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ダウン・セーターの初登場は1989年。ですが最初期のそれはモッコモコの極厚仕様で、現在のような“薄くて軽くて暖かい♪”をモットーに生まれ変わったのは、2004年のこと。以来同社のダウン部門のトップランナーをひた走りながら、折りを見てはアップデートが繰り返され、いつしかすっかりパタの冬の風物詩と化しました。……が、パッと見じゃわかりにくいけど、今季の変貌ぶりは、そんな変革続きの同作にあっても過去イチとの噂が! いざ、その真相に迫ります! (上)ダウン・セーター・フーディ/4万1800円。(下)ダウン・セーター/3万5200円。

【アップデート①】
すべての生地が漁網を100%リサイクルした
ネットプラスに変わった~!!!

1972年生まれ。米国の大学を卒業後、名だたるスポーツ・アウトドアギアメーカーに勤め、幅広い職種を歴任。モノ作りの川上から川下まで知り尽くした後、2011年にパタゴニアに入社。主にテクニカル部門の製品担当として、米国本社と密に連携し、正確な製品情報を日本サイドと共有する架け橋になっているほか、新製品のテストサンプルのフィードバックなども行なっている。スプリットボードを溺愛するバックカントリースノーボーダーとしての顔も持つ、リアルガチなアウトドアマン!

ということで早速ダウン・セーターの何がどうアップデートされたのか、日本で一番熟知してるといっても過言ではない、片桐さんを直撃!
すると、「まず絶対触れておかなければならないのが生地を“ネットプラス”に変えたこと。これはダウン・セーター史上最大の進化ポイントです」との明朗アンサーが。なるほど、今年の夏にバギーズ・ショーツにも採用されて話題にのぼったアレですね! でもぶっちゃけ何が凄いのか、イマイチわかってないから、改めて教えてもらっていーですか!?
「ネットプラスとは、海洋プラスチック汚染の原因である漁網を用いた100%ポストコンシューマーのリサイクル素材です。パタゴニアの本社と同じ、米国カリフォルニア州ベンチュラにあり、南米を拠点に漁網のリサイクルを手がける会社“ブレオ”とともに創り上げました」。

生み出したのは横乗りイケメンたち

ブレオ社の創業は2013年。スケートとサーフィンをこよなく愛する横乗りイケメンたちが、破棄された漁網が海洋プラスチック汚染の主原因であると知り、愛する海を守るべく一念発起。海に捨て去られる運命だった漁網を回収し、新たな製品材料にリボーンさせる事業をスタートし、手始めにスケートボードを作って販売していました。
すると翌2014年、同じ海を愛するモノとしてこれはサポートせねば!と、自然保護などのスタートアップ企業に投資するパタゴニアのファンド“ティンシェッド・ベンチャーズ”が出資。ともに歩を進めることとなったんだそうな。

南米(チリ、アルゼンチン、ペルー)の50以上の漁業共同体と提携を結び、廃棄された漁網を集めて洗浄し分類。その後それらを原料に100%リサイクル・ナイロン糸を製作し、“ネットプラス”を織り上げています。当初はパタゴニアの帽子のツバなどにだけ採用していましたが、徐々に適用する製品の割合も増え、今年の夏ついに定番のバギーズ・ショーツにも使われることになりました」。

大いに話題を呼んだバギーズ・ショーツのネットプラス化。ガッチガチに硬いイメージの漁網をリサイクルした素材を、ホントに使ってるの〜!?と疑っちゃうくらい、しなやか〜♡で軽やか♪ あまりに機能的なもんだから、往年のバギーズ好きもこの進化を大歓迎してました。

単に環境負荷の少ない素材だからという理由だけでネットプラスを採用したわけではありません。機能面でもブラッシュアップできるからこそ、素材の見直しに踏み切ったのです。現に以前の素材より耐久性が増しているというデータも存在します。環境保護への貢献度と機能、この双方を底上げできるのが、ネットプラスの真価なのです」。
なるほど、たしかにこれはダウン・セーター史に残る大改革となりそうじゃありませんか!


上をご覧の通り、現在のコンセプトとなった2004年以来、ダウン・セーターは幾度も改良されてきました。まさにエコにも機能にも妥協しないパタゴニア魂の象徴。各時代の“最良”を取り込み続ける、まさに進化する定番なんです。

【アップデート②】
すべての生地がネットプラスに変わっただけじゃない!
チェックすべき3つの進化

「ただもちろんネットプラスに変えたことだけがリニューアルポイントではありません」と、熱〜く補足説明してくれた片桐さん。
「フィット感や保温力の向上を狙って、パターンもイチから見直してるのです」。え? ダウン・セーターって超ベーシック顔だから、ぶっちゃけ従来モデルとの違いがわからないんですが……。「ではわかりやすい部分をお見せしましょう。身頃の両脇を見てみてください。従来は両サイド部分をシンプルに縫い合わせていましたが、今季からはマチのようなパーツを追加しています。これによってより立体的になり、身体に密着して包み込むようになフィッティングに。コールドスポットを減少させることに繋げていますし、運動性も向上しているはずです」。

いやはや、言われればたしかに立体シルエットに設計されてる! これはより風が侵入しにくくなって、冬場もヌクヌク♪に繋がりそうじゃありませんか。
「とはいえ、ただパターンを見直しているだけじゃなく、純粋にダウン量も増加しているのもポイント。ダウン・セーターには800フィルパワーのRDSダウンが採用されています。これは“Responsible Down Standard(レスポンシブル ダウン スタンダード)”の認証を取得した、言わば水鳥に配慮した方法で育てられたダウンのこと。これを従来モデルより約26%増量しているのも、保温性アップに大いに貢献しています」。

むむむ、いよいよもうどこにもツッコミどころのない完璧なダウンに生まれ変わりましたね!……と感嘆の声が漏れそうになった矢先、「ただこれだけギアとしての性能を高めても、まだまだ不十分な点はあります」と、さらなる追い討ちが。なんですと! さすがに自らに厳しすぎやありませんか!?
「それは“長く愛用できるようにフォローする”ということ。そのために今季からリペアパッチも付属させました」。うお! トラウトを模ったパッチが! 「アクティビティなどで着用し続けると、生地が損傷してしまうことも稀にあります。そんな時これを使えば、誰でも手軽に傷を塞げる。傷の代わりにユニークなパッチが勲章となって、愛着も湧く。そうすれば無駄な消費もなくなりますし、結果として環境保護にも繋がると思うのです」。

【アップデート③】
リペア目線で改良された
目に見えない重要ポイントとは?

ネットプラスの採用やパターンの一新、RDSダウンの増量やリペアパッチの付属……。ダウン・セーターのどこが新しくなったのか、もう十分すぎるほど解説いただきましたが、実は最もグッときたのが、そうしたメディア受けしそうなスペックアップの数々じゃなく、“リペア前提で作り方自体の見直しも図っている”ってとこ。ここにこそ、パタゴニアが最も大事にしているモノ作りの製品が垣間見える気がします。
「ダウン・セーターは、秋冬シーズンで最も販売数の多い製品のひとつ。ということは当然、修理を必要とされるお客様も多いということです。実際鎌倉にあるリペアセンターには、リペアパッチなどでは対処しきれなくなった、相当数の修理品が送られてきます」。その修理要因を、リペア職人たちにヒヤリングしたところ、最も多かったのが、やはりフロントジッパーの故障だったそう。

「長く使っていると、どうしても故障しがちな部分。ですが、実はダウン製品のジッパーを修理するのは至難の技。一度ステッチを切って、新たなジッパーを取り付け、再度縫い合わせるという工程が必要になるのですが、その際にダウンが飛び出ないよう、慎重に押さえ続けておかなければならない。これは熟練の職人技が必要になりますし、単純に時間もかかる。そこで数年前から、私から米国本社の製品開発チームに、“あらかじめリペアしやすいように作ってください”とリクエストし続けていたのです。すると今季リニューアルされたタイミングで、作り方が一新。ジッパーを縫い止めるステッチがダウンパックに干渉しないように設計されたことで、格段にリペアしやすくなりました。私の声が届いた結果なのかどうかは定かではありませんが、いずれにしろよりダウン・セーターを一生モノたらしめる、素晴らしい改良点だと思います」。

2022年秋冬。生まれ変わったダウン・セーターのタグには、“Patagonia”の文字の側に“netplus”という文字も鎮座しています。ビギンをはじめ、あらゆるメディアが、このあまりに革新的な進化にフォーカスしてますが、実は固有名詞がつけられず、パッと見じゃわからない、この隠された改善点こそが、パタゴニアのモノ作りの表れなんじゃないでしょうか。片桐さんは言います。
「ダウン・セーターの魅力はデイリーユースにも、アウトドアアクティビティにも、さまざまなシーンで着用できること。同じような用途の製品はたくさんありますが、このアイテムは、そのなかの“ノース・スター”であることを目指しています。万能で着用頻度の高い製品だからこそ、摩耗しやすい。品質改善だけではなく、直して愛用し続けられるよう、これからもまた改良が加えられていくはずです」。


パタゴニア 東京・渋谷/あらゆるラインの製品が集う直営店にして、パタゴニア好きの聖地!住:東京都渋谷区神宮前6-16-8 営:12:00~19:00 休:第三水曜 ☎︎ 03-5469-2100

問い合わせ先/パタゴニア日本支社 カスタマーサービス☎0800-8887-447
写真/上野 敦(プルミエジュアン) 松島星太 文/黒澤正人 編集/増井友則(Begin NEWS)

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