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Nigel Cabourn ナイジェル・ケーボン レイルマンデニム

大戦時の“応急処置”生地を再現
― 談・Nigel Cabourn デザイナー ナイジェル・ケーボンさん

そもそも僕がヴィンテージにハマったのは、服作りを学んでいた大学生の頃。当時すでに面識があった、英国を代表するあるデザイナーから軍モノのアビエイタージャケットをもらったのがきっかけでした。

以来、古着のミリタリーウェアに夢中になって、もう半世紀以上が経ちましたね。10年くらい前に数えたら4000着以上あったから、今ではもっと増えてるだろうなぁ(笑)。

軍モノって、国が一着の服に数億円もの研究開発費を使ったものもあり、ディテールすべてに意味がある。僕はそんなある意味完成されたミリタリーウェアの魅力にとりつかれて、次第にワークやアウトドアなどのヴィンテージ服全般へ、興味の裾野を広げていきました。

その服が持つ歴史的背景や出自を知ることが楽しくて仕方なかったんです。

ここで紹介しているデニムも、やっぱり僕の大好きなヴィンテージに由来するものです。ウエストにサスペンダーボタンとバックシンチ、ベルトループがすべて付くのは、ベルトが普及してきた’30年代頃の仕様で、当時の鉄道労働者のワークウェアをベースにしたワイドな仕立て。

一方で、生地の着想は’40年代、第二次大戦中のジーンズから得ました。戦時中は物資不足ということもあって、生地を作るための経糸が足りないときには苦肉の策で、本来は用途が別のものでも織り交ぜていたんです。

このデニムは、そんな時代に“応急処置”として作られた生地の質感を、番手の太さが異なる経糸をランダムに織ることで再現しています。インド藍を使った、ちょっと黒っぽいブルーの染色もこだわったところですね。

これは日本で作っているんですけど、工場はナイショ(笑)。正直、こんな面倒な生地を作ると、職人さんたちにはほとんど利益が出ないそうです。だけど、僕らが「こんなデニムを作りたいんだ!」って話したら彼らはそれを面白がってくれて、協力してくれました。

僕は日本の素材が、日本のモノ作りが大好き。このデニムも彼らの熱意がなければできなかっただろうなぁ。

その他にも年代の異なる古着のディテールをたくさん取り入れていて、見た目はすごくヴィンテージライクだけど、過去に絶対存在しなかったものになっていると思います。

だって僕たちはリプロダクトメーカーじゃないですから。歴史を掘り下げて、現代の技術を使って昇華させるのが僕らのモノ作りスタイルなんです。しかし改めて見ても、我ながらいろいろと欲張りなデニムになったなぁ(笑)。

Nigel Cabourn デザイナー ナイジェル・ケーボンさん

Nigel Cabourn デザイナー
ナイジェル・ケーボンさん

1949年生まれ。イギリス東部の街、スカンソープ出身。大学在学中より服作りを始め、世界有数のヴィンテージコレクターとしても名を馳せている。現在はニューカッスル近郊の事務所で、日々新たなモノ作りを追求している。

Nigel Cabourn ナイジェル・ケーボン レイルマンデニム

Nigel Cabourn[ナイジェル・ケーボン]
レイルマンデニム

太さが不均一な経糸により、独特の凹凸が生まれたオリジナルデニムの5ポケットジーンズ。股上は深めで、シルエットもズドンと太い。ドーナツボタン裏にはさりげなくブロードアローが刻印された、英国の誇りを感じる逸品。2万9000円。(アウターリミッツ)

Nigel Cabourn ナイジェル・ケーボン レイルマンデニム
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こう変化する!

ヴィンテージ ’30年代のモデルに’40年代の生地

Nigel Cabourn/ナイジェル・ケーボン ロゴ
Nigel Cabourn/ナイジェル・ケーボン

’30年代のモデルに’40年代の生地を採用

鉄道 戦時中 イメージ図

自動車の大衆化が進んだとはいえ、まだまだ鉄道が庶民の主要な移動手段だった時代から、国家規模の物資統制によってあらゆる産業が大きく変わった戦時中まで。

そんな時代の変遷を辿るように、象徴的なディテールや技法を掛け合わせていき、生まれたのがこのデニム。

とはいえ、教科書通りのリプロダクトではなく、さまざまな年代の長所を兼ね備えたイイトコ取りな意欲作。デザイナーが惚れ込んだ日本の技術で形にし、生地に至ってはゼロから作るというこだわりぶり。ただの懐古趣味じゃない、新たなヴィンテージなのだ。

 
※表示価格は税抜き


[ビギン2019年10月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。

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