特集・連載
なんだかんだレトロな顔に惹かれるのはなぜだろう……
スニーカー 新・レトロ主義 コレクターや転バイヤーによる争奪戦が勃発! ネットフリマではショーゲキの高値で落札!? 著名人やハイブランドのコラボなど、スニーカー界のトレンドはプレミアものしか勝たん!状態なようで。もちろん、それが悪いとは言わないけど、前衛的なデザインはちょっと扱いづらいし、投機目的で買うのはロマンがないよなぁ、な〜んて思ったり。そこで、ビギンは誰もが安心して履ける"レトロ"に注目! だってスニーカーって毎日の歩みを支えてくれるものだし、何十年と愛され続ける定番やどこか懐かしい顔のスニーカーが、結局我らベーシック好きのワードローブには一番しっくりくるでしょ? え、レトロって古くさく見えない?的な心配も不要。たとえばレトロな要素をMIXしてモダンな顔つきにアップデートしたり、ソールだけ最新のエアに替えてみたり……。程よく"今っぽい"エッセンスが加えられた「新・レトロ」を選びの基準にすれば、時代も年齢も関係なくず〜っとカッコイイ♪ってわけで、ドドンっといっちゃいましょ! この記事は特集・連載「スニーカー 新・レトロ主義」#15です。
80sレトロの通り人―大淵 毅さん談
いま80年代テイストなファッションが若い人の間で注目されているみたいですね。スニーカーも80年代のポップなカラーを復活させたようなモデルなどが人気とか。
リアルにその時代の若者だった身からすると、こそばゆい気がしないでもないですが(笑)、若い世代がそういうレトロなものに惹かれる気持ち、なんとなくわかります。
ポストオーバーオールズ デザイナー 大淵 毅さん
1962年生まれ。25歳で渡米し、NYの服飾州立大学に通いながら古着ディーラーとして活躍。93年にNYでブランドを立ち上げる。
当時のボクがどんなスニーカーを履いていたかというと、古着好きだったこともあり、古臭いデザインのものばかり選んでいました。
アディダスだったらタバコやスタン・スミス、ロッド・レーバー、コンバースだったらヴィンテージのジャック・パーセルやオールスター、ワンスター、スキッド・グリップあたりかな。
当時の思い出の靴
80年代に履いていたコンバースのワンスターとスキッド・グリップ。ともに米国にてデッドストック状態で購入した。こういうのを大量に発掘しては学費に充てていたそう。
80年代にも、そんなふうに当時の目から見てレトロなものに価値を見出す者が一定数いたわけです。ボクもそうでしたが、アメリカから“デッドストック”を探してくる業者やお店もその頃に出てきました。
80年代はいわゆるハイテクスニーカーの出始めの頃だと思うのですが、最初のうち、まわりにあの手をファッションとして履いてる人はいなかったな。ボクは87年、25歳のときに渡米しましたが、向こうでもそんな感じでした。ボク自身も全然お洒落だと思わなかった。
ただあるとき、吉田克幸さん(現・ポータークラシック会長)の着こなしを見て考えを改めました。NYで友人のフリーマーケットを手伝っていたら、彼がふらっと現れたんです。
当時現行のネービーのM-65とヴィンテージのジーンズに、エアマックス1をサラリと合わせていて、その斬新さに痺れました。これってアリなんだ、と。しばらくしたら、東京でもヴィンテージとハイテクスニーカーを合わせることが普通になっていた。
渦中にいるときは気づきませんでしたが、80年代は古着好きにとってもいろいろ刺激的な時代だったんですね。世間的なトレンドも、サーファー〜イタリアンカジュアル〜デザイナーズ〜アメカジとめまぐるしく移り変わった。だから若い人にとっては掘り起こし甲斐があるのかも。ビッグシルエットやカラフルな色使いなど、今のトレンドとリンクする部分も多いですし。
こういうふうにファッションが輪廻すると、当時マス過ぎて手を出せなかったものが、時を経て気になるものに変わったりもする。ケミカルウォッシュのデニムとかまさにそうですよね。当時は見向きもしなかったのに今見るとおもしろいし、若い人には新鮮に映るでしょうね。
80年代にへそ曲がりな服好きたちがスルーしていたスニーカーも、ひょっとして今後は気になる存在になるのかもしれません(笑)。
[ビギン2022年7月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。