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エディストリアルストア ライブストック 小沢宏

ここ数年、ファッション業界のキーワードになっている「SDGs」。持続可能な社会を目指して、多くのブランドで急速に意識が高まってきています。環境に配慮した素材の採用や、長~く使えるようにするためのリペアサービスの開始など、その取り組みの内容は実に多種多様……。本連載では「SDSEEDs(エスディーシーズ)」と称して、ファッション業界のサスティナブルの種を紹介していきます!

さて、今回注目したのは、スタイリスト界の重鎮、小沢 宏さんのプロジェクトです。

小沢さんは2022年の春、生まれ育った地元の長野県上田市に「EDISTORIAL STORE(エディストリアルストア)」というお店をオープン。ファッション業界が抱える課題・ジレンマに真っ向から向き合うことで、今までにないセレクトショップを作り出したというのです。これはぜひ一度見てみたい!というわけで、直接お店に伺ってきました。

教えてくれたのは……

エディストリアルストア ライブストック 小沢宏

スタイリスト 小沢 宏さん
1964年生まれ。長野県上田市出身。大学在学中から「POPEYE」の編集アシスタントとしてキャリアを始動し、その後スタイリストとして独立。Beginをはじめとしたファッションメディアで活躍するほか、国内外へのバイイング・ブランドディレクション・自身のブランド運営など活躍は多岐にわたり、まさにファッションシーンを知り尽くす御方。

故郷の上田にて、前代未聞の取り組みをスタート

エディストリアルストア

エディストリアルストアがあるのは、東京駅から新幹線でおよそ1時間半の長野県上田市。真田氏三代の郷としても知られる街です。お店には上田駅から徒歩10分ほどで行くことができます。

「店舗はもともと、地元の名産、胡桃を使ったお菓子屋さん。上田城を訪れるお客さんが、お土産として買って行くことも多かったそうです。ファサードにある『WALNUT(胡桃)』はそのなごり。お店が街に馴染むよう、建物の外観はほぼそのままなんですよ」と話す小沢さん。

お店の建物は、4階建てのビルを一棟借り。1階は小沢さんの奥様が作る、焼き菓子が味わえるカフェ「イージーベイク」。その奥には、東京・恵比寿で奥様が営んでいた、ラッピングとギフト雑貨のお店「ボン カドゥ」が移転して営業しています。2階から4階が、小沢さんのエディストリアルストアのスペースです。

エディストリアルストアは、各階ごとに個性があります。

2階はベーシックなアイテムやアウトドア、ストリートテイストで構成しています。「エンジニアドガーメンツ」をはじめとした人気ブランドのほか、「ケース スタディーズ」などの通好みなブランドも陳列。

3階はモードな服、および時代には早すぎて売れ残ってしまったものがラインナップ。小沢さんが、あえて着こなしの難しそうな服をチョイスし、スタイルサンプルを作って陳列したスタイリングギャラリーにもなっています。プロの手解きを見ると、「こうやって合わせたら着られそう」と、いい刺激をもらえる空間です。

4階はウィメンズフロア。「当初はオフィス兼在庫のストックスペースでしたが、予想以上に女性のお客様も多く、ストック兼ウィメンズフロアとして改めて改装しました」。

どのフロアもアイテムはもちろん、什器まで洒落ていて、何も情報なく入ったら、シンプルに「オシャレなセレクトショップだな~」と思ってしまいそう。ですが驚くことなかれ、並ぶアイテムは基本的にすべて「経年在庫」だったものだというのです!

DEAD STOCKを、LIVE STOCKにする

エディストリアルストア ライブストック 小沢宏

4階の一角には、さまざまなブランドと交渉して集めてきたアイテムがストックされています。これらはすべて小沢さんが1点1点集めたもの。

「扱っている商品のメインは、ブランドが倉庫に眠らせていたものです。スタイリストとして『これはまだまだ価値がある』と思ったものをピックアップしていて。ストーリー性を持たせて新たな命、LIVEを吹き込んでいるから、DEAD STOCK(デッドストック)ではなく『LIVE STOCK(ライブストック)』と呼んでいるんです」

エディストリアルストア ライブストック

各アイテムの値札にはチェックボックスが設けられており、どういった類の経年在庫であったのかがわかるように。「LIVE STOCK」は売れ残った新品。「B GRADE」はB級品で、傷が付いたりちょっとした不具合があった商品。「SAMPLE」はブランドから撮影用などで貸し出されていたサンプル品。「USED」は文字通り、古着や使われたもの。こうして明確化することにも、お客さんやユーザーに対する気配りが感じられますよね。

さらに一番下には「MASH-UP」の文字がありますが、これは小沢さんが独自にひと手間を加えたアイテム。例えば上のTシャツは身頃にアメリカ製のバンダナを加えたもの。バンダナがプリントの版ズレや滲みがあるB級品でしたが、小沢さんは「アメリカのバンダナは、むしろそこがかわいい個性」といい、Tシャツに縫い付けると、カッコいい新鮮なデザインとして新たな価値が! こうしたマッシュアップアイテムも、同店ならではの楽しみなんです。

エディストリアルストア ライブストック

さらに一部の商品には、値札をめくると、雑誌のキャプションのような、小沢さん直筆の商品の紹介文が付属しています。単なる商品説明ではなく、アイテムのストーリー性やユーモアを交えた文章で、読んでいるだけでもおもしろい。ファッション誌の編集をしていた小沢さんらしい思いが感じられ、まさにライブストックなアイテムになっています。

そして嬉しいのが、お値段。全体的にかなり破格の値付けで、取材陣も「えっ、このブランドがこんなに格安で買えるの!?」と驚きました。今まで買ってこなかったようなブランドにもチャレンジしやすくて、いいですね。

エディストリアルストア #残反ショッパープロジェクト

ちなみにエディストリアルストアは、ショッパーを用意していません。もちろんエコな観点からなのですが、代わりに「#残反ショッパープロジェクト」で作られたエコバッグを購入することができます。以前Beginが発起人に取材したエコ循環システム「Loopach(ルーパック)」を搭載したこちらのエコバッグは、小沢さんがマッシュアップの手法で形にしたものです。

「洋服を作るには生地が必要になるわけですが、どうしても裁断や生産数の取り都合上、余る生地、残反が出てしまいます。また、昨今はエコバッグを持つのが当たり前になっていますが、それを作る上でも残反が出てしまう。それもどうなのかなと考えた末に、生まれたプロジェクトでした。ブランドから残反を無償で提供してもらい、これを長野県内のシャツメーカーに持ち込んで、バッグとして再生しています。残反を組み合わせているので、世界に2つとないところも愛着が湧くかなと」

しかもこのショッパー、驚きなのがエディストリアルストアの利益はないということ!

「ショッパーの価格はトートが3300円、ショルダーバッグが4400円。バッグを作るにあたっての経費を合計した金額が、そのまま売価になっています。生地を企業から無料で提供してもらってるのに、僕らが利益を出すって、なんかダサいなと思って(笑)。そのままの原価で販売しています」

こちらのスカーフもエディストリアルストアならではのマッシュアップで生まれたもの。

「2軒隣に廃業したテーラーがあって、そこの娘さんが突然、訪ねて来てくれて。すると『ボタンが余ってるから』と提供してくれたんです。よく見てみると欧米のヴィンテージもあったりして。ウチにはタイ生地を再利用したスカーフがあったんですが、これにこのボタンとボタンホールを付けると、誰でも簡単に首にスカーフを巻くことができる。ボタンを廃棄することなく、スタイリングの面から見ても一挙両得なマッシュアップになったなと思います。実際にとても人気がありますよ」

まさにスタイリストの目利き、腕が活きたアイテムですよね!

予想以上に、多くのブランドがリスペクトしてくれている

エディストリアルストア ライブストック 小沢宏

お店の定休日を利用しては東京に出向き、ブランドや企業にエディストリアルストアの在り方を説明し、アイテム提供の交渉を一人で行っている小沢さん。これだけのラインナップ、クオリティを揃えることってさぞかし大変なのでは……?

「古くから長く関わっている人たちは、とくに前向きに協力してもらっています。中には、絶対無理だろうな……と思っていた人気ブランドさんからOKをもらえたり。ただ会社の事情もあるので、特に大規模な海外ブランドなんかは、なかなか本国の許可が下りません。あくまで形式は二次流通なわけですから、ブランドイメージとしてどうしても難しいという声もありました。でも、頭ごなしにNGだったところはなかったんです。どこのブランドからも、リスペクトを感じましたね」

また、並行輸入品は一切置かず、どれもが正規代理店から提供を受けたアイテム。これはお客さんからしても安心です。

「ラインナップの基準は、基本的に自分が買い物をしたことがある、またはスタイリストとして商品の貸し出しをしてもらったことがあるブランドやショップ。安心感もそうだけど、筋は通さないといけません。スタイリストとしてダサいことはやりたくないですからね。ウチがこうして続けていくことで、いずれ業界としても大きな渦になることもあるでしょうから」

上田を飛び出し、丸の内でもイベント開催!

LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI

小沢さんの活動は上田に留まらず、都市部でのイベントも積極的に開催しています。

5月には渋谷パルコにて「LIVE STOCK MARKET in SHIBUYA(ライブストックマーケット イン シブヤ)」を開催。エディストリアルストアを再現したほか、オンライン古着販売サービスであるZOZOUSEDが、ポップアップストアを出店。レショップの金子恵治さんらがキュレーターとして参加するなど、多彩な仕掛けも好評を博しました。

そして9月14日(木)~18日(日)には丸の内エリアで「LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI(ライブストックマーケット イン マルノウチ)」を開催。こちらも小沢さんが総合プロデューサーを務め、ファッションを軸に、これからの未来にとって欠かすことのできないサスティナビリティに触れられるコンテンツを展開します。

エディストリアルストアが、2大セレクトショップを結びつける

LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI

エディストリアルストアのポップアップストアでは、本イベントのためにセレクトしたライブストックが揃うほか、小沢さんによるコーディネート提案やスタイリング相談も実施します。

さらに注目なのが「BE YOUR REAL(ビー ユア リアル)」。エディストリアルストアのポップアップスペースに小沢さんのディレクションの元、ビームスとユナイテッドアローズのライブストックが揃うという、スーパーセレクトショップが出現します。

「企画名は僕が考えました。全身1ブランドで固める、なんてリアルじゃないでしょ? ビームスとユナイテッドアローズのアイテムをMIXしたコーディネートをするのも普通のこと。そんな当たり前を体現するショップができたらって痛快だな~って、ぜひ実現したかったんですよね。僕は水面下で『猪木対馬場』って言ってました(笑)。ぜひ、もう二度とないかもしれないお店を体験してみてください」

商品搬入の都合上、本記事に具体的な情報は掲載できませんが、小沢さんのお眼鏡に適った両店のライブストックが並ぶ予定。これまた楽しみです!

#残反ショッパープロジェクト、丸の内トートがもらえる!

LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI

#残反ショッパープロジェクトから派生したプレゼントも注目です。

大手町、丸の内、有楽町エリアを起点に、SDGs達成に向けた活動を推進する「大丸有SDGs ACT5」を通じて、丸の内エリアのワーカーから回収したアパレル製品の一部を、アップサイクルして作ったトートバッグを製作。イベント期間中、「LIVE STOCK POP UP」の参加店舗3店舗に来店し、各店で配布しているステッカーを3枚集め、丸ビル1F マルキューブへ持っていくことでもらえます。

靴好き悶絶……ジンターラのモンキーブーツ!

LIVE STOCK MARKET in MARUNOUCHI

前述したように、小沢さんは本イベントのためにライブストックを用意していますが、中にはとんでもない激レア品も。

必見はジンターラのモンキーブーツ。イタリア最高峰のシューメーカー、シルバノ・ラッタンジのモードラインにあたり、2000年代には日本でも洒落者の間で大人気に。モードラインとは趣がだいぶ違う、アメリカのモンキーブーツをイメージしたようなデザインも激レア! しかしソールを見るとラッタンジによく見られる、非常に手間のかかるベンティベーニャ製法。小沢さん曰く「501XXを見つけたくらいに興奮した!」ほど。小沢さんの普段の活動の中で、こんなお宝に巡り会うことが、ごくたま~にあるんだとか。ちなみに価格は定価の半額ほどの11万円。これまたイケてます。

人も街も、マッシュアップしていきたい

エディストリアルストア ライブストック 小沢宏

エディストリアルストアを開店して、およそ1年半。どんなことを小沢さんは感じたのでしょうか。

「先日『小沢さんのやってることは世直しですね』って言われて驚いたんですが、別に正義の旗を振り回しているつもりはなくて(笑)。長年ファッション業界で働いてきて『ちょっとおかしくないか?』と思っていたことを形にしたタイミングが、たまたま社会的な機運と合致しただけなんです。過剰生産に伴う環境への影響とか、ダサいことを隠していく方がダサいなと。正直に課題に向き合って、ファッションらしく軽やかに楽しく、サスティナブルの一助になっていければと思っています」

ぜひ、上田にも来てほしい!

エディストリアルストア ライブストック 小沢宏

そして、ライブストックマーケットのように小沢さんが都市部でイベントを開催するのには、理由があります。

「イベントを楽しんでもらって、上田にも行ってみたいと思ってほしいなと。お店を始める前に、ユナイテッドアローズの栗野さんから『ヨーロッパでは大都市から2時間弱ほどの地方都市に、尖ってておもしろいセレクトショップといいレストランがあるもの』という話を聞きました。上田は東京から新幹線で約1時間半。行こうと思えば行ける距離だし、ヨーロッパの話にも似ている。上田にはすごくいいビストロがあって、東京からお客さんが来たときはそこに連れて行くとすごく喜ばれます。そして、栗野さんが仰るところの尖ったセレクトショップに、ウチもなれればなと。今までになかった新しい価値になると信じています」

日の目を浴びなくなったアイテムを蘇らせるスタイリストの矜持。企業の残反処理費用を浮かせ、長野の地元ファクトリーとWin-Winの関係を構築した#残反ショッパープロジェクトのアイデア。上田と大都市の架け橋になる地域活性化の担い手と、小沢さんはまさにマッシュアップのプロ。上田にいるときは基本的にお店にいるそうなので、値札にある商品説明について、スタイルアップのコツ、地元のおいしいお店まで、いろいろお話を聞いてみてはいかが? きっとまた行きたいと思える体験になるはずですよ!

余談ですが取材班は取材後、「コレがこんな値段で買えるの~! ナニコレ!?」とお買い物を堪能。また来ようと、心に決めたのでした(笑)。

エディストリアルストア
住所:長野県上田市中央2-3-7 KUDOUビル
営業時間:12:00-18:00
定休日:火・水曜日
電話番号:0268-75-8373
Instagram:@edistorial_store
ライブストックマーケット イン マルノウチ
会期:9月14日(木)〜18日(月・祝)
場所:丸ビル1階マルキューブ、丸の内エリア内対象店舗

写真/丸益功益(BOIL) 文/桐田政隆

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