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ビギンが日本全国津々浦々を行脚し、地方ショップの「オリジナル商品」を掘り起こす本企画。僭越ながら今年で創刊36年目を迎えるビギン、もはやどこにでも置いてありそうなセレクトアイテムに興味はございません。各ショップがウンウン悩んで考えた末に生まれる「ナニコレ⁉」なオリジナル商品にこそ、唯一無二の魅力が、ひいてはそのお店の「スピリット」が宿っているのです!

第2回は福岡県福岡市にお店を構える、知る人ぞ知るアメカジの名店・ペーパー。「アメリカに最も近いショップ」を掲げる、アメトラ濃度マシマシな店内に果たしてどんな珍名品が待っているのか⁉ そしてそんな珍名品から紐解く、お店の「スピリット」とは? 直撃取材で聞いてきました!

今回お邪魔したのはココ!

ペーパーがオープンしたのは今から17年前。今年の4月、福岡市街から博多ふ頭にある複合商業施設「ベイサイドプレイス博多」へ移転し、新たな船出を迎えました。ニューヨーク州ブルックリンのライフスタイルを提案する「ブルックリンガーデン」の一角で、本物志向のアメトラ好きが、のんびりと船旅を楽しむように買い物できる空間が準備されています。

というのも、ペーパーに入店するためには通常は予約が必要で、ショップの入り口もかなり分かりづらいんですね。什器に囲まれた店内の様子も、ファミリー層で賑わう「ブルックリンガーデン」のフロアからチラ見えする程度。「本当に場所はココであってんの?」と不安になったら、アラビアンナイトのアリババを見習って、“ビギンニュースの記事を読みました”と店員さんに向かって呪文を唱えてくださいまし。“開けごま”の代わりになって、珍名品の眠る秘境へ特別に案内してもらえます。

店内のラインナップは、アイク ベーハー、ギットマン ヴィンテージ、ニューバランスなど王道アメリカンブランドから、ニューヨークで活躍するアーティストものまで、トラッドな着こなしのアクセントになるアイテムも充実しています。

そんななか、一際存在感を放っているのがポロ ラルフローレン。お店の中にたどり着いたら、ぜひハンガーやディスプレイにもご注目を。一般人では手に入らない年代モノが散りばめられており、その場にいるだけでも心が躍ります。

それもそのはず、ペーパーの歴史を遡ると、元はポロ ラルフローレンやダブルアールエルをメインで取り扱うショップだったんだとか。その時の名残が店内には色濃く残っており、オーナーの山内さんは今も変わらず両者にぞっこん。「ラルフと共に洋服人生を歩んできたと言っても過言ではありません」

くるくるパーマに黒縁メガネがお似合いの山内さん。どことな〜くニューヨーカーっぽい出立ちだと思って尋ねると、向こうにも拠点を持っていて、1年のうち3ヶ月は自由の女神の下で働いているんだそう。そのため、ペーパーに仕入れるアメリカブランドの多くは現地のメーカーからの直輸入。日本の代理店を仲介しないので、アメトラへの偏愛を惜しみなく発揮した“山内セレクト”に、どっぷりハマれるというわけ。

名品FILEその1
ユッタニューマンのサンダル

山内さんのスパイスが効いたペーパーの別注アイテムは、ちょっとクセ強系。ですが、ついついベーシックにまとまりがちな我々のコーディネートに付け足す分にはちょうどいい。ピリッとした良いアクセントになってくれる珍名品ばかりです。

例えばTイチ×短パンコーデに効果テキメンなのが、こちらのユッタニューマンのサンダル。一歩間違うと学生っぽくなってしまうところ、足元にペーパー別注の一足を合わせると急にこなれ見え。……って紹介したのは良いんですが、ユッタニューマンって一体どんなブランドなんだっけ!?

ユッタニューマンのサンダル/¥49,500

「うちの名物別注といえば、コレ!」と山内さんが提案してくれたユッタニューマンは、ニューヨークの通りに工房を構えるサンダルメーカー。1997年に開催された大人気ラグジュアリーブランドのランウェイで、かの有名なモデル、ナオミ・キャンベルが着用して話題に。それをきっかけにブランドの名前は世界のセレブリティに知れ渡るようになりました。

作っているのは、女性レザー職人、ユッタ・ニューマン。ドイツに生まれ、1980年代からニューヨークの工房で修行を積み、1994年に工房兼ショップをイーストビレッジに開店。職人気質の彼女が生み出すサンダルは、ハンドメイドによる堅牢性と無駄のない洗練されたデザインを兼ね備えた一級品です。

特にファッショニスタを驚かせたのが、サンダルらしからぬ快適な履き心地。肉厚ミッドソールは足の土踏まずに沿わせた山なりの形状になっており、体重を足の裏全体でしっかり支えられるため長時間履いていても疲れにくい。おまけにアウトソールはビルケンシュトック製品。つまりアスファルトの上ではツルッと滑ってしまうイメージがあるレザーサンダルですが、こちらはグリップ力も高い!  鋲を打って仕上げられているので、アウトソールの張り替えも可能です。

ペーパー別注のポイントは、パッと目を引く色味のアッパーベルト。通常ユッタニューマンのサンダルに使用されるレザーは、ラティーゴと呼ばれる厚手で頑丈なもの。もともと西部開拓時代のアメリカで馬具に使用されていて、その耐久性は言わずもがな。

「足に馴染むまで2ヶ月くらいかかっちゃって。柔らかくなってきたらマジで気持ちがいいんだけど、はじめの方は足の甲が血だらけになることも(汗)。まさにジャジャ馬のようなサンダルなんです。だから、“もう少し最初から履きやすくしようぜ!”っていうのが別注のテーマになりました」

ペーパー版ユッタニューマンは、アッパーを柔らかくてフィットしやすいレザーに切り替え、ビギナーでも挑戦しやすい仕様に変更されています。毎回のオーダーごとにレザーの色も変えているそうで、最新色は目が冴えるようなブラッドオレンジ。ソールのシルエットもU字型からスクエア型に変えています。

「ベーシックカラーばかりのインラインには絶対ない! 今時期はもちろん、オレンジなら秋まで活躍してくれますよ〜♪」

ラティーゴレザーの変更にしろ、派手色の採用にしろ、やりたい放題の別注を敢行する山内さん。デザイナーが製作も務めるブランドでは嫌われちゃいそうな予感もしなくはないですが……そんな心配は全くのお門違い!!

何を隠そう、山内さんはユッタニューマンを日本に持ち込んだ張本人なんですね。現在は日本の代理店のような立場でブランドとセレクトショップをつないでいます。ブランドのアイデンティティを保ちながら、思い切ったアイデアを依頼できるのはそのため。人被りを避けられるし特別感があって、ファッション好きとしては嬉しい限り♪

「初めての出会いは20年前くらい。ニューヨークの街を歩いていたら、たまたま工房を見つけたんです。ブランドのことを知っていたので、興味本位でお店に入ってみると、やっぱりカッコいい! 日本にどうにかして持ち込めないか悩んだ末、店に通い詰めるというアナログな手法で彼女を口説き落としました。職人気質な方なので、結構、時間はかかった(笑)」

こだわりを詰め込んだ別注サンダルですが、新色の販売数は例年に比べるとイマイチなんだとか。どの程度の売上なのかはさておいて、確かにコーディネートに組み込むのがやや難しそう。そこで山内さんに秋を意識したおすすめの着こなしを教えてもらいました!

攻めのオレンジで新鮮見え

アイク ベーハーのシャツ/¥22,000、バリーブリッケンのチノパン/¥22,000

ラルフのOEMを請け負っていたことでも知られるアイクベーハーのシャツに、知る人ぞ知るアメリカ発トラウザーメーカーのバリーブリッケンからチノパンをピックアップした、王道のアメトラスタイル。ブランド背景を知るとめちゃくちゃ語れる組み合わせですが、パッと見はフツーでマンネリ感は否めません。

そこで登場するのが、別注サンダル。パンツのベージュとオレンジは同系色なのでなじみますし、シャツのストライプが爽やかさをプラスしてくれるため上品さも演出。サンダルが主役を担ってくれるのでメリハリがつき、コーディネートもパッと華やかになります。

カラーものを合わせるときは、他はシンプルな方がいい。チノパンは誰もが一本は持っているアイテムですし、仕上げはオレンジのユッタニューマンにお任せあれ。デニムや軍パンとも相性がいいですよ!

名品FILEその2
KRUNK STOOL(クランクスツール)のスツール

ペーパーではアパレル以外にインテリアも取扱中。ウェアと同じく、どこなくアメリカンな印象のものが多め。自分がお洒落になるついでに部屋のお洒落にも気が回り、ついつい時間を忘れて店内を物色できます。

ガルトのクランクスツール/¥18,700

こちらは、佐賀県を拠点にデザインから製造まで行う家具メーカー、ガルトのスツール。アイデアマンとして山内さんが企画から携わり、アイアンレッグの金型を作るところから制作を開始。実はお店のスペースを確保するためにも役立っている、アイアン製の什器もガルトにお願いして作ってもらったものなんだそう。

特徴的なのは座面の風合い。端材や古材を再利用しているため環境にも優しいし、それゆえ一点一点表情も違います。ペンキが散っていたり、木目の出方が違ったり。世界に一つだけのスペシャルな一脚は、使い続けることで味わいもどんどん増していきます。

また、こだわりのレッグにもご注目を。丸い座面とは対照的にシェイプは直線的。鈍く光るアイアン素材も相まって、ブルックリンのインダストリアルな雰囲気がムンムン。支柱部に備えられたハンドルを回転させると座面の高さを調整できるため、机の高さを気にせず幅広い使用シーンにマッチします。

「洋服に比べて詳しくはないけど、インテリアも結構好きなんです。これを企画した時のイメージは、アメリカのガレージで日常的に使われているようなスツール。どしっとした重さがあった安定感もバツグンですよ」

まだまだあるぞ!逆張りオタクの激レア珍別注

引き続き店内でアメカジ談義に花を咲かせていると、山内さんも本気モード突入。コレもアレもと次から次に別注商品を紹介してくれて、しかも全てインラインではゲットできないような個性派揃い。山内さんの知識量も凄まじく、ビギンもパンク寸前に(笑)。泣く泣く厳選した2ブランドをご紹介するので、一緒にチェックしていきましょう♪

エベッツフィールドフランネルズ ×ペーパーのBB キャップ/ ¥8,030

一番バッターは、1988年にワシントン州シアトルで創業したエベッツフィールドフランネルズ。ベースボールキャップの老舗として知られるブランドに、ペーパーはツバ部分をレザーに変えてアレンジ。名だたるセレクトショップでも別注品は出ていますが、レザー素材での切り替えは数年前から受付を中止しており、ペーパーでも追加オーダーは難しいとのこと。背面には通常のラインナップには付かないアジャスターも備えているので、フィット感の調整も可能です。これからの季節にもちょうどいいですし、アメカジ好きの心にどストライクでしょ!?

昨年、惜しまれつつ廃業してしまったアメリカ生まれの本格靴の雄・ラッセルモカシンの別注作も! 木こりたちのためにシューズを作ったのが歴史の始まりで、創業から120年以上、熟練の職人によるハンドメイド製法を守り抜き、世界中のアメカジファンを魅了してきました。多くを語らずとも、ペーパーに残された別注品が超希少であることは、すでにお分かりいただけているはず!

店内で直ぐに試足できるのは、ブランドの定番ブーツタイプのノックアバウト、歩きやすさに定評のあるカントリーオックスフォード、渋カジ世代の心をくすぐるオネイダの3型。ブランドお得意の耐久性に優れるモカシン製法はそのままに、アッパーの素材やカラー選びでペーパーらしさを注入♡ ソールは全てヴィブラム社製で、全部で20種類ある選択肢の中からモデルの個性に合わせて山内さんがチョイス。ブランドの伝統をしっかり残しながら、大人の遊び心を加える。古参ファンも納得の出来栄えです。

「聞くところによると、コロナ禍の影響で廃業に追い込まれたみたいで。腕の立つ職人を全員解雇しちゃったらしいんですね。ペーパーの定番別注として、ラッセルモカシンはずっと人気だった分、正直に言って寂しいです。手に入れておくなら、今のうち!」

好きなムードを紹介したいだけ。別注品ならそれが叶う!

ここまで紹介してきただけでも、ペーパー別注のラインナップが他店では絶対に見つからない「ナニコレ!?」な珍名品であることはお分かりいただけるはず。でもレア&クセ強なアイテムって、もしかして万人ウケはしないのかも!? モノ好きのビギン的には、そこに惹かれてしまうのですが……実際のところどうなんでしょう。教えて、山内さん!

「ブランドの味を活かしながら、好みのエッセンスを加えていくのが別注の醍醐味だと思っています。トレンドに流されて同じようなものを作るんじゃなくて、絶対に人と被らないような逆張りを楽しみたい。だから、売上や販売数に一喜一憂するような感覚になくて。僕のセンスを面白がってくれる人に届けられたら十分。とはいえ、やめちゃったブランドもいっぱいあるんですけどね(笑)」

山内さんは90年代に巻き起こった渋カジブーム世代。当時のムードを好きなだけ盛り込んだ別注品だからこそ、同じ時代を過ごしたビギン世代の心にもヒットすることは請け合いです。

「そもそも、ただ単に服が好きというより、アメリカそのものが好きなんです。質の良いジャケットやシャツも、メイド・イン・USAっていうタグが付いているだけで、ちょっとカジュアルになる気がして。そういうところが魅力だし、これは僕ら世代の人には共感してくれるんじゃないかな。最近は楽な格好も多くなりましたが、やっぱりたまには着たくなる。別注アイテムに関しては、そんな僕のエゴがダダ漏れ。完全に自己満の世界(笑)。お店も広くなくてよくって、狭くても好きなものを取り揃えておきたい。友人にお気に入りを紹介するような感覚で営業を続けていくのが理想かなぁ」

PAPER

住所:〒812-0021 福岡県福岡市築港本町13-6 1F ベイサイドプレイス ブルックリンガーデン

電話: 092-516-4990

営業時間:13:00-20:00 定休日:水曜日


写真/椿原大樹 文/妹尾龍都 編集/鍵本大河(Begin News)

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