1995~1990年代後半:ハイテクスニーカーブーム
ストリートのレジェンドが語る。’90年代ハイテクスニーカーブームの裏側
左/下野さん 右/国井さん
当時のハイテクスニーカーブームをリアルタイムで駆け抜けた、シーンのレジェンドである国井さんと下野さん。今だから話せるブームの裏側、教えてくださ~い!
ミタスニーカーズ クリエイティブ・ディレクター
国井栄之さん
1996年のハイテクスニーカーブーム黎明期に、ミタスニーカーズに入社。ちょうど発売されたオールブラック&レザー製のエアマックス95、エアトータルマックスも思い出深いとか。
WHIZLIMITED デザイナー
下野宏明さん
2000年にスタートしたファッションブランド、ウィズリミテッドのデザイナーで、ストリートに傾倒した大人にとっては馴染みの存在。エアマックス95よりもポンプフューリー派。
’90sハイテク・サイド・ストーリー
1995年発売 ナイキのエアマックス95
下野さん(以下、下野) リアルタイムな話だと、国井くんはエアマックス95を普通に買えてたよね?
国井さん(以下、国井) そうですね。最初の一足はタウンユースとしてではなく、トレーニングシューズとしてスポーツショップで購入したんですよね。下野くんは履いてました?
下野 僕は当時、ワールドスポーツプラザで働いていて、ナイキのスニーカーも扱っていたから、エアマックス95は10足くらい持ってたよ。
国井 周りも履いてました?
下野 僕の感覚だと95を最初に履いたのって、裏原周りの人たちだった気がする。次にスタイリストやエディターなどファッション業界人が注目し始めて、それから芸能人が履いて人気爆発みたいな。
国井 たしかにそうでしたね。
冬にN-3B×ショーツで、エアマックス95を履いてた人もいたね(下野さん)
下野 あと昔は冬でも短パンな人が多くて。裏原やハードコア好きが迷彩のショーツに95を履いてたイメージあるな~。あとN-3Bとショーツに95とか。
国井 ニューヨークハードコアやストレート・エッジなどのカルチャーに影響を受けたスタイルも多かったですよね。
下野 アメカジ好きで履いてる人もいたし、ダンサーがナイロンパンツに95を合わせたりね。今思えばジャンルは違うのにみんな95を履いていて、それもまた人気の証だったのかも。世界的にはどうだったの?
国井 いや、じつは当時の日本だけで起きた事象であって世界レベルではなかったんです。その後、香港を経由してアジアに広がっていったけど、欧米では全然でしたね。
下野 そうなんだ。でも当時の東京ってさ、エアマックス95とGショックを買い漁るおじさん、たくさんいたよね?
国井 いましたね。自分じゃ使わないでしょ?みたいな人が。
下野 ワールドスポーツプラザで働いていたとき、そうしたおじさんに「裏にある在庫、全部オレにこっそり買わせてくれる? 君にもお金あげるから」って言われたことあるもん。もちろん断ったけど。
国井 当時はそういう話やフリマ目的で買い漁ってる人とか、転売屋のはしりみたいな人たちがウロウロしてましたよね。
下野 だから僕は本当に欲しそうにしてるコにしか売らなかった。在庫はあるのに「サイズ切れです」とか言ってね(笑)。必ず売れるアイテムだったし。
エアマックス狩りのてっぺんはトラック1台丸ごと盗難(笑)(国井さん)
国井 あとエアマックス狩りが騒がれてたけど、運送会社のトラックごと納品用のスニーカーが盗まれたなんてことも話題になってたな……。
下野 マジで!? そのあと犯人は捕まったの?
国井 あくまで口コミで盛り上がってただけなので真相は藪の中ですけど……。模倣犯が出ることのほうが怖くて、大ごとにしなかったって話が濃厚です。
下野 なるほどね。
ポンプフューリー
国井 そういえば下野くんは発売当初からポンプフューリーが好きなイメージですが、当時にしては相当尖ってないですか?
下野 うん(笑)。最初は何だこの蹄みたいなスニーカー?って思ったし。でもそうした違和感が大事というか、「何コレ? スゴ!」って思わせるモノほど人気が爆発する気がする。
国井 95もまさにそんなモデルでしたよね。当時のスニーカー業界で囁かれていたタブーやジンクスを打ち破ったことで今があると思うし、そういうモノほど履いてみたいですよね。
下野 そういえば、イージーのサルファー気にならない? 恐竜みたいな形のやつ(笑)。
国井 北米だけで発売になったやつですよね?
下野 あれこそ違和感だよね。
国井 たしかに(笑)。違和感を感じた分だけ履いてみたくなるのもスニーカーの魅力ですよね。
絶大な人気を誇った95の別注プロトタイプ
左はエアマックス95のプロトタイプをベースに、ミタスニーカーズが2013年に別注したもの。タンが黒いのが特徴的。右のBOXにはデザイナー、セルジオ・ロザーノのサインが!!
羨望の的だった95ユーザー
’90sの某ストリート誌を飾った下野さん(左)。足元にはエアマックス95のブルーが。こうしたユーザーは神をも超える羨望の存在だった。
ポンプフューリーも当初は“へんてこ”扱いだった
下野さんがワールドスポーツプラザのバイヤーに米国で買い付けてきてもらったポンプフューリー。当初は奇抜で、何がいいの?と不思議がられたとか。
※表示価格は税込み
[ビギン2022年2月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。