1999年、スウェットの常識が変わった!

吊り編み=上質なスウェット。今や当たり前すぎて忘れそうになるけれど、この図式を世に広めた立役者こそループウィラー。’99年、鈴木 諭さんが旧式吊り編み機に再び注目しなければ、吊り編みスウェットは過去の遺産として忘れ去られていたかもしれません。

ループウィラー代表 鈴木 諭さん

ループウィラ―代表
鈴木 諭さん

1959年静岡県浜松市生まれ。1999年ループウィラーを創設。当初は欧州で知名度が上がり、後に日本でも人気に。吊り編み=LOOPWHEELとした英訳は鈴木さんによる創作。現在はTSURIAMIが世界標準語に。

「そもそもスウェットの生地を編む機械は、黎明期の1910年代後半から’60年代中頃までは、吊り編み機が主流でした。チャンピオンのスウェットも、その頃まで吊り編み生地が使われていたんです。が、大量生産時代の波にのまれた’60年代後半以降は、現在主流のシンカー編み機が主役に。両者の最大の違いは、生地を編む速度にあります。」

和歌山の工場にしかない’50年代の吊り編み機
和歌山の工場にしかない’50年代の吊り編み機。1時間に1メートルしか編めません(驚)

吊り編み機は糸の自重だけを頼りに、1時間に約1mという低速で編まれるのに対し、シンカーはその何十倍もの速度で編み上げます。」

「糸を無理に引っ張らずに編まれる吊り編み生地のほうが、ふっくら嵩高で柔らかく、引き裂き強度にも優れるため、洗濯を繰り返しても型崩れしにくいですし、着込むほどに体に馴染んでくるんです。」

「ただ一台で編めるのは一日にわずかスウェット8着分程度。生産効率が悪すぎて片隅に追いやられてしまったんです。」(鈴木さん)

この旧式吊り編み機が奇跡的に残っていたのが和歌山の「カネキチ工業」をはじめとする数軒の工場。古きよき生地を再興し、ディテールにもこだわって作り上げた“世界一、正統なスウェット”の第1号こそ、LW01なのです! 言うなれば究極のベーシック。21年経った今も全く廃れないことからも、その完成度の高さが窺えます。
 

基本のディテールが詰まったLW01

ループウィラー LOOPWHEELER LW01

おさらいDetail① V字ガゼット

ループウィラー LOOPWHEELER LW01 V字ガゼット

衿ぐりにはめ込まれたV字状のリブパーツのこと。補強としての役割や着脱時の負荷軽減、汗止めなどの機能を持つヴィンテージにも見られる意匠だ。ちなみに、前だけにこのガゼットが備えられているものを“前V”、このLW01のように前後に備えているものを“両V”と呼ぶ。

おさらいDetail② フラットシーマ

ループウィラー LOOPWHEELER LW01 フラットシーマ

肩回りや袖付けなどの縫製は、生地同士を最小限の幅で上下に重ねて4本針で平らに縫い合わせる“フラットシーマ”仕様。作業速度がゆっくり、かつ高度な技術が求められるユニオンスペシャルという特殊なミシンで縫製される。ゴロツキがなく、着用感がいいのが特徴だ。
 

青森の丸和繊維工業にてユニオンスペシャルで縫製

青森の丸和繊維工業にてユニオンスペシャルで縫製

おさらいDetail③ 丸胴

ループウィラー LOOPWHEELER LW01

吊り編み機で生地を編むと筒状になる。その生地をそのままボディに用いると、サイドにシームのない“丸胴”になるというわけ。着たときにサイドにゴロツキがない&型崩れしにくいのが特徴。’60年代頃までのヴィンテージにも見られる仕様だ。

おさらいDetail④ 吊り裏毛

21世紀のマシンじゃ作れない究極のふんわり♡

ループウィラー LOOPWHEELER LW01
長く着込んでもふんわりが持続するのはループ状の裏毛のおかげ

ぷっくり膨らんだループ状の裏地こそ、吊り編み生地の最大の特徴。この質感を生み出すために、旧式吊り編み機が必須なのだ。

振動を吸収する木製の梁を天井に設け、そこから蓑虫のように吊り下げて設置される吊り編み機は、毎分わずか24回転というゆ~っくりした速度で、糸の自重を利用して生地を編み立てていく。だから糸に余分なテンションがかからず、ふっくら嵩高で柔らかくて丈夫な生地ができるというわけ。

洗濯を繰り返してもヘタレにくく、着込むほどに体に馴染んでいくのが特徴だ。
 
※表示価格は税抜き


[ビギン2020年11月号の記事を再構成]写真/上野 敦(プルミエジュアン) 文/黒澤正人 スタイリング/鈴木 肇 ヘアメイク/北村達彦

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