【いまさら聞けないアメトラ】ネクタイの基礎知識と“正統Vゾーン”の作り方

伊・仏・英・米を横断した波瀾万丈ネクタイ物語
ローマ兵士、フランス王室、クロアチア兵、イギリスの伊達男、と世界を旅しながら進化してきたネクタイ。その旅路をひとつひとつ紐解けば、我々の巻き方も変わるはずです!

Q1.ネクタイってナニ?
A. ネクタイの起源は2世紀初頭にローマ兵士が首に巻いたウールの布(=フォーカル)という説が有力。ただこれは防寒具やお守りとしての意味が強く、首回りの装飾品としてネクタイが流行したのは、そこからずっと時代を下った17世紀後半だ。
きっかけはフランス王室に仕えるべく駆けつけたクロアチア兵たちが首に巻いていた布(=クラバット。本来クロアチア兵という意味)。その美しさに目をつけたルイ14世が宮廷ファッションに取り入れ、やがて一般へと普及していったのだ。
19世紀、ファッションの主流がイギリスへ移行すると、シンプルさを美徳とするロンドンの伊達男の間でクラバットの結び方もシンプルに。この頃からネクタイの呼称が使われ、19世紀後半には“フォア・イン・ハンド”と呼ばれる現代のタイの形が確立した。
【ネクタイアイコンといえばこの2人】
フレッド・アステア

数々の映画の中で粋なタイ姿を披露したアステア。劇中ではブルックスのタイをベルト代わりに巻くという裏ワザも披露していた。
ウィンザー公 エドワード8世

希代の洒落者としても知られたウィンザー公。タイの定番的結び方のひとつである「ウィンザーノット」は、彼の名が由来という説も。
Q2.ネクタイの種類ってどんなものがあるの?
A. シルクの他にウール、リネンなど多彩な素材が使われ、柄的にもさまざまなバリエーションが存在するネクタイ。それらをいちいち解説するときりがないため、ここでは構造についての種類解説にとどめたい。現在もっともポピュラーなのは、全体に芯地を仕込み、裏地を張ったタイプ。
対して裏地を使用せずに一枚の生地の折り返しで仕上げたタイプもあり、これらは“3つ巻き”“クワトロピエゲ”“セッテピエゲ”などに分類される(このうちセッテピエゲは芯地も使われないことが多い)。裏地なしのほうが古典的であり、お洒落な人たちは好むが、耐久性では裏地付きに分があるといわれる。
構造

上で紹介したタイプはタイの古典柄であり、無地と並んでビジネスで使いやすい。このほかペイズリー、チェック、幾何学柄などさまざまな柄がある。
構造

プレーンなのは裏地付きのタイプ。それ以外のタイプは一枚の生地を折り返して仕立てた贅沢さが魅力であり、ハンドによる縫製がデフォルトだ。
Q3.いいネクタイの見分け方って?
A. 美しいノットが築けるのがいいタイだが、店頭で実際に締めるわけにはいかない。そこで判断基準となるのが膨らみ感。モード系ブランドにはあえてペタッと表面をつぶしたタイもあるが、一般には全体がふっくらしていれば上質な芯地を使うなど仕立てがいい証拠。程よいノットのボリュームを築け、美しいドレープも生じるはずだ。また剣先の形やかんぬきの始末などもいいタイの判断基準となる。
かんぬきの処理はキレイか?

合わせ部分が開かぬよう補強するかんぬき縫い。ここがコイル状ループ糸だと高級な証し。
ふっくらしているか?

仕立てがいいタイはふっくら見えるもの。芯なしのセッテピエゲも、同様のことがいえる。
大剣の形が美しいか?

剣先を折り返したとき、キレイな二等辺三角形になるか。ここも丁寧な仕立ての指針だ。
Q4.ネクタイの幅ってどう選べばいいの?
A. 大剣の剣先幅にこだわる人も多いが、じつは剣先幅より重要なのはタイシェイプ。この違いによりVゾーンから見えるタイ幅はかなり異なるからだ。ちなみにジャケットのラペル:シャツの衿羽根:タイ幅は、1:1:1 のバランスとなるのが理想といわれる。
主なタイシェイプ

昨今の主流は、剣先に向かって緩やかに広くなるストレートシェイプと、ネック部分から下がやや膨らんだ形状のセミボトルシェイプの2つ。同じ大剣幅でも後者の方がやや太めのタイをしている印象になる。
同じ大剣幅でもこんなに違う

Vゾーンで比べてみると

右は適正なバランスだが、左だとジャケットのラペルに対して若干細いタイをしている感じ。大事なのは剣先幅ではなくシェイプだ。
もっと知っ得コラム
長く使うためのお手入れ基本の“き”
仕立てのいいタイは一生の相棒だが、それにはちゃんとしたケアが必要不可欠。大前提、結び目のシワが取れるまで休ませられるよう、十分な本数を備えておこう。

❶ノットを外すときは丁寧に
タイの着脱時には縫製面に強く負担がかかる。とくに気をつけたいのが外すとき。ノットを力任せに引っ張る人も多いが、これは最大のNG。小剣を引き抜いてから優しく解こう。

❷シワが入ったらスチームで
直接アイロンを掛けると一発でテカリが出るから注意したい。シワが入った箇所に軽くスチームアイロンを掛けるのがベターだ。

❸保管はまるめて
吊るすと生地が伸びるためタイは丸めて保管するのが基本。シーズンオフで長く使わないのなら2つ折りで平置きするのが理想だ。
教科書に載せるべき定番ネクタイカタログ
気軽に付け替えられるからこそ、ネクタイの持ち数はコーディネートのバリエーションに直結します。米英日伊の良品を厳選したので、ビビッと来たらどうぞ食指の赴くままに。

正統ブランドの正統派がU‐1万円で買える

J.PRESS ORIGINALS[J.プレス オリジナルス]
スーベニア プログラム レジメンタル タイ
右下がりストライプ、大剣幅8cm、と極めてベーシックなレジメンタルタイ。シルク100%であるが「記念品やお土産感覚で楽しんでほしい」という“スーベニア プログラム”発ということもあり、U-1万円で購入できるのが嬉しい。各8800円(J.プレス & サンズ 青山)
アメリカの伝統を一から作り上げた一本

Brooks Brothers[ブルックス ブラザーズ]
シルク BB#1ストライプ レップタイ
英国の伝統をひっくり返し「右下がりストライプ」を生み出した同社によるMade in USAのレップタイ。ニューヨーク市に現存する最後のネクタイ工場である、MONGRU(モングル)社に縫製をオーダーして
あの名門を陰で支えた実力派ニットタイ

BENTLEY CRAVATS[ベントレー クラバッツ]
シルク ニット タイ
件の御所ブランドがまだネクタイ店だった頃に製造を手掛けていたことで知られる名ファクトリー。今なお多くは米国製だが、ことニットタイに関しては100%シルクでMade in Italy。生地裁断以外はすべてハンドメイドという渾身の一本だ。1万5400円~(メイン)
カジュアルコーデを引き締める老舗生まれの万能型

JOHN COMFORT[ジョン コンフォート]
50oz ソリッドタイ
1908年創業の英国老舗ネクタイメーカーによるソリッドタイ。英国アダムリー社製の50ozのヘビーツイル生地は、綺麗なノットとディンプルが出来るのが特徴。シャンブレーやマドラスシャツなど合わせの幅も広い。各1万6500円(フェアファクスコレクティブ)
米国産シルクタイはシャツによく合うのも当然

INDIVIDUALIZED ACCESSORIES[インディビジュアライズドアクセサリーズ]
レジメンタル ストライプ タイ
ご存知「インディビジュアライズドシャツ」のネクタイ部門による、シルク100%の一本。製造は1881年の創業以来、一貫してMade in USAを堅持する「ブラウン&チャーチ」社が担当し、一本一本ハンドメイドしている。各2万3100円(ユーソニアン グッズストア)
その美しさに泣く子も黙る“アイリッシュポプリン”

Atkinsons[アトキンソン]
レジメンタルタイ
1820年にアイルランドで生まれた老舗が誇る定番素材は「アイリッシュポプリン」。艷やかな先染シルクを経糸に、弾力のある先染メリノウールのウーステッドを緯糸に用いるため、上品さと実用性を兼ね備える。各2万2000円(ブリティッシュメイド 青山本店)
伝統 × ノウハウが生み出す大人な色気

Holliday & Brown[ホリデー & ブラウン]
ストライプ タイ
1919年にロンドンで創業し、2000年よりイタリアのシルク産業をリードするマンテロ・セタ社が継承。伝統と生地へのノウハウが融合した一本で、目の肥えた紳士に愛されている。優しい配色が艶かしいコチラは26SSの新作。各2万3100円(アイネックス)
一本は持っておきたい主役級のチェックタイ

FAIRFAX[フェアファクス]
パッチワーク チェック タイ
アメトラを軸に生地から製法までMade in Japanにこだわる同社が、約30年前のアーカイブから復刻したチェックタイ。カラフルだが落ち着いた色調ゆえ意外と扱いやすく、無難なコーデも一撃でこなれて見せる。各1万4300円(フェアファクスコレクティブ)
軽妙さを演出する両A面ネクタイ

KENNETH FIELD[ケネス フィールド]
タイ マドラス パッチ ワーク
デザイナー草野健一氏による遊び心ある定番タイは、剣幅が同じになっているため表=マドラス、裏=シャンブレーの2way使用が可能。春夏の装いをパッと華やかにしてくれる。チェック柄は一点ずつ異なるってのも高ポイント。1万2100円(ビームス プラス 原宿)
※表示価格は税込み
[ビギン2026年3月号の記事を再構成]スタッフクレジットは本誌をご覧ください。
