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ストリート特集 BEDWIN & THE HEARTBREAKERS ベドウィン & ザ ハートブレイカーズ

“ストリート”をバックグラウンドに持つ人たちの多くは、ユースの頃にその原体験があるのは周知の通り。渡辺真史さんもまた、10代でそうしたカルチャーや洋服に傾倒したうちのひとりです。では、大人になってからそうしたスタイルや文化に惹かれた人には楽しむ権利はないのでしょうか? この問いに対して、渡辺さんは「年齢制限なんてない」と言い切ります。“ストリート育ちのいい大人”を地で行く、東京のキーパーソンの真意とは?

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大人ストリートの代表格
「BEDWIN & THE HEARTBREAKERS」

【about ベドウィン & ザ ハートブレイカーズ】
設立は2004年。旅を続ける遊牧民(=ベドウィン)のように特定の型に固執せず、国籍や時代背景を超えたアイテムやスタイルを取り入れた提案をし、東京のメンズスタイルに新たな潮流を生む。クロップドパンツ隆盛のきっかけとなったディッキーズとのコラボモデル“トリップスター”をはじめ、多数の名作を輩出してきた。

BEDWIN & THE HEARTBREAKERS ベドウィン & ザ ハートブレイカーズ デザイナー 渡辺真史

ベドウィン & ザ ハートブレイカーズ デザイナー
渡辺真史

1971年生まれ、東京都出身。美大在学中にモデルとして活動し、卒業後の渡英をきっかけに友人や先輩たちとともに服づくりに携わり始め、帰国。2004年に株式会社DLXを設立。その後は自身のブランドのかじ取りをする傍らで、多彩なプロジェクトに関わるように。現在は渋谷・ミヤシタパーク内のセレクトショップ、DAYZのディレクションや、Tシャツなどのボディブランド、GOATのディレクションも手掛けている。

「金額よりもその人の想いで高揚感を持つのがストリートウェアだと思います」

BEDWIN & THE HEARTBREAKERS ベドウィン & ザ ハートブレイカーズ デザイナー 渡辺真史

−−ベドウィンはストリートをバックボーンに持ちながら、実際に多くの大人に支持されているワケですが、改めてその背景にある渡辺さんのスタイルやモノ選びの遍歴について教えていただけますか?

渡辺真史(以下渡辺):僕らの世代はみんなそうだったと思うけど、最初はやっぱり映画で観た誰かが着てたものとか、雑誌の記事を見て、「これが格好いいんだ」っていう刷り込みから始まったと思っています。特にモノへの入り方なんて、若い頃は何もわからないじゃないですか。そうすると、例えばレザーシューズが気になったとしたらポストマンだ、コンバットブーツだとか、いろんなものがある中で段々と“オールデンっていうのがいいらしい”、“特にカーフとコードヴァンって素材がスゴいみたい”とかって徐々にわかってくる。当時は今で言うインフルエンサーの役割を果たしていたのが雑誌やテレビでしたよね。

−−東京で生まれ育った渡辺さんだけに、そういう上質なモノになじみやすかったのかもしれないですね。

渡辺:当然、僕も入りはもっとチープなモノからでしたよ。だけど、そういう商品の中でも作りのいいモノっていうのが確実にあって、「コレがいいよね」とかって自然とみんなで情報交換したりするようになるじゃないですか。そうやって次々新しいモノに惹かれていきました。振り返ってみると、いまだに自分のことはすごくミーハーだなと思いますね(笑)。

−−若さゆえの熱量ですね(笑)。

渡辺:ですね。それで、プロダクトにハマって掘り下げていくと、それがどういうふうに生まれたのかとか、どういう時代背景にどう必要とされてきたのかとかが見えてきますよね。それを続けていると、プロダクトの背景にあるカルチャーが見えてくるんです。過去にはどんな人たちが履いていた靴なのかとか、どの映画のどういうシーンで履かれていたかとか。そういうところに気づいてくると、モノが多角的に見えるんです。

−−プロダクトからカルチャーを知ることもあるんですね。

渡辺:そうですね。もちろん逆もありますよ。そのカルチャーに夢中になって、身近になったアイテムとかブランドを自然と身につけてる人も多いでしょうし。でも、そういう場合でもずっと身につけ続けてれば、「こんなディテールがあったんだ」とかって気づくことはあるだろうし、それは絶対必要なこと。そうやってカルチャーとかムーブメントを俯瞰して見ながらモノへの造詣も深められたら、きっとそれが最強ですよね。

−−自分の中で絶対的な価値が生まれますもんね。

渡辺:そう思います。最近はリセールのマーケットがどんどん大きくなってると思うけど、僕自身は何に価値を見出すかっていうのを自分自身ではっきりさせたいんです。ロレックスのヴィンテージでもニッチなものが持て囃されて、少し前まで数十万円だったものが数年で数千万円になったりすることがあるじゃないですか。ポール・ニューマンが着けてましたとか、こんな映画に出たモデルです、タマ数が少ないですとか、いろんな理由で。情報が広まって「一千万円でも買うよ!」とかって人が出てくると価値がどんどん上がってくる。でも、それが本当にその金額分の価値なのかどうかは、払う人が決めればいいだけ。「いい時計に変わりはないけど、その金額だったら僕は買わないよ」でいいと思うんです。

−−モノの正当な評価がされにくいのは、情報社会の弊害かもしれませんね。

渡辺:僕は今スウォッチをしてるけど、これは1万円そこらで買えるものだし、手に入れるのに並ぶ必要もないもの。だけど、僕はこの時計が持つ趣とかフィロソフィーが好きで、今の自分のムードにも合うんです。それで十分、自分に取っては価値あるモノになる。周りでの価値は知らないけど、少なくとも、自分にとっては。

−−いわゆるストリートウェアも、受け手次第で感じる価値が極端に変わる類のものかもしれませんね。

渡辺:うん。やっぱり僕はそういうものが好きなんですよね。金の延棒みたいな服を着たいわけじゃないんです(笑)。それよりも、特定の人にだけ金の延棒みたいに見えることが大事というか。ついた金額よりもその人の想いで高揚感を持つのがストリートウェアだと思います。

−−ストリートウェアに限らず、自分でそれを選んだ理由が説明できるほうがクールですよね。

渡辺:もちろん最初は“安いから”とかだと思うんです。新品を買うお金はないから古着でいいや、とか。でも、それも続けていれば人とカブらない古着はどれか、とか、どれが珍しいピースなのかっていうのが見えてきて、歴史も勉強できる。それで、“なんでコレが好きなのか”を言語化できるようになったのが、ビギンを読んでるような人たちなんじゃないのかな。やっぱり男ってモノの背景が好きだし、説明書も好きですよね。ただ、それが先行しすぎた結果、楽しむことを忘れちゃう人もいるから、それはもったいないと思うけど。僕の中でファッションと娯楽って同義で、世の中もそうあってほしいと思っていて。

「大人になるほど、新しい発見やチャレンジができるのは素晴らしいこと」

BEDWIN & THE HEARTBREAKERS ベドウィン & ザ ハートブレイカーズ デザイナー 渡辺真史

−−カタい頭にはならずにいたいですよね。でも、意外とカルチャーに造詣が深いトガった人や不良ほどそういうディグに関してはマジメだったりしませんか?

渡辺:そういう世間的には軽そうに見えるであろう人たちが実はマジメっていうギャップが面白いですよね(笑)。

−−つくづく人は見かけによらないです(笑)。

渡辺:僕も今年で49歳ですけど、夏場はTシャツにショーツで、そのへん歩いてたら10代の子と変わらないと思うんですよ。知らない人が見たら「ちゃんと仕事してるのかな……?」って思われるんだろうなと思ってます(笑)。もちろん、同い年の知り合いには虎ノ門でスーツ着て働いてる人もいれば、企業の重役になってるような人もいますよ。彼らの方が世間一般の大人のイメージには近いんだろうけど、普段から渋谷や原宿にいる僕たちにとってはこれがユニフォームっていうだけなんです。昔は「“普通”に対抗してやろう!」なんて思ってた時期もあったけど、もうそういう考えも全然なくて。俺には家族もいるし、自分で活動もしている。そのうえで、人に何を言われようと好きなことをやろうっていう気持ちです。

−−うがった質問かもしれませんが、今のそういう姿勢はスケートボードだとか、音楽だとかのカルチャーに親和して育った渡辺さんだから取り得たものではないですか? 先程の“一般的な大人”として過ごしてきた人たちが、そういうアティチュードやスタイルになるのは難しいんじゃないかと……。

渡辺:もちろん自分が思春期とか青春時代に通ってきたものは関係してると思います。人は結局、自分が持ってるものでしか表現できないと思うから。でも、自分も40歳を超えてから柔術を始めたり、ボクシングに挑戦したりしてるし、何かを始めるのに年齢でリミットをつくる必要なんてないと思います。だから、60歳になった人がスケートボードを始めたら、楽しい人生を送ってるんだろうなって見えると思うんです。怪我だけしないでね、って。

−−格好や服装についても、年齢制限はないと思いますか?

渡辺:そう思います。40代からTシャツでオシャレするようになったって、50代でショーツを穿き始めたっていいじゃないですか。むしろ、大人になるほど、新しい発見ができたりチャレンジができるのは素晴らしいことだと思います。人生が70年なのか80年なのかはわからないけど、やり尽くしてこの先も変わらないってなったらお迎えを待つだけだけど、ずっと新しいものに触れていれば最後まで生き切れると思うんです。

−−素敵ですよね。一般的にはストリート=カジュアルというイメージが強いから、大人で敬遠しがちな人がいるのも無理はないと思いますが。

渡辺:僕自身は、そこに自分のアティチュードや好きなものが滲んでいることがストリートのよさだと思ってるんです。だから、僕もオペラにいくときはタキシードを着ていたいんですよ。なぜなら、その場のムードはそういう格好で味わいたいから。それに対して「それは本当にあなたなの?」って聞かれても、「これが自分です」ってはっきり言えます。重要なのは、ストーリーがちゃんと自分の中にあるかどうかなんだと思います。

「その背景も知って好きなようにコーディネイトできたら、それが一番格好いい」

BEDWIN & THE HEARTBREAKERS ベドウィン & ザ ハートブレイカーズ デザイナー 渡辺真史

−−なるほど。そのうえで、渡辺さんはTシャツを基本のユニフォームのひとつと捉えられてるんですね。

渡辺:そうですね。ただ、Tシャツに関してはやっぱりみんな好きですよね?って気持ちが強いかな。

−−今ディレクションされているGOATというTシャツのレーベルについてもそういった感覚が強いんですか?

渡辺:はい。GOATに関しては別に隠すつもりもないんですけど、僕が企画に携わってることすら、意識しないで選んでもらいたいんですよね。GAOTはブランクTのブランドで、なぜやってるのかって言うと、自分がこれまでベドウィンをやってきて、ボディとして選べるTシャツが少なかったからなんですよ。ギルダンとかヘインズとか、メーカーはたくさんあるんですけど、その中でもベースとして使いたいなと思えるものが。でも、自分たちでつくったら1枚8000円とかっていう値段にどうしてもなっちゃう。それって、僕の思うTシャツのスタンダードではないんですよね。

−−基準はたぶん、最初におっしゃってた“入り口になったチープな服”の感覚ですよね。

渡辺:そういうことです。で、ずっとそんなことを考えていたんですけど、繊維商社から「生地をつくることをずっとやってきたけど、これからはプロダクトとしても売っていきたい」という相談をいただいて。彼らは生地の専門家で、形にするのは僕。それで、無地Tシャツのブランドにしましょう、となったんです。

−−そんな経緯だったんですね。確かにベドウィンとは真逆で、作り手の色がほとんど出ていませんよね。

渡辺:’90年代に見てきたようなブランドもそうだったけど、やっぱりブランドとして一番アプローチしやすいのがTシャツだったんです。ありもののボディに自分たちのプリントをして売るっていうやり方を実体験していくんだけど、2000年代になるとそういう流れがどんどんなくなっていってしまって。ここ数年でそういうやり方がまた戻ってきたけど、やっぱり昔とはまた別物だから、今のマーケットに合うものにしようと思ったんです。

−−なるほど。でもあくまでルックスはオーセンティックですよね。

渡辺:やっぱり僕は当時のTシャツの雰囲気が好きなんでしょうね。だから米綿を使ってボクシーなシルエットにしてます。そこに時代に合わせたアップデートとして、ステイフレッシュっていう抗菌・防臭効果を持たせています。2、3日着てても臭くなりにくいっていう、昔はなかった機能を入れたら、僕もみんなももっと新鮮な気持ちで楽しめるんじゃないかな、って。それ以外は厚手の7オンスの生地で、形崩れしにくい二本針のステッチで丸胴、リブは少しだけ太めだけど柔らかさもあるとか、個人的なこだわりは詰まってるんだけど最終的には、みんなが楽しめるのものになってほしくて。

−−渡辺さんのユニフォームでもあり、みんなのユニフォームでもあるということですね。

渡辺:そうなってくれるのが一番嬉しいです。でも、GOATのTシャツに限らずモノのよさがわかって、その背景も知ってるうえで自分の好きなようにコーディネイトできたら、それが一番格好いい大人なんじゃないかな。いいものは積極的に取り入れようっていう感覚ってやっぱりストリートらしいなって、僕は思うんですよ。


【recommend item①】
TYPE M-65 MILITARY COAT “LUCAS”

BEDWIN & THE HEARTBREAKERS ベドウィン & ザ ハートブレイカーズ M-65タイプ ミリタリーパーカ LUCAS

遊び心たっぷりで実用的な
現代版の都市型ミリタリー

M-65タイプのミリタリーパーカ“LUCAS”は迷彩をコントラスト弱めのトーンで取り入れた総柄仕様。着脱可能なナイロン製キルティングライナーに加え、それと同素材のフードがセットになっていて、気候やスタイルに合わせて4通りの着方が楽しめる。肩が落ちて身幅もゆったりとしたボリューム感が抜群にモダン。5万2000円(ザ・ハートブレイカーズ)

recommend style

BEDWIN & THE HEARTBREAKERS ベドウィン & ザ ハートブレイカーズ M-65タイプ ミリタリーパーカ LUCAS

男クサさは抑えつつ
こなれ感を増すサイジング

コートはもちろん、パンツもインプリーツ仕様でリラックス感を漂わせる大きめシルエット。ルーズになりすぎないよう、インナーはタックインですっきりと。骨太になりがちなミリタリーコートも、シルエットや色柄で少しナードなニュアンスを強めるとグッと今っぽさが強まる。

スティル バイ ハンドのカットソー1万1000円、同パンツ1万9000円(以上、スタイルデパートメント)ナイキ スポーツウェアの靴1万1000円(NIKE カスタマーサービス)その他はスタイリスト私物。


【recommend item②】
L/S PULLOVER HOODED SWEAT “DAVID”

BEDWIN & THE HEARTBREAKERS ベドウィン & ザ ハートブレイカーズ パーカ

“わかってる”感のカギは
ボディにあり

カルトムービーのアイコンのような前後のグラフィックは、錚々たるブランドや大企業からオファーを受けてきた米国のアーティスト、マイケル・カーニーが手掛けたもの。ボディはスウェットやTシャツではおなじみのジャージーズ製で、中厚の8オンスの裏毛なのでアウターの中にも着やすい。1万5000円(ザ・ハートブレイカーズ)


【recommend item③】
10/L DICKIES T/C PANTS “THUNDERS”

BEDWIN & THE HEARTBREAKERS ベドウィン & ザ ハートブレイカーズ HUNDERS ワークパンツ
懐かしいのに新しい
別注ディッキーズ

継続しているディッキーズとのコラボレーションではトリップスター以外にもこれまでに様々なスタイルがラインナップしている。コチラの“THUNDERS”は名作“874”をベースにしたフルレングスモデルで、膝下から緩やかに狭まる独自のシェイプ。シンプルながら、穿くと定番との違いが実感できる。1万7000円(ザ・ハートブレイカーズ)

recommend style

BEDWIN & THE HEARTBREAKERS ベドウィン & ザ ハートブレイカーズ HUNDERS

トーンとシルエットで
王道をフレッシュに

ワークパンツ&パーカという、ストリートカジュアルの代名詞的組み合わせ。それでもキッズライクになりすぎないのは、淡色同士の色合わせだからこそ。さらに、現代的なゆとりは踏襲しながらも、足元はすっきりとさせているのもスマートさが増す秘訣。このちょっとした変化で、見違えるほど洒落て見えるのだ。

ザ・ノース・フェイス パープルレーベルのハット7600円(ナナミカ 代官山)ヴァンズの靴7000円(ABCマート)


【ザ・ハートブレイカーズ商品のお問い合わせ先】
ザ・ハートブレイカーズ TEL.03-6447-0361

【コーディネート商品のお問い合わせ先】
スタイルデパートメント TEL.03-5784-5430
NIKE カスタマーサービス TEL.0120-6453-77
ナナミカ 代官山 TEL.03-5728-6550
ABCマート TEL.03-3476-5448

※商品価格は全て税抜き


写真/若林武志、宮前一喜(取材) 文/今野 壘 スタイリング/鈴木 肇

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