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ラグビー日本代表の主将リーチマイケル

2019年に開催されたラグビーワールドカップ日本大会の快進撃により、「BRAVE BLOSSOMS」(勇敢な桜の戦士たち)の愛称で世界的な人気を博するようになったラグビー日本代表は、その準々決勝の南アフリカ戦以来、約1年半ぶりに活動を再開した。

6月12日(土)に静岡県袋井市のエコパスタジアムで行われたサンウルブズとの試合は、日本代表(サンウルブズ戦は国代表同士のテストマッチではないことから「JAPAN XV」として臨んだ)にとって実に601日ぶりの実戦となった。5月26日(水)から大分県別府市で行っていた強度の高い合宿による疲労に加え、「絶対に負けてはいけない相手との試合」という重圧も背負いながらの一戦だった。

南半球の強豪国によって構成されていたリーグ「スーパーラグビー」で日本のチームとして5シーズンを戦い昨年で活動を終えていたものの、この試合のために再結成されたサンウルブズは、準備期間わずか1週間足らずのコンバインドチームにもかかわらず、大久保直弥ヘッドコーチ、沢木敬介コーチングコーディネーターらの指導、また経験豊富な選手たちによる自主的なチームビルドにより、序盤から積極的に仕掛けて前半2トライを獲得。日本代表に先制パンチを浴びせる。

エコパスタジアムで行われてラグビー日本代表とサンウルブズとの試合でSH荒井康植選手がトライを決め輪をつくる
前半19分、SH荒井康植の先制トライに歓喜するサンウルブズ。日本代表を慌てさせた

3-14とサンウルブズにリードされた日本代表が本領を発揮し始めたのは後半20分。敵陣5mラインでのラインアウトから日本代表はモールからHO堀越康介がチーム初トライ。直後の25分には、日本代表SH齋藤直人がCTB中村亮土に鋭いアシストパスを放ち、そのまま中村がトライを決め、17-14と日本代表が逆転に成功する。

その後もFLテビタ・タタフが独走トライを決めたほか、HO堀越のこの試合2本目のトライなどにより、日本代表が32-17で逆転勝利を収めた。一部の日本代表メンバーがプレーしていたサンウルブズの健闘も目立ったが、出だしは堅さが見えた一方で徐々に持ち直した日本代表の修正力とフィットネスの高さが光った試合ともなった。

ラグビー日本代表とサンウルブズとの試合では途中出場したHO堀越康介も躍動
後半14分からの途中出場で2トライと活躍し首脳陣にアピールしたHO堀越康介

日本代表は6月26日(土)にエディンバラのBTマレーフィールドで行われるブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ戦に備え、16日(水)に渡英し現地で練習を行っている。

「ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ」とは、イングランド、ウェールズ、スコットランド、アイルランドの4つのラグビー協会の所属選手(各代表選手)からさらに選りすぐりの名手たちによって構成されるドリームチームで、結成される頻度はワールドカップと同じく4年に一度。南アフリカ、オーストラリア、ニュージーランドの順に4年ごとに遠征し、各代表チームや各国のプロチームと対戦する。今年は南アフリカに遠征する予定だ。

初めて結成された1888年以来130年以上の伝統を誇る誉れ高いチームだけに、選手たちがその一員に選ばれることはもちろん、対戦相手になること自体もこの上ない栄誉と言える。基本的には前述の3か国しか対戦機会がないだけに(過去にはアルゼンチンなどと対戦した例外もある)、今回が初対決の日本代表にとっては今後二度と実現しないかもしれない夢のマッチアップとなる。

日本代表のリーチ マイケルキャプテンは、ライオンズとの対戦についてこのように語っている。

「ライオンズ戦に向けて日本代表はスピードやボールキャリーなど、全ての局面の意識をもう一度上げないといけません。そのあたりを(試合の週に)1週間通してやると思います。自分たちがそこをうまくできればブレイクダウン(接点でのボールの争奪)で相手を上回れると思います」

ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチも「ボールキャリーについてはこれから大きなテストマッチ(ライオンズ戦と7月3日のアイルランド戦)に向けて改善していかなければならないと思います」とコメントしており、屈強なプレーヤーが揃うドリームチームに対していかにボールキャリーできるか、つまりいかに力強くボールを持って前進できるか、が鍵となりそうだ。

サンウルブズ戦で苦しみながらも勝利を手にした選手たちに加え、フランスで大いに活躍したWTB/FB松島幸太朗、そしてニュージーランドで出色のパフォーマンスを見せたNO8姫野和樹がそれぞれのシーズンを終えて日本代表に合流。まさにボールキャリーを武器とする役者たちが揃う形となった。

2019年のワールドカップでアイルランドやスコットランドを撃破するなど、目覚ましい飛躍を遂げたからこそライオンズとの対戦が実現した日本代表。選手にとってもファンにとってもまさに千載一遇のドリームマッチだけに、2年前に広まった「一生に一度だ」のキャッチコピーは今にこそふさわしいのかもしれない。

編集者兼ライター
齋藤龍太郎

《ワールドワイドにラグビーを取材中》
編集者として『ラグビー魂』をはじめとするムックや書籍を企画。2015年にフリーの編集者兼ライターとなり、トップリーグをはじめ日本代表の国内外のテストマッチ、ラグビーワールドカップを現地取材。フォトグラファーとしても活動。著書に『オールブラックス・プライド』(東邦出版)。

文・撮影/齋藤龍太郎

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