まるで光と風を通すアート。空間の印象そのものを変える型染め麻のれん

日本には昔から、目で、手で、音で涼を取り入れる知恵がありました。どれも暮らしの中にすっと入り込み、夏を心地よくしてくれるものばかり。そうした日用品の中に美を見出してきたのが「民藝」です。職人が丹精込めて作った日常の道具たちは、暑い季節の食卓や部屋の景色を涼やかに整えてくれるんです。
まるでアートのような存在感
山内武志の型染め麻のれん
【熟練の手仕事が生むやわらかな光と涼の気配】
間仕切りであり、目隠しであり、そして季節の気配を運ぶ道具でもあるのれん。扉のように空間を遮断せず、風や光をほどよく通しながら、その場の空気を整えてくれる優れた道具です。
民藝の世界にはそんなのれん作りの名手がいます。人間国宝・芹沢銈介に師事した染色家、山内武志さんです。
山内さんののれんは、実用品でありながら、空間の印象そのものを変える力を備えています。富士山や雲、波、草花といった自然のモチーフを大胆かつ潔い図案へと置き換えたのれんは、部屋に掛けるだけで空間に季節感と軽やかなリズムをもたらします。
型の製作から糊つけ、染色までを基本的に山内さん一人で行うため、美意識がぶれることなく、文様と染めの表情がきちんとひとつに結びつきます。
夏なら麻ののれんがおすすめ。匠の技で型染めされた文様がアートのような存在感を放ちながら、さらりとした麻布の風合いが涼を運んでくれる。民藝の神髄である用即美を体現する布仕事がここにあります。
人間国宝・芹沢銈介の志と技を受け継ぐ染色家の手仕事

型染め麻のれん
麻の型染めのれんは、山内さんが40年以上にわたって染め続けている思い入れのあるもの。主にハリのあるアジア産の麻布を使用する。こちらは山内さんが好む富士山をモチーフにした一枚。「赤富士に雲ふたつ」。W87 × H138cm。5万5000円(くらしのねじまき)

型染めのクッションカバー
のれんを掛ける場所がない人はクッションカバーをお試しあれ。涼しげな水玉文様も麻ならではのサラサラタッチも夏にぴったりだ。40cm角。各8800円(くらしのねじまき)
型染めの名手・山内武志さんとは?

1938年静岡県生まれ。紺屋の家に生まれ、10代で芹沢染紙研究所に入門。以後6年間にわたって芹沢銈介から指導を受ける。その後独立し、地元浜松市を拠点にのれんや風呂敷など暮らしの中で使う染めの仕事を続けてきた。型紙を布に当てて防染糊を置き、色を染めて糊を落とすことで文様を浮かび上がらせる型染めを得意とする。

山内武志さんの作品が揃う「くらしのねじまき」
2026年の5月にオープンしたオンラインショップ。民藝や手仕事など地域の丁寧を紹介する同店には、のれんや手ぬぐいなど山内さんのさまざまな作品が揃う。ちなみにショップのロゴは山内さんが考案したもの。7月には麻の染め物を集めた展示会を開催予定。
https://kurashi-nejimaki.com/
※掲載商品はすべて数に限りがあります
※表示価格は税込み
[ビギン2026年7月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。
