバンを採用。ハンドソーンウェルテッド製法。受注生産で納期は約5か月。13万2000円(ラッドシューズ)
※表示価格は税込み
[ビギン2024年5月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。