特集・連載
フリースの殿堂・パタゴニア「6種もあるの?」お毛並み拝見!
超アウターブランド大研究 最先端スペックを搭載した超機能派から一生着られる永久不滅の超クラシック、思わず値札二度見の超コスパな一着まで、“超”一流のアウターばかりを100ブランドから厳選して徹底研究。これさえあれば、もうアウター選びで悩まない、疲れない、オロオロしない。なんせ物価高でイヤになっちゃうよ……な冬ですからね、一番大事なアウター選びは絶対に失敗させません! この記事は特集・連載「超アウターブランド大研究」#09です。
フリースのアウター使いが正攻法となった今、当然気になるのが始祖たるパタゴニアです。……が、パタのフリースって種類が多すぎて、正直どれを選ぶか迷うんですよねぇ(悩)。ってことで、そのすべてを知り尽くすプロに、代表6種の特徴を直撃取材しちゃいました。
©Uli Wiesmeier
フリース6種類の違いを担当部門のトップに取材!
パタゴニア マーチャンダイジング部 ライフスタイル・スポーツウェア担当 細野さん。米国の大学で繊維学を専攻。卒業後は生地メーカーなどで勤務した後、2015年に入社。フリース製品を熟知するエキスパートだ。
フリースがカテゴライズされる「ライフスタイル部門」のトップに突撃! 「ひと口に“フリース”といっても種類は多数。特徴をわかりやすく解説します」(細野さん)
②[レトロX]モコモコ系フリースのド定番。保温性&防風性も高い!
③[ベター・セーター]じつは世界で一番売れてる。キレイめな印象でオン使いも
④[ロス・ガトス]触り心地自慢の長~い毛足、もっとも愛らしい印象♡
⑤[マイクロD]言わばシンチラのライト版。かさばらず、畳んで携行も◎
⑥[シアーリング]見た目のモコモコに反し、じつは伸縮性ありで快適♪
初っ端は2強の一角、シンチラから。
①シンチラ
「端的に言うなら“ザ・ベーシック”。暖かくて濡れてもすぐ乾いてくれるし、柔らかくて肌触りもよく、毛玉も生じにくい。1985年当時、最先端ギアとして登場すると大ヒットしました。」
「“フリース”とは本来羊毛で作った生地の呼称なのですが、シンチラの登場も契機となって、いつしか同じような特性を持つ生地のことも“フリース”と呼ぶように。そういう意味では、現在主流になっているフリースのオリジンとも言える存在かもしれません」。
なるほど、語れる背景を愛すモノ好きにとってやっぱりシンチラは偉大! ですがそれに比肩する定番力を秘めているのが、2強の片割れレトロXです。
②レトロX
「登山時にまだ天然素材の衣類だけを着ていた70年代に、創業者イヴォンは北大西洋の漁師が着ている化繊のパイルセーターに着目。ポリエステル生地のウェアを作るアイデアを思い立ち、パイルジャケットを開発しました。」
「レトロXはその後継にあたる、表地が起毛した、いわゆるモコモコ系フリースのド定番。名前の通りクラシックな雰囲気が特徴ですが、保温&防風性の高さも魅力です。」
「今季は6ミリ厚のポリエステル製パイル・フリース素材に、お馴染みの防風メンブレンを完備。暖冬が叫ばれる現在なら、アウターとしても十分活躍してくれるはずです」。
日本ではこの2作が人気製品。ですが驚いたことに、世界で最も売れているのは、ベター・セーターなんだそう!
③ベター・セーター
「名前の由来はズバリ、セーターよりベターだから(笑)。ニットのように品があるのにフリースだから扱いやすい。個人的にはパタゴニアのフリースの中で最もキレイめな印象です。」
「リサイクル・ポリエステル100%ながら風合いはウールライク。なのにチクチクしないしガシガシ洗える。オンにもオフにも使える汎用性がうけて、世界の人気ナンバー1に君臨しています」。
ただ日本での人気にフォーカスすると、ここ数年頭角を現し、新定番の座に君臨しているのがロス・ガトスです。
④ロス・ガトス
「スペイン語で“猫たち”を表す名前通り、長〜い毛足が特徴です。その分肌触りのよさはピカイチ。テクニカル分野にR2という定番フリースがあるんですが、これはそのライフスタイル版という印象ですね。」
「軽くてゴワゴワしないので、秋や春はアウターとして、冬場は中間着として適任。毛足と同様長〜い期間活躍してくれることを考えるとコスパも相当優秀だと思います」。
同じくアウター&インナーの兼用力をウリにしているのが、マイクロD。
⑤マイクロD
「言わばシンチラのライト版。凄く柔らかいのに適度なハリ感もある。数あるフリースの中でも随一の汎用性を誇っていると思います。」
「4.7オンスと軽量で、嵩張らずレイヤードしやすい。コンパクトに畳めて持ち運びしやすいけれど、保温性も高くて、コアな山じゃなければアクティビティにも使える。着用する時季の長さも魅力です」。
トリはフリース賢人の細野さんをして、最も好みだというシアーリング。
⑥シアーリング
「今日も……というかかなりの頻度で着ています(笑)。魅力は肩肘張らずラフに着回せること。リサイクル・ポリエステル100%のマイクロパイル・フリース生地なんですが、個人的にはもはやスウェットだなと。それぐらい着ていてラクチン。」
「モコモコに見えますが、裏地はジャージーのように伸縮性があってゴワゴワしない。ロス・ガトスと同じように活躍してくれる時季が長い便利品だと思います」
①フリースの元祖としてリスペクトされる不朽の名品
【シンチラ】
ともに毛玉防止加工を施した8オンス・リサイクル・ポリエステル100%の両面起毛フリースを使用。多彩な顔ぶれが揃うシンチラファミリーにあっても、スナップTは誕生時から展開されている永世定番だ。実はパンツもあるってことも覚えとくべし。各1万6500円。
シーズン限定の個性的な色柄もソソる~♪
看板フリースのシンチラは1985年に誕生。軽くて暖かくて柔らかくて速乾性に優れる……な〜んていいことずくめで、すでに完成の域に達していたにもかかわらず、1993年にはリサイクル・ポリエステル生地へと変更。環境保護の必要性をいち早く喚起していた。
②シンチラの起源にもなった名作パイルジャケットの後継機
【レトロX】
ポリエステル製の6ミリ厚パイル・フリースの裏地に、防風性バリヤーを採用した、ど定番ギア。風がビュービュー吹きすさんでも、体の芯を暖かく保ってくれる、フィールド不問のオールラウンダーだ。2万2000円。
③米国ではビズネスシーンに活用する信者も多数
【ベター・セーター】
“BRING テクノロジー™”という特殊技法を用いることで端切れを再生させた、10オンス・リサイクル・ポリエステルを使用。ウールで編み立てたニットのように品行方正な佇まいで、仕事の場面でも寵愛される。3万3000円。
④猫のように長~い毛並みが悶絶確定♡の新定番
【ロス・ガトス】
とことんソフトな肌触りを追求した、リサイクル・ポリエステル100%のハイパイル・フリース。保温性と吸湿発散性にも優れるので、インナー使いすれば蒸れることなく、一段上のヌクヌク感が味わえる。1万9250円。
⑤軽さと着回し力に秀でた隠れ名品は山街兼用派に人気
【マイクロD】
フットワークの軽さに定評のあるマイクロDを使いつつ、衿の外側等に名作フーディニに使われるリサイクル・ナイロンを配して耐風性を強化した「メンズ・マイクロディニ・1/2ジップ・プルオーバー」。1万7600円。
⑥顔つきは王道フリースなのにスウェットばりにストレス知らず
【シアーリング】
ジャージーの裏打ちを備えた、厚手の10.3オンス・リサイクル・ポリエステル100%フリース。起毛感のあるフリース然とした見た目に反して、スウェットばりにストレスフリーな着用感は、ヤミツキ必至♡ 2万5300円。
言わずと知れたキング・オブ・フリース!
patagonia[パタゴニア]
Since 1973 アメリカ
便座カバーに使われていた化繊生地を、山用のウェアに改良&転用するアイデアを発案し、今日の“フリース”の礎を築き上げた、世界一リスペクトされるアウトドアブランド。エコ分野のリーディングカンパニーとしても著名だが、単純に全ギアがカッコいいんですわ。
※表示価格は税込み
[ビギン2023年1月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。